映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男(2015年)

2018-10-07 | 【と】



 以下、上記リンクよりストーリーのコピペです。

=====ここから。

 第二次世界大戦後、共産主義排斥活動“赤狩り”が猛威を振るうアメリカ。その理不尽な弾圧はハリウッドにも飛び火し、売れっ子脚本家ダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)は、議会での証言拒否を理由に投獄されてしまう。

 やがて出所し、最愛の家族の元に戻ったものの、すでにハリウッドでのキャリアを絶たれた彼には仕事がなかった。しかし、友人にこっそり脚本を託した「ローマの休日」に続き、偽名で書いた別の作品でもアカデミー賞に輝いたトランボは、再起への歩みを力強く踏み出す……。

=====ここまで。

 赤狩りに遭ったが故に、ここまで有名になったという皮肉。しかし、これだけ名作を多く書いているのだから、やはりスゴい。

 
☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜


 何となく劇場まで行く気になれなかった本作。……まあ、DVDでも問題なかったかな。


◆異端は作られる

 アメリカは、今も共産主義が大っ嫌いなのは誰もが知っているけれど、当時の赤狩りが凄まじかったのは、それだけソ連が怖かったことの裏返しなんじゃないかなぁ、、、と、本作を見ていて感じた次第。嫌悪しているというより、怖がっている。犬が尻尾を後ろ足の間に入れて、むやみやたらに吠えまくっている、、、そんな感じに思えた。

 共産主義は弾圧しても良い、ってのが、今思えばやっぱりちょっとやり過ぎだったということだろうけど、当時の世界情勢を考えると、、、まぁ、仕方ないのか。だからといって、あんなやり方は許されて良いとは思えない。あれじゃぁ、魔女裁判と同じだろう。異端は、権力者によって作られ、それによって分断が生じ、詰まるところ、権力者にとって都合の良い状態が出来上がるだけの話だ。異端を作って自らを正当化することで、支持を得る。

 ……とはいえ、本作は、ちょっと描き方に難がある。

 つまり、トランボたちは犠牲者、反共主義者たちは加害者という、単純な二項対立的な構成になってしまっている気がする。共産主義者というだけであの扱いは人権無視もいいとこだが、反共主義者たちの描き方があまりにも酷すぎるというか、バカっぽく見せすぎで、ちょっと気の毒ですらある。確かに、反共主義者たちの言動は、脊髄反射に近いところも多々あるし、客観的に見ればバカっぽく見えるとは思うが、彼らなりの主義主張や理由もあったわけで、そこら辺の背景も、ちょっとは描いてあげてもいいんじゃないの? ってこと。

 それは、エリア・カザンが一瞬たりとも出てこないことにもつながるような。映画人として、彼をバカっぽい方の人たちに一括りにするのはやっぱし抵抗があったんじゃないか、とかね。『ローマの休日』の監督を、キャプラが降りたことも出てこない。私は、キャプラは嫌いだから、そういうエピソードが入っていてもゼンゼン構わないが、彼の崇拝者はたくさんいるから、やっぱり忖度したのかな、とかね。

 本作では、ソ連怖さの余りに、共産主義を異端とし、堂々と弾圧を国家を挙げて行ったわけだから、それは、国の歴史の汚点として記録されて然るべきだ。カザンもキャプラも擦ってもいないにしても、こういう映画がアメリカ自身によって作られるのは、まだ救いがある。


◆逆境で生き延びるとは、、、

 自らの腕一本で稼げる人、というのは、やっぱり凄いし素晴らしい。

 エディこと、エドワード・G・ロビンソンがトランボに「君は偽名で仕事が出来る。でも、自分は顔を晒さなければいけない仕事なんだ」というようなことを切実に訴えるシーンがある。確かに、俳優は、顔を晒さなければならない。トランボはその点、幸運だったと言えるだろう。

 しかし、彼が仕事が出来たのは、ただ運が良かったからではなく、彼に才能があり、次々に作品を書き上げる努力と根性が伴ったからだ。本作の架空の人物らしいが、トランボとともに赤狩りに遭った脚本家アーレン・ハードは、稼げないまま病死する。アーレンには、ヘンなプライドはあったが、才能も根性もなかったのだ。トランボは、プライドもかなぐり捨て、B級映画の脚本も厭わず書き上げた。逆境で生き延びる人と潰れる人の、典型的なパターンだ。

 私には、稼げる腕がないので、逆境に遭ったら即死するしかないのだが、逆境までではなくとも、自分が置かれた状況と、自分がなすべきことと、自分が目指したい方向性と、それらをきちんと俯瞰して、最適な行動を選択できるだけの審美眼と行動力だけは備えておきたい、とは思う。


◆その他もろもろ

 カーク・ダグラスを演じたディーン・オゴーマンが、カーク・ダグラスにそっくりでビックリ。ジョン・ウェインを演じた人はゼンゼン似ても似つかぬ役者さんだったのに。

 カーク・ダグラスが、あんな気骨ある人だったとは知らなかったわ。息子のマイケル・ダグラスのイメージが被ってしまって、どうしても、女好きのニヤけ男みたいに思っちゃうけど、ゼンゼン別の人だよね、親子って言っても。まあ、『スパルタカス』も実はイロイロあった映画みたいだけれど、、、。

 それにしても、 「アメリカの理想を守るための映画同盟」って、すごいダサいネーミング。大体、“理想”なんて言葉をスローガンに掲げるのって、嫌いだわ~。理想って、言っちゃった時点で、もうそれは実現を諦めているもののようにしか思えない。それに、この同盟の場合、そもそもの“理想”が何なんだかもちゃんと掲げられていないしね。そういう曖昧であやふやなもののために、自分が正しいと言ったり、他人を貶めたりするのって、ホントに馬鹿馬鹿しい。

 ヘレン・ミレンが、そのバカっぽさを体現する役を楽しそうに演じておられて、その辺はさすがだった。彼女がいたから、本作は締まったようにも思うわ。あ、あと、ダイアン・レインが、ちょっと年取ったけど、相変わらずステキなのも良かった。

 トランボが、浴槽に浸かってシナリオの構成を一生懸命考えているシーンが面白い。後年『ジョニーは戦場へ行った』を監督したエピソードとかあっても良かったんじゃない、、、? とも思ったけど、まあ、やっぱし蛇足かな。








「最も嫌われた男」じゃなくて「迫害された男」でしょ。




 ★★ランキング参加中★★

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 愛する映画の舞台を巡る旅Ⅱ ... | トップ | ダンガル きっと、つよくな... »

コメントを投稿

【と】」カテゴリの最新記事