映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

英雄の証明(2021年)

2022-04-10 | 【え】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv76228/


以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 イランの古都シラーズ。

 借金の罪で投獄され服役するラヒムは、婚約者が偶然、17枚の金貨を拾うという幸運に恵まれる。借金を返済すれば出所できるラヒムだったが、罪悪感に苛まれ、落とし主に金貨を返すことを決意。

 その善行がメディアで話題となり、ラヒムは“正直者の囚人”として英雄扱いされることに。

 ところが、SNSからある噂が広がり、状況は一変。父を信じる幼い息子までを巻き込む大事件へ発展していく。

=====ここまで。

 
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 今や、巨匠の感さえあるアスガー・ファルハディ監督作。……といっても、私は『別離』も『セールスマン』も未見です。見たいなぁ、、、と思いながら劇場行きを逃し続けて、DVD鑑賞もいまだ果たせず、、、でありました。本作は時間の都合がついたので、劇場まで行ってまいりました。


◆それ犯罪じゃないの?

 そもそも論として、イランというお国では、拾ったものをしかるべき場所へ届ける制度がないのでせうか???(パンフにもその辺の言及はない)

 日本の場合は警察(交番)とか施設の管理者とかに届けるわけで、ラヒムさん(正確に言えば婚約者だけど)の行為は、横領(占有離脱物横領)という立派な犯罪になる。

 それはまあ別に良いのだけど、本作内でラヒムさんが金貨入りバッグを拾った事実を公表しようとしたのは、金貨が想像以下の金額でしか換金できないと分かったからであり、もし納得いく金額で換金出来たら、ラヒムさん、絶対公表しなかったと思うのだ(婚約者だってその気マンマンだったわけだから)。んで、公表すると決めたラヒムさん、自分で「金貨入りバッグ拾いました」なるチラシを作ってあちこちにベタベタ貼っている。こんなことしたら、そら悪意のある人が名乗り出てくるのは当然の成り行きだ。これがイランでの常識なのか、、、? 謎。

 ……という具合に、序盤の展開で私の頭の中には???が一杯浮かんでしまい、ラヒムさんイケメンだけど、なんだかなぁ、、、という感じであった。

 でも、それもこれもあれも、お国の違いということで頭の中では脇に置き、映画に集中することに。

 正直者として刑務所のイメージ戦略に利用され、さんざん持ち上げられた挙句、噂が噂を呼び、あっという間に叩き落される。どこにでもある光景が描かれる。

 ラヒムさんを全うな善人として描いているわけではなく、成り行きで話してしまったプライベートなこと、嘘ではないけど盛ってしまったエピソード、良からぬアドバイスに安易に乗ってしまったこと、、、これらがぜ~~んぶラヒムさんの立場を追い詰めるように作用してくる。……あーあ、、、という感じで話はどんどん進むのだが。

 私が、それでもやっぱり引っ掛かってしまったというか、解せなかったのは、金貨入りバッグの落とし主を名乗る女性を探し出せないからと、ラヒムさんは婚約者の女性を落とし主の替え玉として証人に仕立てちゃうんだが、それがこの事件の致命傷にならないこと。ここで、ちょっと着いていけなくなりました。

 証人を捏造って、私の感覚からすると“即アウト”なんだが、本作内では「それは嘘でした」で流されており、致命傷となったのはその後、ラヒムさんが金の貸主と取っ組み合いの喧嘩をして、その動画が拡散されたことなんだよね。このへんの仕組みが、私の中では、いくらお国柄の違いとは言え、ゼンゼン理解できず、気持ち的に脱落しました。

 司法制度の違いなので、本作の構成にケチをつけても仕方がないのだが、ラヒムさんの善行(?)を持ち上げて寄付を申し出たなんちゃら協会の人たちも、ラヒムさんが金の貸主と乱闘騒ぎを起こした(その動画が撮られちゃったからだろうけど)ことばかりあげつらってラヒムさんを責めるけど、私がその協会の人だったら、むしろ、乱闘騒ぎは(もちろん暴力だから許されることではないが)本人同士の問題に過ぎないことで、証人捏造はそもそも違法だし、人としてそっちの方がよっぽどモラルに反していて許し難い行為で憤りを覚える。いくら追い詰められたって、それをやっちゃったら、彼の行動全てが嘘になってしまう、ちゃぶ台返しだと思うのよね。でも、映画の中では軽~くスルーされて、もう何が何だか、、、。え、問題そこ??状態だった。


◆剽窃騒ぎ

 ファルハディ監督作品を初めて見たわけだが、ネットの感想を見ると、彼の信者みたいな人たちの絶賛レビューも結構ある。信者はそういうもんだから別に良いのだけど、私は本作について、前述のような引っ掛かりを差し引いても、さほどグッと来なかった。

 シナリオとしてはよく出来ていると思うけれど、いかんせん、ラヒムさんが(すみません)トロ過ぎて、あんまし可哀そうだと思えなかったのが致命的。

 見た後に知ったのだが、本作は盗作疑惑があるらしく(詳しくお知りになりたい方は検索してください)、その経緯がまた本作と被るのよね。盗作の告発もSNSで尾ひれ背びれが着いて大事になって行った様だし、現実に裁判沙汰になっている。まあ、経緯を読む限りは、盗作とまでは言えないかもだが、少なくとも「原案者」として名前をクレジットしなかったのは、監督側の明らかなミスだろう。こんな脇の甘いことで大丈夫か??と言いたくなる。

 アイデアは、誰が最初か、、、というのは判断が難しい場合ももちろんあるだろうが、今回、監督を告発したのは彼の元教え子だということで、その辺りはもっと慎重である必要はあっただろうね。ちょっと嫌だなと感じたのは、この元教え子を自身の事務所に呼び出して「自分の作品(元教え子が実習で制作した動画。you tubeでも見られます)の原案は監督に帰属する」との確認書に署名を要求したという話。慎重さをそういう風に発揮するなんてね。元教え子の名前をクレジットに入れるだけで済んだのに、陰湿だと感じる。

 ネット上の監督信者みたいな人たちは、盗作ではない!と主張しているが、実際盗作かどうかは私は知る由もなく、そんな疑いがあると知ったところで、本作に対する私の印象はほとんど変わらない。そんな根本的な問題でミソがつく時点で、監督は反省した方が良いとは思うケド。ラヒムさんと一緒で、疑いの眼差しで見られちゃうのは仕方ない、、、って皮肉だよね。剽窃ってのは、100回中99回やっていなくても、1回やったら、その他の99回もやったと疑われる、そういう性質のものなのだから。

 他のファルハディ監督作品も、見てみようと思う、、、けど、しばらく後かな。

  

 

 

 

 

 

 


ラヒム役の俳優さんは、元テニスプレーヤーだそうです。

 

 

 

 

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2 コメント

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Unknown (すねこすり)
2022-04-13 22:08:01
たけ子さん、こんばんは☆

初ファルハディ監督に本作を選んでしまったのは失敗だったかもです。
たけ子さんと同じく、私の映画友も『別離』『セールスマン』はお気に入りだそうなので…。
立て続けに秀作を出すと、プレッシャーからか、あざとさも出るのかも知れませんね。
オスカー逃したのも、やはり剽窃疑惑が影響したみたいですが、疑惑がなくても、ドライブ〜の方が映画としては良いと思います。
主演の俳優さんが、なかなかのイケメンなのですが、イケメンハンターのたけ子さんのお眼鏡に叶うでしょうか(^^)
イラン、私も行きたい〜! でも、コロナが収束しても、プーのせいで海外旅行も色々難しそうですよねぇ。
たけ子さんのレビュー、楽しみに待っています♪
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イラク行きたい (松たけ子)
2022-04-13 00:11:33
すねこすりさん、こんばんは!
アスガー・ファルハディ監督の新作、気になってました!レビュウありがとうございます(^^♪
「別離」も「セールスマン」もなかなかの秀作で、私はすごく好きです(^^♪どっちも、あ、そーうこと!え、そーなるの?な脚本がすぐれてると思いました。「ある過去の行方」はタハール・ラヒムくんがイケメンでした♡
今度はネコババの話なんですね!ネコババ、犯罪!でも私、拾った1000円を交番に届けなかった過去があります…遠い世界な感じのイランの社会の様子を垣間見ることができるのも、ファルハディ監督作の好きなところです。イラン、いつか行ってみたいかも。
盗作疑惑があったんですね!だから今年のアカデミー賞にノミネートされなかったのでしょうか。パクリは昔ならいざ知らず、今はそれこそSNSの恐怖、すぐにバレて暴露されちゃうので要注意ですよね~。
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