映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

RHEINGOLD ラインゴールド(2022年)

2024-04-28 | 【ら】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv85157/


以下、公式HPよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 イスラム革命により迫害された音楽家の両親にもとに生まれたジワ。最初の記憶は刑務所の中だ。

 数年後、父が有名な音楽家であることから保護され、ドイツのボンへ亡命する。9歳の時にジワはピアノを習い出す。

 10年後、父は愛人を作って家を出ていき、ジワは反発してピアノを弾かなくなる。その頃、歌がうまい友人・サミーと出会ってHIPHOPに興味を持つようになる。さらにストリートでのし上がるためにボクシングジムで鍛え、「Xatar(カター:クルド語で“危険”)」として有名になっていく。

 ラッパー・カナコンダやDJ・マエストロと出会い、音楽の楽しさを知っていくものの、クスリの密売容疑で捕まる。

 出所後、音楽マネジメントを学び始めるジワだが、稼ぎのために闇組織に入り、なんと金塊強盗を実行!ジワは8年の禁固刑が言い渡されたものの、見張りの目を盗んでレコーディングを行い、アルバムを完成させる。獄中から発売したアルバムはヒット、“ギャングスタ・ラッパー”として、さらに音楽プロデューサーとしても、その名を轟かせていく……。

=====ここまで。

 ファティ・アキン監督作。


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 何かの映画を見に行った際に、予告編を見て、アキン監督作品かぁ、、、面白そうかも?と、公開されたら見に行こう♪と思っていたのに、延び延びになって、先週ようやく見に行きました。

 TCG会員サービスデーだったんだが、観客6名、、、ごーん。これ、マジで面白いです。何でこんなに良い映画が、こんなに入りが悪いの?? 哀しいよ~。


◆あっという間の2時間超

 とにかく、幕開けから波乱万丈、、、というか、あれこれいろんなことが起き過ぎて、目も耳も脳みそもスクリーンに釘付けになる。えー、わー、うっそー、、、みたいな声が脳内で響く。

 イスラム革命下のイランの物語というと、マルジャン・サトラピのマンガ(というかバンド・デシネか)『ペルセポリス』が浮かぶ。アニメ映画化もされて、映画版も結構好きなんだが、本作の主人公ジワは、革命中に生まれている。しかも、ジワはクルド人なので、サトラピ家(上流階級)とは境遇が異なるが、ジワの父親・エグバルは高名な音楽家で、イスラム革命が起きるまでは恵まれた環境にいた様子。

 革命で突然、環境が激変する様子が序盤に描かれるのだが、これが劇画チックでありながら、おそらくカリカチュアされたものとも言えない(つまり、割とリアルな)んじゃないのか、、、と思いながら見ていた。ある日を境に、180度日常がひっくり返るというのは、想像するだけで怖ろしい。

 母親・ラサルがジワを産み落とすシーンも壮絶。映画用に書かれたシーンだと思うが、だとしても、実際に厳しい環境で出産したのだろうことは想像に難くない。

 が、フランスを経てボンに落ち着いてからは、別の映画かと思うくらいに、雰囲気も一変。ジワが危険野郎になっていくまでがスピーディに描かれる。これもまた、ホンマかいな、、、というようなことの連続である。

 家庭環境から言えば、想定外な方向へと才覚を発揮するジワである。実際、彼の妹は勉学に秀でて医者になっている。どちらが良いかとかいう問題よりも、ジワがなぜあそこまで暴力的な道へと自ら身を投じて行ったのかが、、、見ていて疑問ではあった。

 正直、ラストまで見てその疑問は解けないが、無理やり解釈すれば、父親への反発心というところか。愛人を作って、母親と自分たちを捨てた父親。生活に困窮する家族を、とにかく即時的に救いたいという思いが強かったのかな、と。勉学に励んで、それなりの地位を得て、、、ってのは時間が掛かり過ぎるもんね。

 あとは、元来の本人の気質だろう。負けず嫌いが、ああいうベクトルに働くと、ああいう状況になるわな、、、と。かと言って、脊髄反射という感じでもなく、知力も感じる。その知力があったおかげで、彼はただのチンピラで終わらなかった、、、とも言えるのか? まあ、結果オーライではあるが。

 ネットの感想で“そうは言っても、所詮は犯罪者。そういう側面をも賞賛しているようで不愉快”みたいなのもあったが、一理あるけど、だから映画になったわけで。裏社会に足を踏み入れて抜け出せないのがお決まりコースな中で、レアケースだから、映画になったのよ。一応、映画の中ではジワは人は殺していないようだし。


◆多彩な音楽

 ラップがあんまし好きじゃない人間にとって、ジワのラップの何がそんなにウケたのか分からないのだが、本作内での数々の音楽(もちろんラップ含む)が実に良かった。

 ドイツはヒップホップが非常に人気なんだとか。トルコ移民が多いというのも、その理由の一つだと、パンフにはある。へぇー。

 ジワの父親は、息子に音楽をスパルタ式で教育するが、愛人を作って出て行ったことで、ジワは父親の属するクラシック音楽からは遠ざかる。でも、ラップに興味を持って、そこから才能を発揮していく過程を見ていると、やっぱし、蛙の子は蛙だなぁ、と感じる。スパルタ教育されたピアノが少なからず生きているし、音感やリズム感は父親の教育による部分も大きいだろう。

 とはいえ、芸術分野では、努力で補えない才能は絶対的にあると感じるので、ジワには才能もあったということだ、、、多分。

 タイトルの「ラインゴールド」は、ワーグナーの「ラインの黄金」から。ジワ少年が父親とボンのオペラハウスに行った際に、流れていたのがこの「ラインの黄金」だった。この曲を、この物語に絡めてくるあたり、アキン監督の巧さを感じる。ワーグナー嫌いな私にとっては、どーでも良いのだけど、本作内でかかっていたこの曲が“ええ曲やん”と感じてしまったのが、なぜかちょっと悔しいのだよね、、、。マーラーもそうだったけど、映画の中で流れているのを聴くと、イイ曲だと感じるの、何なんだろうか、、、。音楽だけ聴いていると、あんましそうは感じないのに。……不思議だ。

 ジワ役のエミリオ・ザクラヤの演技が素晴らしかった。ジワの幼馴染で、彼を折々に助けるミラン役のアルマン・カジャニが若い頃のアンディ・ガルシアにちょっと似ていて、なかなか良かった。

 アキン監督、やっぱし良い。

 

 

 

 

実物のカターの方がはるかに“ヤバそう”に見えます。

 

 

 

 

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