映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

彼女がその名を知らない鳥たち(2017年)

2020-08-19 | 【か】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv62444/

 

以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 十和子は8年前に別れた男・黒崎が忘れられないが、いまは15歳上の男・陣治と暮らしている。ある日、黒崎の面影を思い起こさせる妻子ある男・水島と出会い、深い関係に。

 そんなある日、十和子は黒崎が行方不明になっている事を知り、執拗に自分をつけ回してくる陣治が黒崎の失踪に関わっているのではないかと考えるようになる。

=====ここまで。


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 沼田まほかるの原作は大分前に読んでおり、映画化されたときに、主演が蒼井優と阿部サダヲと聞いて、うぅむ、、、ちょっと違うかも、と思ったので、原作はそこそこ面白いかなぁ、、、と思っていたけれど劇場まで行く気になれなかったのでした。でも一応気にはなっていたのかレンタルリストに入れていたらしく、この度送られてきたので、見てみました。


◆キャスティングにイチャモン。

 調べたら、何だかいっぱいいろんな賞を獲っている映画みたいなんだが、そっかーーー、これがそうなのかーーー、と邦画界に軽く失望する(以前から度々失望してはいるが)。まぁ、でも、確かに邦画の中ではなかなか見られる映画かも。

 原作を読んだのがかなり前なので、詳細はほぼ忘れたんだが、男の名前が“ジンジ”ってのが、何だかなぁ、、、と思って印象に残っている。ボサノバの歌詞で、空耳アワーじゃないけど、♪ジンジ、、、ジンジ、、、と聞こえる曲があって(タイトルが思い出せない、調べる気力もない。でも割とメジャーな曲)、それと被ったというか。おまけに、小説の中でのジンジの描写は、阿部サダヲどころじゃない不潔・醜悪で、ボサノバの曲まで一時的に勝手にイメージダウンしてしまったくらい。

 阿部サダヲは、原作のジンジよりもかなり“陽”キャラだよね。原作は、もっと陰気な感じだったように記憶している(、、、けど、違ったかも。もう忘れかけているので)。これは私の単なる好みなので、阿部さんには申し訳ないけど、私はどうも彼の演技が苦手なのよ。昨年の大河ドラマでもそうだったけど、何の役にしても、やたらハイテンション(に見える)で。……まぁ、モテない中年男という感じはよく出ていたし、卑屈で粘着質ってのもよく出ていた。彼の場合、恐らくあの声質がハイテンションなイメージにつながっているかも。やや高めで細くて、よく通る。ちょっと大きい声出しただけで叫んでいるみたいに聞こえるんだよなぁ。

 蒼井優は、うぅむ、怠惰で頭の悪い女を“頑張って”演じているのが伝わってきてしまって、見ていてちょっと辛かった。……だから、頑張っていたとは思うし、悪くはないのだが、どうもこう、、、原作の十和子のような骨の髄まで腐ったオンナ、って感じじゃぁないな、と。もう少し崩れた感じの女優さんって、今いないんですかね。……まぁ、パッと思い浮かばないからいないのか。

 みんシネに、“一昔前なら十和子は桃井かおりか大竹しのぶ、ジンジは火野正平かな”みたいなことを書いている方がいて、笑ってしまった。大竹しのぶは首肯できないけど、桃井かおりと火野正平ってなかなか良いのでは。中村晃子と平田満でも良いかな。

 ……と書いてきて思い浮かんだんだが、それこそ、寺島しのぶとか。蒼井優よりハマる気がするゾ。火野正平に匹敵するだめんず俳優が思い浮かばない。原作のジンジからイメージするのは、阿部サダヲみたいに丸い感じじゃなくて、痩せ型の、、、強いて挙げれば、痩せた浅野忠信とかかなぁ。

 いやいや、何の話だ。そう、要は、キャスティングがちょっとな、という私の第六感は、当たっていた(そういう先入観で見てしまったんだろうが)。つまりは、原作から受けた印象よりも、かなりキレイなのよ。もっと薄汚れてどよよ~~んとした感じが欲しいのね、この話には。


◆自己愛、、、この厄介なるモノ。

 キャッチコピーに、共感度ゼロみたいなのがあった気がするが、確かに、出てくる人物の誰にも共感はできない。けれども、十和子とジンジみたいなカップルって(男女逆バージョンも含めて)結構いるんじゃないのかな~、というのが私の率直な感想。あ、人殺し要素は抜きでね。

 十和子は、まあまあ怠惰な人間なんだろうけど、働いていたこともあるわけで、頭が悪いのはどうしようもないとしても、怠惰の極みみたいな生活をしているのは、ジンジという存在があるからこそだろう。ネットでは、ジンジが死んじゃったら、十和子は第二のジンジを探すんじゃないのかと書いている人もいたが、それは違う気がする。第二の黒崎or水島を探すことはあっても、ジンジを敢えて探すことはないだろう。だって、十和子はメン喰いだからねぇ。ジンジには粘着されて、多分、本気でウザかったんだと思う。

 十和子は、毎度同じパターンで騙されているんだけど、好きになった男のことを疑いたくない、という気持ちは分かる。自分が好意を抱いた相手に好意を示されれば、それを素直に受け止めたいと思うのが人情でしょう。そこで、そうは言ってもちょっと、、、と、頭の片隅にいる冷静なもう一人の自分が囁くのが、まあ凡人なんだけれども、十和子みたいに振り切れちゃっている人間は、そんなことでイチイチ立ち止まらないのだ。

 ネット上では十和子のキャラはメンヘラだの何だの散々な言われようだが、そこまでヒドいとも思わない。ああいう、男に依存しないと生きていけない女って、小説やら映画でウンザリするほど描かれてきたことを思えば、現実にもかなりの数が居るんだろう。幸い、私は直接出くわしたことはないけれど。

 というか、ある意味、男の願望なんじゃないの? という気がする。本作の原作者は女性だけど、そういう女に破滅させられるっていう、男が書いた小説、一杯あるじゃん。訳分からん女に振り回されてみたいんでしょ、少なからぬ男たちは。で、逆に、顔とセックス(だけ)が良い男に振り回されたい女もいっぱいいるんだろう。そういう“振り回されたい人たち”のオハナシなのだ、これは。

 つまり、自己愛が異様に強い人たちの話なんだよね。自己愛のない人間はいないけど、強過ぎると悪いことの方が多いだろう。十和子は、黒崎や水島にのめり込んでいるようで、裏切られたと知った途端相手をメッタ刺しにするところを見ると、それは相手への愛ではなく、紛れもない自己愛の塊だろう。ジンジにしたってそう。十和子のために自己犠牲を厭わないかに見えるが、結局は、勝手に自己完結して自殺してしまう。死ぬ前に、「オレを産んでくれ!」などと気持ちの悪いことを十和子に言って、まさに過剰な自己愛の表れ以外の何ものでもないでしょ。黒崎や水島もそう。自分のことしか考えていない、自己愛厨。

 そら、共感度ゼロでしょ。でも、よーく考えてみれば、自分にも断片的には思い当たる節がある、、、と思うよ、みんな。私は違う! と自信を持って言う人は、自分と向き合っていないだけ、多分。そんなこと堂々と言う人は、むしろ胡散臭いと思っちゃうが。


◆官能シーンは女優の演技に負うところ大。

 本作は、大胆な(?)濡れ場シーンも話題だったようだが、申し訳ないけど、ゼンゼンだった。松坂桃李クンはまあまあ頑張っていたけれども。ああいうシーンで、胸を隠す演出ってのは、サイテーだね。事務所都合なんだろうが、だったら、こんな役受けるんじゃねーよ、と、私が監督なら言うわ。

 あと、やたら、キスシーンとかでピチャピチャ音を入れるのも気持ちワルイから止めて欲しい。そうすればリアリティが増すと思っているのかも知らんが、芸がなさ過ぎ。

 官能シーンって、リアリティよりも何よりも、見ている者に“感じ”させることが大事なわけで、それは俳優たちの演技に懸かっているのだよ。そして、その大部分が女性側の演技にあるんだよな、これが。もちろん、相手役の演技も大事なのは間違いないが。『ブラック・スワン』で、ナタポー演ずるバレエダンサーがヴァンサン・カッセル演ずる演出家に「お前、色気なさ過ぎ」と言われていたけど、そういうこと。

 性欲の塊みたいな男と女のセックスシーンだよ? お互いすっぽんぽんでヤりまくる(下品でスミマセン)のが、リアリティでしょーよ。……そういうところもキレイにまとめちゃってる感の要因の一つだね、多分。

 ……でもまぁ、あれで“すげぇエロい”とか大騒ぎしている人もネットを見たらいっぱいいたので、あれはあれで良いのでしょう。オバサンの愚痴でした、すみません。 

 


 
 

 

 

 


久しぶりに原作を再読してみようかな。

 



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2 コメント

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残暑が厳しすぎて…苦笑 (フキン)
2020-08-19 13:54:47
すねこすりさん、お暑うございます。
今年は台風も来ないですね・・・
夕立も来ないなんて・・ユデタコ状態です。(><)
東京も雨、降ってないのでしょうか??

この作品、私もDVDで観たんです。
それにすねこすりさんも原作読まれてたんですね。

蒼井優、だめでしたか・・・
寺島しのぶ!!!絶対彼女の方がいい作品になってたことでしょう。
(寺島×浅野のカップリング映画!!!観たいです!
浅野くんは今、結婚してないんだからもっとスケベな作品に出てほしい。)

この作品の公開時、阿部サダヲがなんか知らないけど人気ありましたよね。
あの人、なんで人気あるんでしょうね??

でも、やっぱり邦画のラブシーンはどう撮っても
気色の悪いものになってしまうのは日本人がゆえの
ものなのでしょうかね・・・
キスシーンでさえ奇麗に見えないという・・
(これって女性目線に限っての事なのでしょうか?)
昭和では私も子供だったので、昔の俳優が演じてる作品は男女が映ってるだけでエロく見えましたけどね。笑
令和になって邦画がますます味の薄いものになって行く不安・・・
若者向けの映画ばっかり作られてる気がします・・・
誰か強烈な大人向けの作品撮ってくれないかな??です。
暑さとコロナにお気をつけくださいね。
Unknown (すねこすり)
2020-08-20 21:44:04
フキンさん、こんばんは☆
暑い…というか、一歩外に出ると蒸し焼きにされている感じです。
東京も酷い暑さですけど、京都も連日、高音でニュースになっていますね。体調など大丈夫ですか?
蒼井優さま、ダメってわけじゃないんですが、本作については頑張ってる感が前面に出ちゃってて、見てるのがキツかったっす。
寺島しのぶ、イイですか? 蒼井優よりはハマる気がします。浅野忠信より、吹越さんの方が良いかも、とかまだ考えてます(^^)
それにしても、ビジュアルも良く官能的なセックスシーンは、洋画・邦画問わず少ないですよねぇ。エイドリアン・ブロディの『ラブ・ザ・ハードウェイ』でのシーンはなかなか素敵でしたね。邦画では、宮下順子さんがピカイチだと思います。脱ぎ惜しみするような女優は、まぁ論外ですね。
大人向けの邦画…、もう期待してませんヽ(´o`;
リトル・ジョー、見ました〜!

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