作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv71141/
以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。
=====ここから。
天才チェス少年として有名な8歳のファヒム(アサド・アーメッド)と父親は、母国バングラデシュを追われ、家族を残してフランス・パリへとやって来る。だが到着してすぐ、強制送還の可能性に怯えながら、亡命者として政治的保護を求める戦いが始まった。
そんななか、ファヒムはチェスのトップコーチであるシルヴァン(ジェラール・ドパルデュー)と出会う。独特な指導をするかつての天才チェスプレーヤーでもあるシルヴァンと、明晰な頭脳を持ち口達者なファヒムはぶつかり合いながらも、次第に信頼関係を築いていき、チェスのトーナメントを目指すのだった。
だが、移民局から政治難民としての申請を拒否されたファヒムの父親は、身の置き所が無くなり姿を消してしまう。
ファヒムの強制送還が迫るなか、チェスのフランス国内大会が開催。解決策はただ一つ。ファヒムがチェスのフランス王者になることであった……。
=====ここまで。
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本来、あまりソソられるジャンルではないのだけれど、某新聞での映画評がやたら褒めちぎっていたので、何だかそこまで言われたら見ないといけないみたいな気になってしまって、見に行った次第。ドパルデュー(以下ドパ)が善い人役で出ているってのも興味を引かれた理由の一つかな。ドパのことは別に好きじゃないんだけど、、、。
◆『リトル・ダンサー』と同じではないか。
うぅむ、、、確かに良い映画だと思うし、新聞の評は決して“盛って”いないと思う。けれども、私としては、今一つグッとは来なかったのでした……。
貧しい家庭の少年が、その才能を見出しで延ばしてくれるユニークな大人に出会い才能を開花させて、逆境から這い上がる足掛かりを得るサクセスストーリー、、、と言えば、あの『リトル・ダンサー』と同じなんだよね。しかも、母親不在で、父と息子の物語であるところも同じ。
少年も、才能を伸ばしてくれるユニークな大人も、どちらも魅力的なキャラで、映画としての作りも奇をてらわずに王道を行っている。彼らの周囲の人間たちも、基本的には善人で、心温まる作品になっている。
なのに、どーして本作は『リトル・ダンサー』ほどグッと来なかったんだろう……、と考えた。
◆難民・移民問題
そして行き着いた結論として、大きな理由は2つかな。
1つは、多分、本作は、背景に“難民・移民問題”があるから、という気がする。『リトル・ダンサー』の炭鉱閉山も深刻なんだが、やはり、命の危険を感じて故国を棄て亡命を目指して外国(フランス)へ渡るというのとは、同じ深刻でも意味が違う。しかも、フランスに来ればもう大丈夫!ってわけではゼンゼンない。というより、フランスに来てからも苦難続き。
ファヒムは子どもで柔軟性に富んでいる上、チェスで鍛えられているその抜群の記憶力を背景に、どんどんとフランス語を吸収し、チェススクールの仲間とも親しくなり、パリでの居場所を着実に作っていく一方で、父親は仕事にも恵まれず、パリで自分の居場所を見付けられないが故に、現地の人間との交流も全くなくフランス語をいつまで経っても理解できないでいるので、父親の孤立が際立つ。
役所で、亡命申請する際も、インド人に通訳をしてもらうが、この通訳はインド人の申請を優先したいがために、ファヒムの父親にデタラメな通訳をするのである。アッと言う間にフランス語を理解するようになったファヒムが、通訳がインチキだと見抜いたが、結果的に申請は却下され、ファヒム親子は不法移民となる。
こういう、境遇の厳しさが、どうしても見ている者に暗さを感じさせるのは否めない。
だから、ラストも、ファヒムがチャンピオンになって一転、申請が認められることになった(強制送還を免れたというだけだが)という展開も、あまりカタルシスを得られない。ファヒム親子が特別扱いで辛うじて救われただけであり、その他大勢の同様の境遇にある難民たちは、依然として不法移民のままである。
もちろん、『リトル・ダンサー』でも、ビリーだけがバレエの才能であの寂れた炭鉱街から羽ばたき、残された父親や兄は再び炭鉱の縦坑を降りていく、、、というシーンが描かれているので、同じなんだけれど。
でも、『リトル・ダンサー』では見ている人の多くがカタルシスを得られたのではないか。そして、本作では得られない人が多いのではないか。その違いは、やはり、これが“難民・移民問題”という、国際問題であり、人権問題に直結しているからではないか、、、。
監督自身、観客にカタルシスを感じさせたいとは思っていないだろうし、“カタルシス=グッとくる”ではないのだから、むしろこれはそういう映画なんだと受け止める方が良いのだよね。
◆やっぱりジェイミーは凄かった、、、ということ。
2つ目は(こっちが最大の理由だと思うが)、やっぱり、ジェイミー・ベルが可愛すぎた、ってことかなと。あと、ジェイミーの躍動感溢れるダンスシーンがあまりにも素晴らしすぎたってこと。ファヒムを演じたアサド・アーメッドくんも可愛いんだけどねぇ。あと、題材がチェスってのも、ダンスに比べると動きが少ないからちょっと地味目よね。
チェスの試合の描写では、あまりドキドキ感もなく、一応ライバルとの一騎打ちは描かれるけれど、割とアッサリとチャンピオンになるのね。
ファヒム自身が、一人でチェスに強くなるために葛藤する、というシーンもほとんどない。良きコーチであるシルヴァンとも、終始良い関係で、こちらの2人の間にも葛藤がほとんどない。時間を守るという概念がなくて遅刻ばかりするファヒムに怒るくらい。
強面の見掛けによらず、シルヴァンはバングラデシュのことを勉強してみたりと、善人そのもの。
この辺りも、やはり『リトル・ダンサー』の方が、構成としては一枚上かな、という気はする。
とはいっても、もちろん、本作は真摯に作られた良作に違いない。少年の才能を開花させるシルヴァンを演ずるドパも、さすが名優、ハマっていた。前述の新聞評では、以下のように書かれていた。
変わり者のコーチのドパルデューが実にいい。渋くて、艶があって。/この作品で重要なのは、監督の登場人物に対する眼差しがそれは優しいことだ。観客の心を蕩かす。/監督の心根が泣かせる。/「私は、おとぎ話を固く信じ続けている」
確かに、本作は、一種のおとぎ話。でも、実際にあったおとぎ話なんである。
天才・藤井聡太君で注目の将棋と、チェスは、
同じ古代インドのチャドランガというボードゲームが起源だそうな。
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