駒子の備忘録

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宝塚歌劇宙組『TRAFALGAR/ファンキー・サンシャイン』初見雑感

2010年05月24日 | 観劇記/タイトルた行
 宝塚大劇場、2010年5月21日ソワレ(初日)、22日マチネ。

 ヨーロッパの大国が制海権を巡って熾烈な争いを繰り広げていた18世紀後半。ナイルの戦いでフランス軍に圧勝したホレイショ・ネルソン(大空祐飛)は英雄としてロンドン市民に迎えられる。だが息つく暇もなく次の任務が下る。ナポレオン・ボナパルト(蘭寿とむ)率いるフランス軍に屈しようとしているナポリ王国から、地中海艦隊への支援を取り付ける必要があるのだ。ナポリに駐在するウィリアム・ハミルトン郷(北翔海莉)はホレイショの友人だった。国王臨席のパーティーで、ホレイショはウィリアムの妻エマ(野々すみ花)と出会う…
 作・演出/斎藤吉正、作曲・編曲/寺嶋民哉、太田健。副題は「ネルソン、その愛と奇跡」。

 微妙にネタバレで語らせていただきます。

 初日は…
 まず「序」の場面での説明台詞が早口すぎてまったく聞き取れないのに不安になり、カッコいいだろうと想像してはいたプロローグ(第1場A)はなんかバタバタしていて不安になり…生徒も見てキャラも見てお話も追ってなので、こちらが忙しいというのもあるんだけれど、とにかく総じてバタバタして見えて、緩急もなくツボもなく進み、終わり、
「…ま、伝記ものってどうしても駆け足になりがちだよね…」
 と苦笑する、という感じでした。

 もちろん金髪に軍服のビジュアルはそれだけですばらしい。
 でも、でも、それだけじゃね…
 一番心惹かれたのは、ホレイショと義理の息子(妻ファニーの連れ子)ジョサイア(愛月ひかる)との「なさぬ仲の父と息子のドラマ」、とかじゃダメだろう!と思うワケですよ…

 二日目のマチネは、生徒もおちついたのかこちらもわかってておちついて観られるからか、
「もしかしたらこれはこれでまあまあがんばって作られた、まあまあの佳作かな」
 と思えるようになってしまうから、怖いというかマズいのだと思いますが。
 まあでも芝居は明らかに締まってきていたし、こうやって舞台は進化・深化していくものなのでしょう。
 『シャングリラ』同様、またブツクサ言いながらも意外に通ってしまうかもしれませんしね…ま、でも『カサブランカ』越えはないな。

 あと、美術や装置や照明が今後大きく変わることはないと思われるので、そのあたりの不安は残るままかな…なんか安っぽく見えたんですよねー。
 あとあの映像使い。エンドマークはよかったけれど、他は異論アリ。
 まずオープニングの、キャスト・クレジットを映画ふうに見せるやつ。
 最近の舞台ではとてもよく見ますが、私は舞台は舞台なんだからと思うので、好きじゃないです。まあ今回はカッコいいから百歩譲って許してもいい。
 しかし歌詞に獅子が出ているからといってライオンを映し出したりするのはやめてくれ。それこそそのイメージを芝居で観客の脳裏に表せてこその舞台演劇だろう。
 ラストのホレイショの肖像もあまり意味がない。ロビーの写真ですか?てなもんで失笑ものです。改善してくれないかな…

 全体的な脚本の改訂案としては…
 やはりあれこれと詰め込みすぎだと思うので、もう少し絞れ込めないものだろうか、と思います。

 私だったら、たとえば、ホレイショとエマとウィリアムとファニー(花影アリス)の四角関係に的を絞っちゃうけれどな。みっちゃん、よかったもん。
 だから、ウィリアムをまゆたんにする。で、がっつりメロドラマをやってもらう。
 二番手をナポレオンに当てるから、彼の側のドラマも描かなくてはならなくなって、彼が出世していく様子とか変質していく様子とかを一生懸命見せようとしているんだけど、観客もやっぱりそこまでは追いきれないと思うんですよねー。
 ジョセフィーヌ(五峰亜希)にマユミさんを専科からわざわざ呼んだのなんか、ホントに無駄になってるもん。『HAMLET!!』のガートルードの方が全然よかったもん。
 ジョゼフィーヌに対抗意識ありありのナポレオンの妹ポーリーヌ(大海亜呼)とかはすっごくよかったんだけど、やっぱり枝葉なんですよね。
 ナポレオンの弟で腹心、でもなんかいわくありげな腹黒そうなムードがとてもよかった、でもしどころのないリュシアン(春風弥里)なんかにみーちゃんとかを当てておくのももったいないワケですよ。

 だから二番手にはメロドラマでの主人公のライバルを演じてもらって、お話の基本はこちらに置いて、戦争のライバルであるナポレオンは最後の最後に出てくるだけにして、スッシーさんとかアモタマさんの役にするか、いっそ大ちゃんとかの若手に振るか、とかでいいと思うんですよねー。

 ホレイショとウィリアムの友情ってのもどれくらいのものなのかよくわからなかったので、それを掘り下げるのに浮いた時間を割いてもいいと思いますし。
 ホレイショはウィリアムをファーストネームで呼んだり「ハミルトン郷」と他人行儀で呼んだりします。ニュアンスの差が出ているんじゃなくて、脚本が無頓着なだけなんですよね。でもそういうことじゃダメなんです。単に観客がキャラの名前が覚えられなくて混乱するというのもあるけれど、呼び方は関係性を示すとても重大なファクターですよ。
 おそらくは既婚婦人層が最大の観客だろうから、不愉快に思われないためにもこのダブル不倫劇は丁寧に見せないと…
 ちなみにトマス(悠未ひろ)もハーディーと呼ばれることも多くて混乱してよくなかった。ただしこれはホレイショだけがトマスと呼んでいる感じもしたかな? 「ル・サンク」が出たら吟味しないと…トラファルガー海戦では負傷して一線を退いているホレイショに替わって提督になっていて、「ハーディー館長」とか呼ばれて困る、みたいなのはいいエピソードだけに、普段から呼び方にはこだわってほしいのです。

 脇筋では…
 私はちーちゃんがひいきだから、というのもあるけれど、「ホレイショを仇と狙うナポレオンの部下」オーレリー(蓮未ゆうや)ってのは『シャングリラ』の雹に続きおいしい役になりそうだな!と思っていたのが肩すかしで、これまたなんとかしたい。
 まず仇討ちの理由が弱い。戦争なんだから、ホレイショに殺されたフランス人なんか山ほどいるし、仇はホレイショってよりむしろイギリス軍でしょ。そんな嘘くさいドラマには乗れない。もっとなんか個人的怨恨をうまく作りたい。

 それからナポレオンの愛人なのかも?とも思わせるミラノ・スカラ座のプリマドンナ、ジュゼッピーナ(純矢ちとせ)がオーレリーとともにスパイとしてロンドンに送り込まれるんだけど、ほとんど何も活躍しないのももったいない。ここにももっとなんかドラマが欲しいですよねー、特に女スパイには色仕掛けで主人公に近づくお約束がないとつまんないよね!
 オーレリーには復讐を果たす活躍場面?が一応はあるのですが…しかしホレイショの小姓トム(凪七流海)は主人をかばってオーレリーの弾に当たって死ぬものとばかり私は思っていましたよ…ははは。

 ホレイショの副官トマスは楽しそうにやっていたしよかった。ホレイショをその腕の中で死なせてよかったネ(^^)。
 ホレイショの盟友ヘンリー王子(十輝いりす)はしどころのない役だったけど、これは仕方なかったかな…ただ、航海王子とも呼ばれた人ではありますが、一応王族なんだし、別誂えの軍服を着せてもよかったかも。背が高いからわかるとはいえ、ときどき埋もれて見えてかわいそうでしたよ…
 ホレイショの部下アルバート(鳳翔大)、ジュリアン(七海ひろき)も、まあこういう役はこんな程度なんだけど、特に大ちゃんはビジュアルが決まりまくって目立っていたので、それでいいんじゃないでしょうか(^^;)。

 娘役陣も、ナポリ王妃マリア・カロリーナ(鈴奈沙也)とか、その侍女ソニア(琴羽桜子)とか、エマの侍女ジゼラ(藤咲えり)とか、ファニーの侍女ミリー(綾音らいら)とか、ホレイショの娘ホレイシヤ(すみれ乃麗)とか、まあみんなあんなもんでしょ、仕方ないよねという感じ。
 やはり儲け役はジョサイアだったと思うなあ…あいくんもひいきなんで全然いいんですけれど。

 というわけで本筋ですが。
 戦争は天才的なんだけど無骨で不器用で意外に人を見る目がない生真面目なヘタレ、ホレイショのユウヒ…いいんじゃないでしょうか(^^)。甘くてすみません。
 着替えの時間が取れないから仕方がないんだけれど、第6場、反乱に荒れるナポリにエマを救いに行くシーンは、ヘンリー王子の許可が出ずに個人として行動しているんだから、軍服ではなく私服にさせるべきでしたよね。でもあのマントに私も隠されたいよ…そして第6場Bの唯一の私服はスカーフなのかインナーなのかよくわからなかったけど喉元の色が変でした…「世紀をまたぐキス」は素敵だったけど。ちなみに軍服は第9場の赤と金のものが一番好きだなー。でもトラファルガー決戦での帽子も素敵だったなー。ちなみに一瞬だったけど銀橋でのまゆたんナポレオンとの火花散るチョウチョウハッシはよかったなー。
 婚約者に借金のカタにその伯父に売り飛ばされた娘、寂しさを隠すために陽気な社交界の華ぶっていたハミルトン夫人エマのスミカ、これもまったくもって問題なかったです。歌もかなり健闘しているかと。
 これまた冷めた夫婦関係に悩む妻ファニーのアリスは、最初のうちはラブがあったのかとかそもそもの原因がなんなのかとかがあまり語られないのでなんとも言えませんが、掘り下げたいところ。「私はレディ・ネルソンになれていたのかしら」はなかなか深い台詞でした。
 そしてみっちゃんはすばらしいよ! 最初は余裕を持って妻の浮気を見守っていた感じとかが出るともっとイヤらしくなってさらにイイと思います(^^)。

 だが…やはりつっこんでおこう。
「どんだけぬくいねん!」
 と…

***

 えーと、『ファンキー・サンシャイン』については…
 私は『ハイパー・ステージ!』が大好きだったので、プロローグはインカムつけてるもんだとばかり思っていましたので、残念でしたってのと、ポンポンも欲しかったかなってことで。
 パンフレットの黒が効いたお衣装の方がよかったかなーというのもありますが…

 えーとあとは、お天気レポーターの黒縁メガネ姿もとても素敵ですが、いつか瓶底メガネにしていただきたく、ってのと…
 そのあとのカチャーシャは微妙に笑えないんでどうなんだろうってのと…
 中詰があんま詰まってないんだよねってのと…
 とにかくまゆたんがショースターっぷりを発揮してくれているのでなんとか保ってるよね、ってのと…
 三組のデュエダンはとても素敵だけど、いつリフトが揃うのかね、ってのと…

 くらいでしょうか。

「宙組で大空祐飛だからソラでソーラー・パワーね」
 って、石田先生も小柳先生も変わんないんだなってことですよね…

 とりあえずおしまい。
 また二週間後にお茶会合わせで下阪します!
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