映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

12日の殺人(2022年)

2024-04-01 | 【し】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv84664/


以下、公式HPよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 2016年の10月12日の夜、グルノーブル署で、引退する殺人捜査班の班長の壮行会が開かれていた頃、山あいのサン=ジャン=ド=モーリエンヌの町で、21歳の女性クララが、友人たちとのパーティの帰り道、突如何者かにガソリンをかけられ火を放たれた。そして、無残にも彼女は翌朝焼死体で発見される。すぐに後任の班長ヨアン(バスティアン・ブイヨン)率いる新たな捜査チームが現場に駆けつける。クララが所持していたスマートフォンから、彼女の素性はすぐに明らかになった。

 クララの親友のナニーの協力などもあり、クララと交際歴のあったバイト先のウェズリー、ボルダリングジムで知り合ったジュール。そしてあろうことか彼女を「燃やしてやる」というラップを自作していた元カレのギャビなどが捜査線に上がっては消えていった。だが、クララと関係を持っていた男たちは、一様にして彼女が奔放な女性だったことを示唆していた。 懸命な捜査が続いたが、事件を解決まで導く確信的な証拠もないまま捜査班は解散となってしまう。

 それから3年後。ヨアンは女性判事(アヌーク・グランベール)に呼び出され、新たなチームを作り再捜査に乗り出すことになった。今度は女性捜査官のナディア(ムーナ・スアレム)も加わり、クララの三周忌に彼女の墓で張り込みをすることになった。果たして、仕掛けていた隠しカメラに写っていたのは…。

=====ここまで。

 冒頭で「未解決事件」とハッキリ字幕が出る。よって、本作はサスペンス映画ではない。


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 本作のこと、何で知ったんだろう、、、思い出せないけれど、多分、チラシかな。監督ドミニク・モルの前作『悪なき殺人』はちょっと興味があったのだが、気付いたら終映していて、その後忘れていた。で、本作の監督が彼だと知って、ちょっと見てみようかなと思った次第。

 未解決事件というのは見に行く前から知っていたのだけど、サスペンス映画だと思って見に行くと肩透かしを喰らうでしょう。これから見に行く方はお気を付けください♪

~~以下、もしかすると男性はお読みにならない方が良いかもです。男性を貶める意図はありませんが、ちょっと悪口になっていますので。~~


◆男の加害性を自覚せよ。

 最初に言っておいた方が良いと思うので書いちゃうが、本作は、フェミ映画です。なので、マッチョな事件捜査モノが好きな人が見に行くと、期待外れなだけでなく、不快な思いをする可能性が高い、、、と思う。

 このブログでも時々書いているが、女は“女”というだけで男が怖いんですよ。私はもう50代のオバチャンなので、昔に比べりゃ大分楽になったけど、若い頃は、やっぱしセクシャルな面でそれなりに嫌な思いもしたし、多分男が思っている以上に警戒して生活していたと思う。

 夜道を一人で歩いているだけで、女は警戒心Maxになる。これ、男にはなかなか分かんないみたいだけど、ほとんどの女はもの凄く警戒して歩いている。「自意識過剰だろ!」とバカな男どもは笑うけど、運悪く性被害に遭えば、そういう男どもは「お前に隙があったんだろ!」とか平気で言うんだよな、これが。ふざけんなよ。

 ……ということを、この映画は描いているのだ。ね、男の人たち、何か居心地悪いでしょ?

 男からしてみれば、男っていうだけで変態扱いされたり殺人犯扱いされるのは心外だろうけど、実際、変態はほとんどが男だし殺人犯の大半は男なので、そう言われることについては甘んじて受け入れてください。

 んでもって、おかしなことに、これらの頭のネジが外れた男たちを検挙しようと必死に追い掛けているのも、ほとんど男だってこと。男の世界で完結しているのだよ、被害者以外。んで、被害者の女は、そこでは大抵が“ヤリマン”“アバズレ”扱いされてしまう。そんな犯罪の被害者になる女はそんなもんだろ、っていう男たちの思考回路。

 百歩譲って、被害者の女が“ヤリマン”だったら? “アバズレ”だったら? 男からしたら、そりゃ殺されるのも仕方ないとか言うわけ? それって、前述の「お前に隙があったんだろ!」と言って被害者女を責め立てる男たちとどこが違うんだ?って話。

 つまり、加害者だろうが、警察官だろうが、男たちの思考回路、おかしいだろ!? ってのが、この映画の主たるテーマです。

 どーですか? 男性の方々、それでもこの映画見たいですか??


◆被害者は女のコだもんね。

 でね、私は本作のお話、割と序盤からヘンだと思ったのだ。

 どこがって、警察の人たち、みんな犯人を端から“男”と決め打ちしてるわけ。……ね、ヘンでしょ? そら、あんな真夜中に、人通りのない所で、あんな残虐な方法で若い女性を焼殺するなんて、確かに男の仕業っぽい。ぽいけど、捜査機関として決め打ちはマズいだろ、、、と。

 あの犯行、女性でも十分できるでしょ。ガソリン掛けて、火をつけたライターを投げるだけ。絞殺とか刺殺とかに比べて、ゼンゼン力業いらないですもん。

 でも警察の人たちは、被害者が「若い女性」で「派手め」ってので、大方犯人を男だと思っている。その先入観を持って、聞き込みに当たる。女友達にも聴取するけど、それは被害者が亡くなる直前まで一緒にいたという親友のみ。あとは、みーんな男、男、男、、、。で、その内容から、被害者がさらに「男出入りが激しく」て「肉食系」でってので、殺された理由がほぼ「痴情のもつれ」へと収束して行っちゃう。

 そら、統計的に殺人犯の大半は男だけどさ、、、。あの決め付け方は、被害者の親友が言っていた通り「彼女が女のコだから」である。

 被害者が若いイケメンだったら、多分、犯人は男と女の両面から考えただろう。でも、被害者がイケイケのギャルだと、警察の理屈では、犯人は男なんである。

 結果的に未解決事件だから犯人は分からないまま。ほとんど犯人は男であるという前提でエンドマークとなるが、女かもよ? と、私はまだ思っている。……いや、多分男だろうと私も考えているが、女の可能性もアリだということである。


◆その他もろもろ

 というわけで、本作は捜査員たちがひたすら容疑者を追う姿を描いているのだが、事件の影響を受けて、捜査員たちにもちょっと精神的に変調を来してしまう者が出てくる。

 まあ、あんな凄惨な現場に接したら、いくら警察官でも人の子、ダメージを受けるのも無理からぬ。

 主役の捜査員ヨアンを演じたバスティアン・ブイヨンは、良くも悪くもクセがなく、インパクトが薄いのだが、ほとんど出ずっぱり。表情はあまり変化がない(笑顔がない)けど、演技は確かで、被害者の自宅を初めて訪れた際に、被害者の少女時代のあどけなさの残る写真を目にして、不覚にも固まってしまったときの演技が素晴らしかった。

 未解決事件を追うというストーリーを象徴して、ヨアンがバンクを自転車でグルグル回っている映像が時折挟まれる。そして、終盤ではバンクから峠の上り坂へと移り、その峠を超えられるだろうか、、、みたいなヨアンの独白が入る。そのシーンの背景に映る山岳地帯の風景が美しいのだが寒々しく、本作は終始心和む画は一つもなかったな、、、と感じた。

 本作は、あの『落下の解剖学』(2023)と同じ、グルノーブルが舞台となっており、未解決事件であることも同じだが、『落下~』はアカデミー賞とか海外で評価を受けた一方、本作はセザール賞の主要部門を受賞している。どっちがどうというのもないけど、個人的には、本作の方が何となく好感を持てた気がする。

 

 

 

 

 

 

マッチョ絶滅すべし!!

 

 

 

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3 コメント

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三島女子短大生焼殺事件 (松たけ子)
2024-04-07 20:33:24
すねこすさん、こんばんは!
この映画もすごく気になってる一本です!
人を生きたまま焼き殺すなんて、おぞましすぎます。よほどの憎悪か、証拠隠滅・死体遺棄しやすいようにするためにか、いずれにしても人間のすることとは思えない悪魔の所業ですね。
若い女性が生きたまま焼き殺された事件といえば、日本でも三島女子短大生事件がありましたね。まったく無関係な私でさえ、犯人の男を殺したくなった非道い事件。事件を捜査する警察もほんと大変だと思います。
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あわわ (松たけ子)
2024-04-07 20:36:45
すねこすりさん、ごめんなさい、お名前に脱字が💦最近老化が進んで指が思うように動かなくて💦
返信する
そんな事件ありましたね、、、。 (すねこすり)
2024-04-07 22:37:51
たけ子さん、こんばんは☆
三島女子短大生事件、、、ありましたね。
しかも通り魔。
これも、本作内での被害者と同じく「女のコだから殺された」ですね。
「女のコだから殺された」は、世界中にたくさんあるのですが、いつになったらなくなるんでしょうね。
考えると絶望的な気持ちになります。
映画としては結構地味ですけど、「落下の~」より短いです(^^♪
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