映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

きっと、うまくいく(2009年)

2015-07-31 | 【き】



 インドの超エリート工科大学に入学し、寮で同じ部屋になったランチョー、ファルハーン、ラージューの3人。この大学、学長が学生を勉強に追い立てまくって追い詰めることで、大学の国内ランキングを上げてきたのだった。

 しかし、天才肌のランチョーは、そんな学長の方針に真っ向から疑問を呈し、飽くまでマイペースに学問を究める自由人を貫く。そんなランチョーに、ファルハーンとラージューも次第に影響を受け、学ぶことの本質と、生きることの意味、そして自分と正面から向き合うことを余儀なくされる。そんな2人が出した卒業後の進路は・・・。

 そして、自由人ランチョーは、卒業後、あれほど仲の良かった2人の前から姿を消してしまう。彼は今どこに・・・。

 学生時代から10年後、ファルハーンとラージューが、ランチョーを探す旅を通じて、過去と現在を往復しながら、彼らの青春絵巻を展開させる約3時間の長尺映画。

 
☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜


 日本で公開されたのは2013年です。もう2年経つのか・・・。実は、本作は劇場に6回見に行きました(リバイバル上映のギンレイも含めてですが)。それくらいハマってしまった作品です。当然、みんシネにも思い入れ満載のレビューを書きました。

 本来なら、そこまでハマったのなら、10点満点の10点を付けそうなものですが、私はみんシネで9点としました。それは今も変わりません。なぜ-1点なのか。それをここでは書きたいと思います。

 本作の素晴らしいところは、非常にベタになりそうなテーマを、しかも真正面から取り上げているにもかかわらず、まったく嫌みがなく説教臭くなく、ユーモア満載で、なおかつシリアスな面も描いているところです。

 しかし、本作は一歩間違えると、かなり不愉快な映画になりかねない要素をはらんでいるのです。

 例えば、ランチョーは、天才肌ですから、彼の持論である「成功するために努力するのではない。努力すれば成功はついてくる」が通る訳です。しかし、その他の学生は(エリート大学に入っている時点で優秀に違いないけれど)凡才ですから、そんなのはタテマエ論に過ぎないと分かっているのです。「寝言は寝て言え」ってやつです。そんな理想論を堂々と掲げて、ランチョーは、ファルハーンやラージューの生き方に口を出すわけですから、正直、ウザい奴と思われても仕方がないのです。

 また、チャトゥルの晴れの舞台であるスピーチの原稿を改ざんした件では、改ざんした内容が倫理的にどうなのか、という点も引っ掛かります。正直、あそこでドン引きする人がいても不思議ではありません(私はギョッとはなったけれど、流しました。理由は後述します)。ヘタすりゃ、訴えられるレベルのものです。かの国でその犯罪が横行していることを思えば、笑えない、という人がいるのも当然の話です。 

 その他、3人のやらかす愚行が、あまりにもバカ過ぎるとか、迷惑すぎるとか、ラージューの自殺未遂も自業自得だとか、、、。他にも、なんだか上手く行きすぎでご都合主義っぽいとか、、、。まあ、突っ込みどころは満載です。

 これらのことを私のセンサーもどこかで微弱ながら感じ取ったために、恐らく満点を付けるのをためらったのではないか、という気がします。他に10点を付けた作品と比べ、どうしても、10点を付けることができなかったのです。

 特に、原稿改ざんについては、一瞬「は?」と、サーッと心が引いて行く感じになり掛けました。が、なぜ流したかというと、韻を踏んだ言葉遊びのひとつと解釈したからです。そして、実際、チャトゥルがスピーチしているシーンを見て、これは、世相に対する揶揄でもあると感じたからです。ま、これはかなり好意的に見て、の話です、もちろん。

 じゃあ、逆に、そんなマイナスポイントがあるのに何で9点も付けるのか、ってことです。

 これじゃ理由にならんと言われそうですが、正直なところ、私はこれを見て理屈抜きで“グッと来た!!!”のです。最初に見てエンドマークが出た時、劇場の椅子から立ち上がれませんでした。本作を見て「泣けた」という人もネットではたくさん見かけましたが、私は泣けませんでしたし、感動したというのともちょっと違いました。そう、みんシネに書いたとおり、もの凄い幸福感と昂揚感に襲われたのです。こういう感覚を覚えたのは、恐らく本作が初めてです。他の10点作品でも、こういう感覚は味わえなかったのです。これは、本作にしかない引力があるからだと思いました。

 なので、その後、5回も劇場に、なんというか、催眠術に掛かっているみたいな感じで通っていました。一種のトランス状態でしょうか。本作を見るとそういうラリッた感覚になれた、んでしょうか。自分でもよく分かりませんが、とにかく、見終わるとまたすぐ、次が見たくなる、という感じでした。6回目を見ても、やはり7回目を見たいと思いました。

 そして、アマゾンで予約していたblu-rayが手元に届き、早速見る気になったかというと、、、これが、なぜかそうではなかったんです。正直、見るのが怖いというか、実は、まだblu-rayの本編は見ていないのです。もう購入してから1年半経つというのに。特典映像は見ましたけどね。

 10個作品の『リトル・ダンサー』もそうですが、やはり、あまりにも思い入れのある作品というのは、見るのに特別な心の準備が必要になってしまいます。『ダーティハリー』も、通算100回は見ていると思いますが、今は、見るのに勇気がいるようになってしまっているし、、、。見飽きたと思いたくないんですね、多分。そして、自分がそれらの作品に抱いている感覚を壊したくないのです、テレビで見ることによって。スクリーンで見て壊されるのなら、まだ諦めもつくのでしょうが、、、。

 でも、そこまで、たかが(と敢えて書いちゃいますが)映画ごときで思い入れを持てる、というのは、またそういう作品に1本ならず何本も出会えているというのは、私は本当に幸せ者だと心から思います。そこまで振動させる心を持てていることも、良かったと思えます。何を見てもそこそこ、、、じゃ、あまりにもつまらないし、虚しいですから。

 というわけで、本作は、ある程度好き嫌いが分かれる作品かと思いますし、押し付けがましいことを書くのも本意ではありませんが、でも、まあ見て損はない映画だと思います。





劇場で見た回数最多作品です。
(2位は『リトル・ダンサー』の5回)




 ★★ランキング参加中★★

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 昼顔(1967年) | トップ | ボヴァリー夫人(1991年) »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
みんシネも読みましたよ! (フキン)
2019-03-16 14:51:37
かなり長尺のこの作品。
見ている最中、あれ??まだ終わらないぞ‥と思いながらも
まだ、楽しませてくれるんだ!!とうれしくなった作品でした。

そして、アミール・カーンの実年齢にあとで驚きます!

実は私「pk」は以前に観ています。
でも、ハマらなかったんです。

なので、これもきっと・・・と思っていたんです。
(pkのほうが制作されたのが後なんですね)


でもすねこすりさんが一種のトランス状態になられたという
レビューを見てめちゃ興味湧いたんです。笑


すねこすりさんのようには私はトランス状態みたいには残念ながらならなかったんですが
「pk」より、楽しめまし映画的にはこっちのほうが断然良かったと思います。

インド映画はおしなべて、ベタ!!という感覚が付きまといますが
そこにハマれるか否か、ということがインド映画を楽しめるかどうかにある気がします。

そのベタすぎる演出が笑えるタイプだと、ずんずんその世界に引きずり込まれていくんですよね。
そして、「もしかして、この後こうなるじゃ…ああなってほしい!!!」という観客が無意識に望む展開をすごくイイ感じで「これなんだろ!!」的な感じで大いに「それだよ!!それ!!」って感じで見せてくれるんです!!

張り巡らせた伏線の気持ちいいまでの拾い方!!!

日本の映画は、ベタを嫌いますよね。
ヨーロッパ系の映画もベタを避けようとする映画が多い気がします。

その点、インド映画はそこを避けず真正面から見せてくれるから気持ちいいんですよね。

話しが一転、二転、三転もするところもグイグイ見せてくれましたね。
ランチョーがランチョーじゃなかった!?ってところは「ええええーー?!!!」ってなりました。


インドの理系偏重熱とか絡めて、題材に人間の本来の幸せを問う大作になっていましたね。

すねこすりさんはその辺にも琴線に触れたんじゃないですか?
(知ったようなこと言ってすみません。すねこすりさん、才女の匂いがするもんで・・)

私は受験勉強とかほとんどせずに来た、落ちこぼれ組だったのですが、それはそれでまた
この映画は楽しませてくれました♪

ああ、あと、ピア役の女優さん、素顔のほうが奇麗でした。笑

インド映画ですが「めぐり合わせのお弁当」とかも、私は好きです。

返信する
AAL IZZ WELL !! (すねこすり)
2019-03-17 01:06:26
フキンさん、こんばんは!
拙い感想文を読んでくださり恐縮です。
私も、PKより、断然こちらの方が好きです。PKも良い映画だと思いますけど、何度も見たいとは思えなかった。
この映画は私にとって、何か理屈じゃなく、とにかくツボだったんだと思います。
最初に見たとき、見終わった後の感覚が今でも鮮明に思い出せます。
恋愛と一緒で、〇〇だから好き! なんてのじゃなく、とにかく好きなの、好き!!って感じ。お分かりいただけるでしょうか、、、。
映画友とも一緒にリバイバル見に行ったんですけど、彼女はそのとき、ふーん、って感じだったんです。数年後、別の劇場でリバイバルがかかり、彼女は何となく見に行ったらしいのですが、その2度目でハマってしまい、その後、上映期間中に3度も見に行ったと言っていました。そして、Blu-rayも買ったと、、、(彼女はその後、アーミル・カーンにもハマっていました)。
でも、私、それを聞いて嬉しかったんですよね~。自分が好きな映画に同じようにハマってくれたなんて。恋愛じゃそれは困りますけど、映画なら大歓迎!
ベタって良くない意味で使われがちですが、私も、ベタは描き様だと思います。こないだ見た『グリーンブック』も、ベタベタだけど、良い映画だったし。
“人間の本来の幸せを問う”って、ホントにそう!! しかも、それを説教臭くなく描いているところが上手いな~~、好感度大です。
ピア役の女優さん(私には小林幸子に見えるんですけど)、確かに素顔の方がキレイですね。
「めぐり合わせのお弁当」未見なので、見てみます!
返信する

コメントを投稿

【き】」カテゴリの最新記事