映画 ご(誤)鑑賞日記

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主婦マリーがしたこと(1989年)

2018-08-27 | 【し】



 以下、上記リンクよりストーリーのコピペです。

=====ここから。

 第二次世界大戦、ドイツ軍占領下の北フランス、ノルマンディ。この街にもナチの脅威は迫っていた。ユダヤ人狩りによる親友のラシェル(ミリアム・ダヴィッド)の連行を知り悲嘆にくれるマリー(イザベル・ユペール)は、ある日隣に住むジネット(マリー・ブネル)の堕胎を手伝い、お礼に彼女から蓄音機をもらう。

 数日後、夫のポール(フランンワ・クリュゼ)が、傷痍軍人として復員してきた。しかし既にマリーの夫への愛情は、すっかり冷えきったものになっていた。

 その頃からマリーは、ふとしたことで知りあった美しい娼婦のリュシー(マリー・トランティニャン)の商売用に自分の部屋を貸してやるようになり、この副収入のおかげで次第に暮し向きが良くなってゆく。

 しかし相変わらず彼女のポールに対する態度は冷淡で、やがてマリーは、リュシーの常連客で今はドイツ軍のスパイをしているヤクザ者のリュシアン(ニルス・タヴェルニエ)と深い関係になる。そして違法の堕胎で金を稼ぐマリーは、もはや有頂天だった。

 しかし、そんな日々もつかのまの幸せに終わる。ある日帰宅したポールが、ベットで眠りこけているマリーとリュシアンの姿を目撃し、ついに妻の不正を匿名の手紙で警察に知らせたからである。こうしてマリーは逮捕された。そして彼女は異例にも、国家裁判所の法廷で裁かれることになる。

 折り悪しくも、ドイツ軍に占領され道徳観にこだわりだした国によって、彼女はみせしめとして国家反逆罪による極刑を求刑される。'43年6月、マリーはフランス最後の、女性のギロチン受刑者として、その生涯を終えるのだった。

=====ここまで。

 
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 史実を基にしたイザベル・ユペールが36歳のときの作品。いろいろ考えさせられる映画でございました。


◆フランスは巨大な鶏小屋

 いつもシレッとしているユペール様が、本作でもシレッとマリーを演じている。そしてこのマリー自身、妊娠中絶という、当時の犯罪行為を、案外シレッとやってしまっている。

 きっかけは単純で、仲の良かった隣人女性の中絶を手伝ったら、思いがけず、レコードプレーヤーという高価な報酬を得たことだ。しかも、中絶方法は比較的簡単で、石けん水を作って、それを子宮に流し入れるというもの。正直なところ、これで中絶ができるのか、、、? と素朴な疑問が湧くが、どうやら出来るらしい。

 何の医学的知識もないマリーが、史実では、この手法で20人以上も堕胎しているというのだから、仰天である。

 それはともかく、思いのほか“イイ商売”になると味を占めたマリーは、最初こそ怖々、、、という感じだったが、アッと言う間に慣れた手つきで金儲けにいそしむようになる。それもこれも、とにかく彼女の家庭が貧しかったからである。幼い子どもを2人抱え、戦地から怪我で戻ってきた夫はろくに働くことも出来ず、かといって、マリーが稼げる手段を持ち合わせているはずもなく、マリーにしてみれば、生きるためにやり始めたこと。

 でも、捕まるまでのマリーは、実に楽しそう。中絶もお金のためと割り切ってサバサバとこなし、金を手に入れれば、それでちょっと贅沢なものを買い、子どもに与え、自分も身ぎれいにして街中を歩いて、、、と、本当にささやかな楽しみを味わう、憎めない女性でしかない。マリーが中絶に躊躇しなくなったのは、金が欲しかったことが一番だけれど、やはり、中絶を選ばざるを得ない女性の気持ちが分かったから、というのも当然あるだろう。

 ただ、途中からちょっと図に乗りすぎた、、、というところか。愛人まで作って、ヒモ同然の夫の目前でその愛人と堂々と痴態を演じるということまでやらかしてしまう。そら、いくらヒモでも、夫も男である以上、これは看過できないのもムリはない。

 しかし、、、この夫、言っちゃ悪いけど、サイテーである。気持ちは分かるが、何も、警察に密告書を送るなどという姑息なことをせんでも良いだろう、、、。まあ、こんな夫だから、マリーも愛想を尽かした、ということなんだろうけれども。史実ではどうなのか分からないし、この辺は恐らくシナリオ上の創作だと思うけど。まさか、死刑になるとは思っていなかったから密告したんだろうけれど、結果的に、妻を失い、子どもから母親を永久に奪ったことになる。

 マリーがどんどん身ぎれいになって美しくなっていくのが、なんだか(この先に待つ悲劇を知っていても)微笑ましく見えてしまった。堕胎の報酬で得たレコードプレーヤーから流れる音楽に乗って、愛人の前で、テーブルの上でノリノリで踊るマリーは、可愛くさえ思える。

 捕まってからラストまでは、もうマリーが可哀想で見ていられなかった。彼女が斬首刑になってしまったのは、ただただ運が悪かったということ。見せしめにされたのだから。ナチスに良いようにされるフランスの、いわゆる“黒歴史”だろう。マリーの弁護士の言う「フランスは巨大な鶏小屋だ」というセリフが印象的だ。


◆中絶は女性の権利、避妊は男女の責任。

 ナチスは、ユダヤ人を始め、障害者等を老若男女を問わず大量虐殺していたのだけど、その一方では、アーリア系(というのが正しいのか疑問だが)の純血主義を掲げて、それらの女性の妊娠中絶は、固く禁じていて、中絶したら「国家反逆罪」に問われたという。本作で、ユペールが演じるマリーが死刑になったのも、この国家反逆罪に問われてのことだった。

 フランスは、今では女性の権利として妊娠中絶は合法であるが、いまだに、中絶が犯罪とされている国は世界を見渡せば多いのが現状だ。この中絶がタブーだったり、違法だったりする背景にあるのは、大抵、宗教的な問題である。

 ナチスにしても、宗教にしても、女性の妊娠・出産に対する精神的・肉体的負担など、一顧だにしていない。本作でも、妊娠して困り果てているのは皆、女性たち。国には中絶するなと簡単に言われるけれど、実際問題、産む&育てる環境が整っていない状況で、どうやって出産して育てろというのか。国が責任持って育ててくれるわけじゃないくせに。

 同じ女性でも中絶をタブー視する人は当然いるが、男性は、それに輪を掛けて女性の妊娠にまつわる苦悩に無理解なのが世の常だ。男が無責任に射精しなければ、女は妊娠しない。勝手に欲望を放出しておいて、その代償に女性が苦しんでいても、反省するどころか、第三者と一緒になって中絶しようとする女性に罵声を浴びせる側になるのだから、本当に始末が悪い。

 本作で、そんな女性達の苦しみに寄り添っているのは、無知なマリーだけではないか。

 途中、既に6人の子どもがいる女性が、7人目を妊娠し、困り果て、苦しみ抜いて、マリーの所に中絶を依頼に来る。そのときの彼女は「いつも自分の乳に赤ん坊がぶら下がっており、まるで乳牛みたいな自分が情けなく哀しい」というような胸の内を涙ながらに独白する。マリーは、特別慰めることもないが、「分かった」と中絶を引き受けるのである。マリーを死刑にした国家と、中絶したマリーと、どちらがより人間らしいと言えるのか。

 自分が乳牛のようだと泣く女性は、しかし、マリーの施した処置が悪かったのか、亡くなってしまう。そして、無責任な種蒔き夫は、妻が死んだことに耐えられず、自殺してしまい、女性の姉という人がマリーの所にやってきて、マリーを責める。しかし、一番責められるべきは、夫だろう、この場合。ホントに、世の中、理不尽である。

 ある映画のレビューサイトで「避妊は女性の責任である」と書いている女性がいたが、現代にあっても、こういう女性は多い。同じ女性として、私はこういう女性の思考回路こそ問題だと思う。避妊は、女性だけの責任ではない。男性にも同等の責任があるのだ。男の子を持つ親御さんには、是非とも、我が子に思春期前から避妊教育をみっちりして欲しいものだと思っている。

 妊娠するのが、男女半々の確率だったら、世の中、もっと平和になると思うんだけど、、、どーでしょーか?








ユペール様、美しい、、、。




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2 コメント

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主腐たけ子がしたこと (松たけ子)
2018-09-01 21:12:35
すねこすりさん、こんばんは!
主婦マ、ご覧になったのですね!イザベル・ユペールのシレっと演技、大好き。あんな風にクールにシレっとなりたい!
中絶方法には、ほんと驚かされました。そして、ギロチン処刑も。斬首なんて、フランス革命の頃ぐらいまでかと思ってましたし。
マリーがあそこまで調子ぶっこかないで、ダメ夫をあそこまで蔑ろにしなければ、あんな悲惨な末路にならなかったはずですよね~…中絶や避妊についても、いろいろ考えさせられました。男は気持ちいだけで終わるので、ほんと不公平ですよね~。
何しちゃったの? (すねこすり)
2018-09-02 00:17:43
たけ子さん、こんばんは~☆
ホント、ユペールさまはクールですね。しかも美しい。ものすごい美人、というのではないけど、美しいです。
素敵だなぁ、と思います。
この感想、なんか、もっと面白かったと感じたことを書こうと思っていたんですが、書いている内にだんだん怒りをおぼえてしまい、男への文句を書き連ねてしまいました。反省反省。
もう少し、冷静にならないとですね。
カープ、負けないですね。3連覇、大丈夫そうですね!

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