駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『めぐ会いグラタン』初日雑感

2022年04月24日 | 日記
 宝塚歌劇星組『めぐり会いは再び next generation/Gran Cantante!!』初日と翌日11時公演を観てきました。108期の初舞台公演にして、今の私の最愛の娘役のひとり・はるこ様の卒業公演ですもの、いそいそと出かけてきましたよ…
 お芝居の初演というか一作目の感想はこちら、二作目はこちら。正直、お衣装が可愛かったことくらい以外の細かいことはほぼ覚えていません(^^;)。ま、なーこたんがさすが手練れで少女漫画的センスを上手く持ち込むよね、とは当時思ったかな。手元に映像がなくて復習はできませんでしたし、それで特に問題はなかったかと思います。もちろんわかって観た方がニヤリとできるところも多いかと思いますが。ともあれ私はノー予習で楽しく観ました。
 なーこたんが上手いのは、冒頭でみきちぐ座長に「コスモ王国の領主になったエルモクラート先生と、何故かついていったケテル」なんて話をさせながらも、若い座員役の生徒たちに「誰の話かわかる?」「最近入ったばかりだからわからない」などと言わせているところです。前作、前々作を履修していないとわからない作品になっちゃってるんじゃないか、という世間の懸念に対して、そんなことはないから安心してね、と初っ端に表明しているんですね。この視点、スタンス、大事です。さすがです。信頼できます。
 なーこたんはプログラムで、「架空のファンタジー的世界という設定であれば制約にとらわれない世界観を作ることが出来る」「キャラを立てて、逆にオーソドックスなラブコメでも新鮮に見せることができる」「なので、舞台設定は西洋ファンタジー風世界、ただし内容的には超自然的なことは起きないラブコメホームドラマというコンセプト」で作ってきたと語っており、その計算は正しく当たったんだな、と改めて感じました。ドタバタはしているけれど、観客にもある程度受け入れられているというか、需要があるというか…なシリーズですもんね? ま、ハッピーエンドのラブコメって実は難しいしなかなか出てこないので(とはいえ最近だと『バロクロ』などがありましたが)、ちょっとアレでこういうモノでも(オイ)まあいいか、とされているところがある、というのはあるのかな。でもなーこたんはそういうのも全部わかっててやってるんですよね。そういうきっちりした職人芸を感じます。だからハイファンタジーよりローファンタジーの方が好き、というアンケート回答にも納得です。とはいえ、だからこそこの世界観には謎の流行り病とか異国の戦争だとかは、たとえ台詞だけであっても要らなかったかもしれないな、とは個人的には感じました。ムリに地続きにしなくていいんですよ…
 また今回は言っているほど「スチームパンク的世界観」ではなかったと思うけれど(せいぜいお衣装にちょっと香りがある程度?)、まあそれもフツーそこまではとても盛り込みきれないよね、ってことでこんなんで十分だと思いました。今でもキャラが渋滞していてガチャガチャドタバタにぎやかで盛りだくさんなんですからね(笑)。しかもサブタイトルに相応しい人生訓やメッセージとかまで盛り込んでいますしね。ヒロインのキャラの新進性とかもね。今の星組はトップトリオはともかく、ありちゃんが組替えしてくれば正三番手になるんだと思いますが路線の番手はそのあたり以下をごまかしている状態なので、このにぎやかさで出番の量や役の美味しさが分散されているのはいいことなんじゃないでしょうか。それともファンはやっぱり胃が痛いのかな…そこは無責任に眺めてしまっていてすみません。
 以下、ややネタバレも含めて感想を語らせていただきます。未見の方はご留意ください。

 さて、今回の舞台は王都マルクトだそうですが、ところで今さらですがこの王国はヴェスペール王国っていうんですね。初代主人公・チエちゃんの役名はドラント・ヴェスペールだったと思いますが、彼は別に王子ではなかったんじゃなかったっけ…? たまたまの一致なの? よくある名字ってことなの? 名字と国名は関係ないってこと? 現に今の王様の名前はコーラスですが…
 まあいいか。ともあれ今回の主人公、まこっちゃんのルーチェは田舎領主オルゴン伯爵家の末息子。前作ではねねちゃんシルヴィアの生意気な弟…みたいな役どころで出ていたかと思いますが、遡ると母親(これで退団の華雪りらたんが扮していました)の臨終に上手く向き合えなくて、素直になることを避けたり、愛情というものにちょっと臆病になっちゃったりしているのかしらん…というような設定であることがまず語られます。そして今や成人もし大学も出た立派な24歳の青年ですが、実家には弁護士としてバリバリ働いていると嘘を吐き、実は大学時代の友人、せおっち演じるレグルスが経営する探偵事務所の手伝いというか居候というか…でぐうたらしているという状態の模様。つまりニート、とか言われちゃっていますが、要するに悩めるモラトリアムだということが語られます。そして今回は最終的にはこれが解消されるお話になっていて、ちゃんとビルドゥングス・ロマンに仕立てようとするところが本当になーこたんだなーと思います。いつまでも子供のままではいられない、だから親も子供を信頼して、強要するのをやめようね、というのが今回のテーマになっているのです。
 レグルスの事務所(しかし親から継いだ、ってのは一度言えば十分な情報なのでは…)には女優志望のくらっちティア、発明家の水乃ちゃんアニス、メガネで遅筆な劇作家のぴーセシルも入り浸っている、という設定です。最終的にはせおみほ、ぴーゆりでカップルになってそれはまあめでたくていいんですけど、ティアは女優らしく変装でもして活躍するのかと思っていたらそんな暇はありませんでしたね…そしてアニスは科学や機械いじりが好きで人間嫌いという設定なんだけれど、そしてそれはなーこたんが芝居が棒の水乃ちゃんのために書いたキャラだと思うんですけれど、いかんせんその芝居の棒さがかえって露呈していて私はマジでつらいと思いましたよ…棒を芝居でやるには演技力が要るんですよ、なんの事故かと思ったもん(><)。小桜ちゃんと役を入れ替えるとよかったのでは…? ヘンテコな三つ編みとか背中開いたお衣装はめっかわだったんですけどねえ…
 街はお年頃の王女の花婿捜しで盛り上がっている。そこにルーチェも参加してくれ、という何やらちょっと苦しい、怪しい、だが報酬が多額の依頼が持ち込まれる。依頼人はルリハナのアージュマンド、実は王女の侍女アンヌ。そしてその王女というのがそもそもルーチェのガールフレンド、ひっとん演じるアンジェリークで、彼女は国王(朝水りょう)の甥ローウェル公爵(オレキザキ)の娘として育てられてきたけれど実は国王の娘にして王女様、彼女の夫となるものが次の王になる、とされています。ところで女性には継承権がない世界なんですね…ここ、全然違う話になっちゃうかもしれませんけど、ちょっと再考してもよかったかもしれませんねなーこたん。アンジェリークはただ守られているだけのお姫様ではない、というような描写はあって、それは現代的でいいんだけれど、一方でルーチェの方が王になる自信がないみたいなことをウダウダ言うくだりがあって、でもまこっちゃんって華の95期の主席でバリバリの御曹司で押しも押されぬ王者オブ王者ってのがみんなの共通認識だと思うので、ちょっとそぐわないんですよね…とはいえひっとんが女王になれる設定にしちゃうと、じゃあまこっちゃんに何やらせるんだ、ってなっちゃうんだけど。
 まあいい、そんなワケでアンジェリークはあまり表に出されずに育てられていて、ルーチェにも正体を明かせていないし、でもかつてルーチェと出歩いたときの楽しさが忘れられずずっと彼を好きで…ということになっています。ルーチェの方ももちろん彼女を好きなんだけど、つい意地張って喧嘩ばっかり、ってヤツですね。ベタなんだけどこういう古き良き少女漫画チックな台詞と芝居がホンも役者も抜群に上手くて、キュンキュンします。古式ゆかしいタカラヅカらしいラブストーリーだと意外とないんですよね、こういうのが。
 さて、王女の花婿候補がいろいろと競う花婿選びにはあかちゃん演じる宰相オンブルの息子、かりんたん演じるロナンが参加していて、どうやら出来レースっぽい模様…他のメンツは天希くんやさりおやさんちゃんたち、かつてのともみんやみやちゃんのキャラを彷彿とさせます。
 そこに、かつてのベニーのブルギニョンとれみちゃんリゼットの間に生まれた双子、うたちポルックスと稀惺かずとのカストルが迷子になって現れる。うたちが可愛くて嬉しい! そしてこのふたりが両親を彷彿とさせる姿でいるのが嬉しい。そこにルーチェの実家の執事、みっきーユリウスとメイド長、なっちゃんブランも関わってきたりします。一方はるこレオニードはアンジェリークのシャペロンみたいになっていて、みっきーがまこっちゃんを、はるこがひっとんを励まし背中を押すようなくだりがあるのが胸アツでした。みっきーはともかく、はるこに歌わせるなーこたんの勇気に震えましたけどね…! 千秋楽まで手に汗握る一節を楽しみたいと思います。
 さて、オンブルは要するに王家を乗っ取るために息子を王女と結婚させて次の王にしたいのですが、実はロナンには小桜ちゃん演じるジュディスという恋人がいて、お互い王女との結婚は政略にすぎないと承知していて自分たちは愛人関係でいいと割り切っているつもりが実は…というドラマが作られています。かりんたんは特技が極真空手の阿呆悪坊でいくのかなーと思いきや、意外にいい芝居をさせてもらっているのですが…さてさて、ちょっとまだテクが足りないように見えちゃうんだよなー…でも多分おいしいお役を振ってもらっている形になるんだと思うので、今後の奮闘に期待。そして私は小桜ちゃんがそんなに好きではないので、ここが水乃ちゃんだった方が嬉しいというのワガママです。
 ラストは無事にともみんと結婚したらしき柚長グラファイス夫人の「エスプリ」発言で上手いこと締めて、まあハッピーエンドなんですけど、怪盗ダアトってネタが残っていたりして、まだまだ続きも作れるよ!みたいな感じなんでしょうか…? ちょっと余計な気もしましたけどね。ダアトに間違えられる、あるいはダアトを騙っちゃうコソ泥三人衆が天飛、奏碧、大希くん。かつてかぼちゃ泥棒をしていたまさこたちのオマージュのキャラなのかもしれません。次があるなら、もう10年後に天飛くん主人公くらいの時代で、でもいいのかもしれませんね。
 こっちゃんは本当になんでもできる人で、でも本当は十兵衛先生みたいなお役が一番いいんじゃないのかなーとも思うんだけれど、こういうやっと大人に片足つっこんだような若者の役もそりゃ上手いです。ちゃんとカワイイ。「ダンスは得意なんだ」で笑いが取れるし、『名探偵コナン』のファンぶりも発揮して「真実はいつもひとつ!」とキメるシーンがあるのもご愛敬。
 てかクライマックス前におさらいを入れるなーこたんの手腕がさすがでした。ただアンジェリークの身の上とかオンブルの野望とかの、まあまあ大事なことをコメット一座の歌と踊りで説明させるのは、聞き取りづらくてやや問題かもしれません。あとルーチェの最初の銀橋ソロ、プログラムによれば「Love Ditective」なる曲は歌い終えてキメておしまい、でよかった。そのあとの台詞は蛇足だし、テレだとしても不愉快に思う観客が大半だと思うし、作品の根源的なテーマに唾していると思う。なくすよう再考していいのではないでしょうか…
 ひっとんは横アリで華ちゃんが来ていた七色の段々スカートを着ていたりしてとにかくカワイイので優勝です。歌もアイーダのときより全然いい。
 せおっちはあいかわらずいい人役なのでファンにはもの足りないかもしれませんね。あと、くらっちとくっつくところ、もっとダイレクトな、ちゃんとした台詞が私は欲しかったけどなー…
 作品としては、回数を重ねればどんどん交通整理がついて小芝居が増えて、ファンは楽しくリピートできるのではないでしょうか。なーこたんの職人芸が光る、愛すべき一作だと思いました。

 レビュー・エスパーニャ『グラタン』はダイスケ先生作。スペイン縛りでも意外とバラエティに富んだショーにできていたのではないかと思いました。
 指揮は芝居と同じくラブ一郎先生。芝居では拍手ができますが、ショーはピエロから突然始まるのでその隙がありません。ピエロはみきちぐ、まいける、ご卒業のりらたん。
 そしてとっぱしは『アパショ』かな?な大階段のサチココバヤシのまこっちゃんから。大空さんのときはお経みたいな唸り声だった「♪ああぁ~」みたいなのもめっさええ声(笑)。「オーレ」! 拍手! ライトオン! せおっち筆頭にざかざか降りてくる男役! ひっとん筆頭にざかざか降りてくる娘役! …が素晴らしいのはいいんだが、マントぶん回す振りは『ネバセイ』フィナーレでやったばっかじゃん被り考えろよ劇団…間に『夢介』挟んでんじゃん、というなら「オリーブの首飾り」で手品、も被ってるから!
 てかうたちが娘役プロローグ1列目にいて仰天しました。いーちゃんの横だよ、すごくない!?
 プロローグ終わりはあかぴーと娘役ちゃん8人残り。
 続いてセビーリャの春祭りということらしいけどなんか頓狂な格好で馬に扮したせおっちが田原俊彦の「NINJIN娘」を歌い踊り、周りの男役はブルーのスーツ。ここは私はかりんさんガン見でしたが、百面相がたいそうキュートで無駄にスタイルいいのがたまりませんでした。くらっちセンターのニンジン娘たちは何度見るんだ『ファンサン』ひまわりの黄色の段々ドレス。ニンジン型の鞭振るわせるセンスがよくわからないよダイスケ…でも可愛いからいいです。歌手はひーろーと小桜ちゃん。
 次はガウチョ姿のこっちゃんのセリ上がり、大正解。ここのエルモサ、みんな鬘が良くてノリノリで踊っていて、ひっとんボニータが出てくるまでははるこがメインで素晴らしい。ここも歌手がいーちゃんに優奈ちゃんにうたちですよすごい!
 そして中詰めは宝塚歌劇のスペインものの主題歌メドレー。まずは下手スッポンのかりんさんからなんですけど、出てきたときにすでに滝汗なのはなんとかしてくれ…愛しすぎる。続いて美穂姉さんとこっちゃんの歌、踊る柚長に娘役たち。からの男役たち銀橋ズラリで「炎の妖精」、歌がううぅ上手すぎるうぅ! さらにみっきーが歌うんですがこれがまた上手い…コーラスは優奈ちゃんとルリハナ。希沙くん以下若手男役5人のススピカは天飛くんが意外にも綺麗(オイ)。そしてダルマひっとん登場! だがスカートが重くて脚が隠れがちだぞーBoooo! ウエストもお腹も生地が余っていて皺が寄っています…ここからは銀橋歌い継ぎで、くらっちと小桜ちゃんに挟まれたぴー、あかちゃんとはるこ、せおっち。主題歌で総踊り。さらにトリデンテが銀橋残り。
 再びみっきーが歌いはるこが踊るターン。さらにマタドールのこっちゃんとトロ(闘牛は雄牛でするものだそうなので修正されましたが、当初は雌牛とされていました。そしてコンセプトはそのまま女装でのダンスで、なんだかなー…)のせおっちのダンス…だったんですけど、ここ、せおっちの闘牛士に女装のこっちゃんで踊ればよかったのに、と個人的には思いました。だってこの組み合わせコンサートでも見たし…こっちゃんの方が小さいし丸顔で女装向きじゃん? だからこそトップになってまでやりたがらないんだろうけど、往年の昭和のトップスターはわりと女装しているしこっちゃんもその系譜にあるスターな気がするので、平然とやってほしいんだよなー…その方がせおっちも立ててもらえるしね。背を気にするならあかちゃん相手とかでもいいけど…でも、せおっちを正二番手として立てるためならなんでもやりましょうよ、と思うのですよ…
 闘牛士が死んで、祈りからの復活へのよくある流れ。美穂姉さんが歌い、ひっとんが踊り、退団者餞別場面があり、総踊りのあとはかりんさんと天飛くん以下8名でのシメ。
 初舞台生ロケットはサフランのイメージ。たっぷり尺がありましたねー、主席の娘役さんはホント小さいな。センターで可愛い、脚上げは最上手。チェッサもあり。
 せおあかぴーかりん天飛に囲まれたひっとんが大階段板付きでスタンバイし、男役たちと次々踊る…のはいいんだけど、このお衣装わりと最近星組で使ったのでは…さらにこっちゃんが娘役たちとざかざか出てきて、次に男役を従えて踊り、デュエダンになって、パレードのエトワールはみっきー。そしてマイティーに続いてやっぱりせおっちも大羽根を背負わず、博多座『ビバフェス』のゆりかハネウマライダーのものか?左半分のみの雉羽根みたいなののみ。そうしたらひっとんもそれよりは大きいけれど右翼半分みたいな羽根で、そりゃこっちゃん挟めばシンメになるけど、なんなんだそのショボさ…! そうまでして同期二番手を冷遇する意味がわからないんですけれど…???
 そしてラインナップはみっきーがまさかのひっとんの隣でした! 銀橋会釈し合いましたよ破格では!? はるこはみきちぐの外でしたけどね!? なんかこう…整合性とは、と劇団のこういうところにホント虚しくなるのです…
 はー、しかしハイカロリーだな…私はこっとんが好きでかりんさんが好きで、はるこくらっち水乃ちゃんルリハナうたちを見たいんで大忙しなんだな星組は、ということがよくわかりました。東京友会一次が当たらなくてしょんぼりなんですけど、なるべく行きたいなと思いました。
 二作とも激しくてみんなけっこう痩せちゃうようかもしれないけれど、どうか健康に気をつけて、がんばってくださいね…! さて、お手紙を書こう。





 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする