駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

こまつ座『貧乏物語』

2022年04月11日 | 観劇記/タイトルは行
 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA、2022年4月10日14時。

 時は昭和9年(1934)3月。場所は東京都中野区相生町十番地の借家、拘留中のマルクス経済学者・河上肇博士の留守宅。妻ひで(保坂知寿)、次女ヨシ(安藤聖)はじめ元女中の美代 (枝元萌)や隣家の新劇女優クニ(那須凛)たち、女6人の物語。1999年初演、24年ぶりの再演。全1幕。

 河上肇という名もその著書に『貧乏物語』というものがあることもプログラムを読んで初めて知りましたが、国がいわゆるアカと呼んだ学者だの運動家だのを根こそぎ逮捕して拷問にかけていた時代があったことは理解しているつもりでした。そんな時代の、夫と弟と次女を逮捕された女性を主役に据えた女性だけの物語です。
 物語といっても特別な筋があるわけではなく、人々がちょっと行き来した数日間の日常の一コマを描いている感じかな。特に暗転も場面転換もありませんでしたが、3場ほどに別れていたかと思います。夫の面会に行き差し入れをし手紙を書き、簡素な暮らしの留守宅を守る女たちの生活の描写をしている作品です。リッチでは全然ないが貧乏というほどではなく、牛鍋をおごるくだりもあるので、それなりに、そして精神的にはとても豊かな暮らしをしている人たちです。貧しいのは彼女たちにこういう暮らしを敷いている国の精神の方、とでも言いましょうか…ホント、拷問ってなんやねんって感じです。
 でも今、再演されるに足る理由ができているような世相でもあるわけです。目を背けてはならない、逃げてはならない、政治に向き合わなければならない、と改めて思い知らされます。
 作品としては、そんなわけで、さしたる筋もヤマもオチもあるわけではないので、やや散漫な印象もなくもないです。でも女優6人がみんな達者なのと、立ち居振る舞いが美しいのに見とれているうちに終わるようなところもあるので満足でした。羽織を脱いで畳む、とか割烹着をまとう、とか正座する、座礼する、襖の開け閉てをする、荷物の紐を包丁で切る、火鉢にかけた鉄瓶のお湯でお茶を入れる…とかの所作がすべて、実に鮮やかでこなれていて自然で美しいし、何より着物の着方が、本当に昔の、普段普通に着ている女の人の着方で、素晴らしかったです。イヤすでに私は自分の目で見たことはなくて(祖母は着物姿がほとんどだったと思いますが、わりと疎遠だったので)、だからあくまでイメージなんですけれどね。でもそういう伝承って大事だなと思いました。
 次回公演は『紙屋町さくらホテル』、移動演劇隊のお話なのだとか。未見なので楽しみです。その次は『頭痛肩こり樋口一葉』で、以前でキョンキョンで観ましたが今回は貫地谷しほり。内容は綺麗に忘れているので(^^;)また観たいかな。たーたんもご出演。あとはみんな大好き若村麻由美。てか続投なのかな? 熊谷真実も。
 またハンズやニトリを冷やかしつつ、劇場に向かいたいです。





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