駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

劇団四季『アイーダ』

2010年03月04日 | 観劇記/タイトルあ行
 四季劇場海、2010年2月18日マチネ

 古代エジプト、ファラオの時代。強大な軍事力を持ったエジプトは近隣諸国に侵攻して領土を拡大していた。若き将軍ラダメス(この日は阿久津陽一郎)は敵国ヌビアの奴隷を連行して凱旋する。そんな中、ひとりの女性が反乱を試みる。ラダメスは彼女の勇気に感銘を受ける。その女性こそ、身分を隠したヌビアの王女アイーダ(樋口麻美)だった。ラダメスはアイーダを許嫁のエジプト王女アムネリス(光川愛)に献上するが…作曲/エルトン・ジョン、作詞/ティム・ライス、台本/リンダ・ウールヴァートン、ロバート・フォールズ、ディヴィッド・ヘンリー・ワン、演出/ロバート・フォールズ、振付/ウェイン・シレント、企画・製作・日本語版歌詞・台本/浅利慶太。2000ネンブロードウェイ初演のディズニー・シアトリカル・プロダクションズのショー第三作。

 キャストは他に、ラダメスの父でエジプト宰相のゾーザーが飯野おさみ、アムネリスの父ファラオが前田貞一郎、ラダメスの従僕でヌビア人のメレブが有賀光一、アイーダの父でヌビア王アモナスロが石原義文。

 オリジナルキャストのサントラCDを愛聴していましたが、やっと東京公演が始まりました。
 ヴェルディのオペラ、宝塚歌劇『王家に捧ぐ歌』ともまたちがったニュアンスで、楽しく観ました。
 声量は…やっぱりやや物足りないかな、と思ってしまいましたが、歌唱はとても達者で、不安定な感じはまったくありませんでした。
 でも四季の芝居ってなんであんなに「ザッツお芝居」調なんたろう…それこそ宝塚に比べたら劇場も小さいしキャストも少人数なんだから、もう少しナチュラルな演技をしてもいいと思うんだけれど…
 滑舌が良くて聞き取りやすいのはいいけど、不自然でテレました…

 お衣装は、白人さんが考えるアフリカ、アジアということなのでしょうか、これはむしろシノワズリーでは?というエジプト男性の服がなかなか素敵でした。色味はなんか味気なかったけど…
 アンサンブルも素敵でした。

 さて、まずアイーダのキャラ立てがいい。王女様なので女だてらに武芸のたしなみもあるということか、ただおとなしく引き立てられることはせず、果敢に刃向かう。それがラダメスの心をとらえる。
 ラダメスは宰相の息子ですが、冒険と戦闘が好きな「大きな男の子」で、王女と結婚して国を継ぐのは荷が重いというか、面倒くさいと思っている。アイーダはそんなラダメスのことも笑い飛ばします。気に入らない運命なら自力で帰ればいいし、そうでないならがたがた言うな、潔くない、と。
 ラダメスはアイーダの高潔さにうたれ、己の不明を恥じる。その潔さに、アイーダも惹かれる…とても説得力がありました。
 一方、アイーダとアムネリスの間にも、ほとんど友情と呼べるものが育ちます。他の奴隷とちがって物怖じしないアイーダにアムネリスは好感を持ち、頼りにすらするようになる。女同士の友情はほほえましいです。
 アムネリスは「お洒落は私の切り札」と歌いますが、それは彼女にとっては実は武装です。民は王女である彼女に女神であることを求める。でも実は彼女はただの女性なのです。そのつらさは、アイーダにだけはわかるのです。
 アイーダもまた、王女の自覚があとからついてきたのでした。王宮で何不自由なく育てられ、ちょっとした好奇心でいつもより先まで出かけて、そして敵国に捕らわれた。責任というものを考えたことなどなかった。今、奴隷たちは王女の存在を心の支えにしようとしている。彼らが織ったローブをまとうことは指導者の役目を引き受けることの証。それは重く、負担です。でも、王家に生まれついてしまったのだから、やらなくてはならない…アイーダは覚悟を決めたのでした。
 なのに、敵国の将軍に惹かれてしまう。父とともにこの国を脱出して故国へ帰ることは、彼との別れを意味する…

 アムネリスとラダメスは9年にわたって婚約中、という設定でした。ふたりは気心の知れた幼なじみで、むしろ今さら恋愛という感じはないのでした。特にアムネリスがラダメスに岡惚れしている感じがないのはよかったですねー。だってどうしてもフラれちゃうキャラだからさ(^^;)。
 逆に言えば、アムネリスはまだ恋を知らないのです。大丈夫、あのあときっといい人が現れて、あなたがエジプトを継ぐのを支えてくれたはず、そう思えます。
 仲良しだった男の子が、なんだか最近感じが変わって、不満だわ、不安だわ…というくらいな感じ。だからラダメスとアイーダの逢い引きを見てしまっても、裏切られたとか、そういうショックは少なかったんじゃないかな。ただ、立場としてはふたりの仲を認められないし、自分だけが仲間外れにされている感じもするし、親友のようにも思えたアイーダを失うことになるし、そういう悲しさを感じたのではないかな…

 来世を信じる宗教下において、同じ墓に生き埋めにしてあげることはかなりの恩赦なのでしょうね。こっさり生かしてあげても…とまたまた甘いことを考えた私でしたが…仕方ないか。

 幕開けは現代の博物館で、エジプトの埋葬室の展示の前である男女が出会うところから始まります。
 その埋葬室が実はラダメスとアイーダの葬られたものであること、出会った男女がふたりの生まれ変わりであること…を示して、物語は終わるのでした。
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