まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

農業オットケー!

2021-04-11 | 北米映画 15~
 「ミナリ」
 韓国系移民のジェイコブは、農業で一旗あげるため妻子を連れてアーカンソー州で農園を始める。経営が軌道に乗らない中、韓国から妻の母が孫の世話のためやって来るが…
 昨年の「パラサイト 半地下の家族」に続き、今年も韓国ものがアカデミー賞を席巻。この作品はアメリカ映画でアメリカが舞台となってますが、登場人物はほぼ韓国人で台詞も韓国語なので、韓国映画界の快挙再びと言ってもいいのではないでしょうか。日本人としては何だか悔しい、もどかしいです。ヒットしてるらしい最近の某スウィーツ邦画や、某マンガ原作映画とか、日本ではもうこういう映画しか作られないのか~と落胆、失望せずにはいられません。国家としては日本以上にどうかしてる韓国ですが、映画だけは完全にわが国を凌駕してます。羨ましい。日本人の人気俳優やアイドルがハリウッド進出!ってのも、こんな映画こんな役でと失笑するものがほとんど。この作品のように、母国のアイデンティティを背負い、母国語で演技してアメリカで評価される、というのが真の、かつ理想的なハリウッドでの成功と言えるのではないでしょうか。

 韓国人一家がアメリカでの生活で苦労、奮闘する姿を描いてるのですが、韓流映画だときっと必要以上にドラマティックにしたり、お涙ちょうだいな感動エピソードや悲劇をぶっこんでくるところですが、この映画にはそんなあざとさや湿っぽさは全然なく、辛く厳しい現実の中にあっても優しさとユーモア、希望を失わない温かく爽やかな家族ドラマでした。必死に生きてるんだけど、追い詰められてギスギスすることなく、どこかのんびりほのぼのしてる楽天的なところが微笑ましかったです。お金や天候には苦労する一家ですが、アメリカといえばの差別偏見の被害にはほとんど遭ってなかったのが、ちょっと都合よすぎて不自然な感じもしました。アメリカ人、あんな善い人ばかりじゃないだろ。人種差別こそ、もはやアメリカ人の真の姿とさえ思える今日この頃。最近の非道すぎるヘイトクライムとか、アメリカ人の民度ってどんどん低くなっていってる気がします。あんなケダモノみたいな白人や黒人が、よくもまあ自分たちのほうがアジア人より上とか思えるよなあ。まさに狂気の沙汰です。

 家族ひとりひとりのキャラも、ありえないほど個性的には描かず、ごくフツーの市井の移民一家、でも魅力的な家族だったのが自然でよかったです。中でも幼い長男デヴィッドと祖母がいい味だしてました。二人のやりとりが笑いを誘い、かつしみじみと切なくもありました。デヴィッドにウザがられても、のほほんと大らかに孫を包み込むハルモニの包容力が素敵でした。私もあんなハルモニ、ほしかったわ。ハルモニの人柄や言動がほんと楽しくて、ちょっと品がないところやシレっとしたしたたかさに親近感。中盤とラストに、とんでもない辛苦と不運を一家にもたらしてしまうハルモニが、悲しくも愛おしかったです。

 一家を演じた俳優たちが、みんな素晴らしい演技!パパ役のスティーヴン・ユァンは、人気ドラマ「ウォーキング・デッド」で名を上げ、村上春樹原作の映画「バーニング」で高く評価され、この映画でアカデミー賞にもノミネートされるなど今アゲアゲな韓国系アメリカ人俳優。韓国語も流暢なんですね。優しいけど意固地で頑固、アメリカ人を信用してない偏狭さも自然に伝わってくる演技でした。ママ役のハン・イェリも、デヴィッド役のアラン・キムくんも、オスカー候補になってもおかしくない好演でした。特にブサカワなアランくん、末恐ろしい子役ですよ。英語と韓国語のバイリンガル演技も驚異でした。

 ハルモニ役は、韓流映画やドラマでおなじみの売れっ子ばばあ女優ユン・ヨジョン。韓国人俳優初のオスカー候補!受賞もありえるので、ほんと快挙です。プっと笑えて、しんみりと切なくさせる忘れ難い演技。韓国ならではの老女だけど、同時に若者への無償の愛と高齢者の悲しい末路は、誰の心の琴線にも触れる万国共通なものではないでしょうか。オスカー獲ってほしい!
 農業って尊い!そして大変!と、あらためて思いました。お金と体力があれば、私も農業したい!毎年狭い庭のプランターで、ロマネスコやミニトマトを栽培してるのですが、せめて小さな畑で野菜を育ててみたいものです。それにしても。この映画を観て、夢をかなえるためにはきれいごとばかりでは無理だと思い知りました。誰かが傷ついても犠牲になっても構わない、という冷酷さも必要なんですね。独りの力で実現できる夢なんてありません。
 タイトルのミナリとは、韓国語でセリのことだとか。ハルモニが水辺でセリを育てるのですが、ほとんどほったらかしでも生い茂る逞しさは、異国での苦労に挫けない一家そのもので、映画の題にぴったりです。
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ミッション・ホリプロ

2021-04-04 | 日本映画
 「太陽は動かない」
 産業スパイ組織AN通信のエージェントである鷹野と田岡は、ブルガリアで死亡した仲間が追っていた香港の裏組織の動向を探る任務に就く。彼らの前に、フリーエジェントのデヴィッド・キムや、謎の女AYAKOが現れ、ある機密をめぐって諜報戦が激化するが…
 人気作家、吉田修一の小説の映画化。うう~ん…海外ロケでのダイナミックで奇想天外なアクションシーンなど、なかなか頑張ってるとは思ったのですが、何だろう?すごく残念な映画でもありました。やっぱスパイアクション映画って、日本には似合わないというか、すごい不自然で無理してる感じが否めなかった。真面目にやればやるほど滑稽で失笑、これはコメディ映画なのかな?と首を傾げてしまうことも。とにかく失笑苦笑シーンてんこもりで、ツッコミどろこも満載。あえて狙ってたのかな?と思うほどに。

 私、007やM:I、ワイスピとかが大好きなんです。なので、この映画がどうしてもそれらのショボい劣化版としか思えなくて。どっかで見たことがあるような、オリジナルのパロディみたいなシーンなど、ほとんどコントみたいだった。ノリはド派手で壮大なんだけど、国家の存亡に関わるとか国民の命が危機にさらされてるとかスケールの大きい話ではなく、単なる企業の利益争いの手先になってるスパイってのが、何か小さいな~と苦笑。スパイ描写もステレオタイプすぎ。日本ならではの独自で斬新な描き方が望ましかった。

 スパイ映画ってどうしても007やM:Iのような、冷徹で非情な世界というイメージがありますが、この和製スパイ映画にはそんなハードボイルドさは微塵もなく、センチメンタルでスウィートなんですよ。それが大きな敗因のひとつです。スパイ映画にお涙ちょうだいな感動エピソードとか要らん!悲しい過去のエピソードとか、淡い青春の初恋とか、熱い友情タッグとか、脱力感ハンパないです。何だか昔懐かしの大映ドラマなノリ。それもそのはず、主演の藤原竜也と竹内涼真の所属事務所はホリプロ。元ホリプロのアイドル、堀ちえみの「スチュワーデス物語」を彷彿とさせるスパイ映画になってました

 最大の敗因は、藤原竜也も竹内涼真も凄腕のスパイに見えないことかもしれません。藤原竜也はね~…個性的な俳優だとは思うのだけど、老けた子どもみたいな弛んだ童顔で、しかもガリガリヒョロヒョロで、まったく強そうに見えない。その髪、切れよ!と思ってしまったり。演技が熱すぎオーバーすぎ。まるでコントでした。香港の高層ビルの屋上から鳥のように飛んで逃げるシーンと、郵送されてきた箱の中からジャジャーンと飛び出してくるシーン、かなり笑えました。そういうのが、映画をユルく軽くしてしまったと思う。

 竹内涼真はね~…最近ワイルド系にイメチェンし、肉体改造してマッチョ化。ファンサービスのシャワーシーンでは、お尻も披露。デカくてムチムチした肉厚なケツは、私好みでなかなか眼福でした。イケメンだけどヘボいアホ顔なので、どんなにハードなアクションをしてもタイトでシャープな感じがせず、何だか締まりがないというか。竜也同様、頭脳明晰で屈強なスパイに見えません。それと。24時間以内に組織にコンタクトしないと、胸に埋め込まれた爆弾が起爆するという設定なのですが、まるでウルトラマンのカラータイマーみたいにピコンピコンと音出して点滅するのが笑えた。

 藤原竜也の少年時代を演じてた日向亘(彼もホリプロ)が、凛々しくフレッシュでした。デヴィッド・キム役はピョン・ヨハン、謎の女AYAKO役はハン・ヒョジュ(最近よく遭遇するわ~)、韓流スターも登場。二人ともイケメン、美人なんだけど、スパイにしては可愛すぎ優しすぎというか、やっぱユルいんですよね~。二人とも頑張って日本語の台詞もこなしてましたが、わざわざ日本語を使ってくれてデヴィッドもAYAKOも随分親切な人たちだな~と苦笑。ハン・ヒョジュのファッション七変化は目に楽しいのですが、着物姿とか意味不明で笑えた。AYAKO役は、10年前ぐらいのハ・ジウォンがピッタリなんだけどな~。

 明らかにCGなシーンが多かったのも、チープ感を強くしてました。敵役、悪役がショボい小物すぎ。拷問が手ぬるい。韓国映画のヤクザのほうがよっぽど残虐です。頑丈なはずの縛めが案外簡単にはずれたり、走行中の列車や航海中の船にいつの間にか乗り込んでたりとか(どーやって?!そのプロセス、省略しすぎ!)。鷹野の上司(佐藤浩市)が、鷹野のことを行方不明になった自分の息子ではないかと思ってる企業の取締役(鶴見辰吾)に、鷹野の悲惨な過去についてペラペラ喋ったり、スパイにあるまじきオープンさ親切さで嗤えた。

 とまあ、細部が雑なのがトホホかつ笑えます。内容も演出も出演者も、大人が楽しむハードでクールなスパイ映画ではなく、スパイ映画の形を借りた女性受け狙いのスウィーツ映画になってしまってたのが残念です。原作を読んだ時、鷹野や田岡を日本人俳優でイメージできなかった。当時の脳内キャストは、鷹野=イ・ジョンジェ、田岡=チョン・ジョンミョンでした。10年前ならドンピシャな組み合わせだと思う!今なら鷹野=パク・ソジュン、田岡=ナム・ジュヒョクがチョアチョア~(^^♪韓国でも映画化して!
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君が男でも女でも愛してる

2021-04-01 | 中国・台湾・香港映画
 久々の更新!皆様ご機嫌いかがでしょうか?
 思いがけないことが起きて、身も心も慌ただしくしておりました。というのも…私事なのですが、このたび縁あって結婚することになりました。恥ずかしながら、相手は15歳も年下です。いろんな不安は否めませんが、彼を信じて幸せになりたいと存じます。
 何てね(^^♪ぜんぶ嘘です今日はエイプリルフールですね!しょーもなさすぎる嘘ですんません結婚は嘘ですが、ある思いがけないことは本当に起きて、バタバタとしておりました。何が起きたのかは、おいおいお話ししたいと思いまする。
 今日4月1日は、レスリー・チャンの命日でもありますね。レスリーの死のニュースは、たちの悪い嘘かと思いました。あの日の衝撃と悲しみは、今でも鮮明に覚えてます。レスリーを偲んで、特に好きな彼の作品を回顧していきたいと思います…

 永遠的張國榮 ①
 「君さえいれば 金枝玉葉」
 人気歌手ローズに憧れるウィンは、彼女に近づきたい一心で男になりすまし男性歌手オーディションに応募、何と合格してしまう。ローズの恋人で音楽プロデューサーのサムは、天真爛漫なウィンに惹かれる自分に戸惑い悩むが…
 これまで観た香港映画、そしてラブコメ映画の中ではMY 最高傑作!これほどハッピーな楽しさと胸キュンにあふれた映画、他に私は知りません。気が滅入った時に観たくなる作品。コロナ禍で気分が落ち込んでる人に、ぜひ観てほしいです。それにしても。この映画、公開からもう27年!も経ったんですね~。でも、いま観ても色褪せない、それでいてノスタルジーにもあふれた、往年の香港映画ファンにとっては宝物のような映画。久々に観ましたが、やっぱ名作!

 女の子が男になりすます設定は韓流ドラマでおなじみですが、この香港映画こそその元祖、そしてベストですよ。韓流は亜流かパクリ。そもそも韓流の男装ヒロインは、これのどこが男なの?!男でまかり通るなんてありえん!な可愛すぎる女の子ばかり。男受けを狙ってるあざとさも鼻につく。その点この映画のウィンは、見た目もキャラも男に変身する前から女子女子しておらず、かなり男に近い。まさに香港人なガヤ娘っぷりが笑えます。演じてるアニタ・ユン、一世一代の名演!まさにウィン役を演じるために生まれてきたかのような女優。背が高くてペチャパイ、声が低い、短髪が似合う、という身体的特徴も奇跡的。もちろん顔は超可愛いので顔だけだと男には見えないのですが、BL漫画に出てくる可愛い男の子みたいなのが腐には好感。アニタ・ユンこそ、後にも先にもmy best of 男装ヒロインです。アニタ・ユン、現在はどんな姿になってるのか、気になるけど怖くて調べられない。彼女には私の中ではずっとウィンのままでいてほしいから。

 香港コメディ独特のあのガヤガヤしさが、楽しく懐かしい。みんなドタバタと大騒ぎ、ベタすぎる泥臭い笑いが愛おしい。香港人ってみんないつもあんなにオーバーリアクションなの?広東語だと、何でもコミカルに聞こえる。下ネタも多いのですが、下品にならず微笑ましいレベル。ウィンと幼馴染のユーロウとのやりとりが、いかにもコテコテな香港で好き。ユーロウのウィンへの男に化けるための特訓が笑えます。この映画は脚本もすぐれてるんですよね~。蛍光ペンやゴキブリなど、小道具の使い方が秀逸!
 この映画が忘れ難いのは、やはり故レスリー・チャンの存在ゆえでしょう。様々な映画で魅力を振りまいたレスリーですが、このコメディではとりわけ彼の個性と才能が活かされてる、いや、炸裂してます。とにかくレスリー、スマート&スウィート。ベタなお笑いシーンも可愛い過ぎる。特に好きなのは、暗いエレベーターに閉じ込められてギャーギャー騒ぐシーン。そして、ピアノを弾きながら歌うシーンの彼は神々しいカッコよさ。本当に素晴らしい俳優、そして歌手だったレスリー。

 性を超えた魅力を、レスリーが遺憾なく発揮すればするほど悲しい。中性的なレスリーですが、決してキャマキャマしくはなく、むしろ男っぽい演技。やたらとパンイチ姿になったり、ふんがー!と女にがっついたり。でも、男にはない柔らかさ、女にはない優しさが匂いたってます。そしてガラス細工の繊細さが切なくも痛ましい。男に恋してオロオロ悩むレスリーが愉快なのですが、実際にもゲイの噂があったレスリーがこんな役を、と当時は驚かされたものです。前作の「さらば、わが愛 覇王別姫」の大成功で、何か吹っ切れたものがあったのでしょうか。覇王別姫、金枝玉葉、そして「ブエノスアイレス」と、同性愛を描いた秀作を連発したこの頃のレスリーは、まさにカミングアウト的な絶頂期にあったように思われます。

 苦悩と葛藤を乗り越えたサムがウィンに言う『君が男でも女でも愛してる』は、私にとって映画史上最も感動的な台詞。ウィンが本当に男だったら、もっと感動的だったんだけど。当時は悲劇かキワモノで描かれることが多かったLGBTに、優しさと希望の光を射した佳作、そして不世出の明星レスリー・チャンの魅力は永遠に語り継がれることでしょう。

 可憐な花のようだったレスリーが散って、もう18年。彼がもしあんなにも美しくなければ、ひょっとしたら自ら死を選ぶことはなかったのでは、と今でも思ってしまいます。老いて美しさを失う苦しみと絶望は、美しい者にしか解らないのでしょう。悲しみは尽きないけど、みっともない若作りに必死になって嗤われる老人と化したレスリーを見ずにすんだことだけは、不幸中の幸いと言えるのではないでしょうか。
 ワガママだけどめっちゃ善い女なローズも、好感度の高いキャラ。演じてたカリーナ・ラウもいい女。旦那のトニー・レオンともども、すっかり日本では見なくなりましたね。おかまプロデューサー役は、香港映画の顔的存在だった大御所エリック・ツァン。やくざの親分役がオハコだけど、気風のいいおっさんオカマも軽妙に好演。ウォン・カーウァイ監督作品など、この頃は大人気だった香港映画。またかつての輝きを取り戻してほしいものです。

 この映画を日本でリメイクするなら、サム役はヒゲダンの藤原聡がいいかも(^^♪レスリーみたいな美男子ではないけど、きっと似合うのではなかろうか。ウィン役は、若い頃の榮倉奈々が風貌的には合ってると思うけど、今の女優ではとんと思いつきません。

 
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ひと目逢ったその日から

2021-03-12 | フランス、ベルギー映画
 「女ともだち」
 1952年のフランス、リヨン。子どもたちの学芸会で出会ったレナとマドレーヌは意気投合、親友同士となって家族ぐるみの付き合いをするように。二人は一緒にブティックを経営したいという夢を抱くようになるが、親密すぎる彼女たちにレナの夫は不満を募らせて…
 以前から観たいと思ってたフランス映画、やっと観ることができました!\(^o^)/アカデミー賞の外国語映画賞にもノミネートされた1983年の佳作。W主演のイザベル・ユペールとミュウミュウが、わ、若い!きれい!二人とも30代前半、最も美しかった、そして演技に円熟味が増した時代の彼女たちではないでしょうか。「バルスーズ」では可愛くて大胆不敵なギャルだった二人が、年月を経て素敵な大人の女性に。大人の女性だけど、可愛さと大胆さは失っていないところが驚異です。大人カワイイといっても、日本の30代女優のようないい年してブリっこ、人工的な可愛さ若さとは大違い。ナチュラルでありながら、生々しい女でもある。この映画のユペール&ミュウミュウが、今の綾瀬はるかとか新垣結衣とかとより年下とか、ほんと信じられないし、なぜか何か絶望的な気分になってしまいます。

 女性の自由や権利、生きづらさや歓びを描いた映画は、えてしてフェミニズムが強すぎたり深刻すぎたりしがちですが、この映画は明るく軽妙、それでいて心に刺さる痛みもあって。それはやはり、ユペール&ミュウミュウのフランス女優ならではの個性と魅力によるところでしょう。とにかく二人とも、しなやかで軽やか。ハリウッドや日本ではありえない、同じことやればとんでもない悪妻たち、身勝手でふしだらな悪女になってしまうかもしれないヒロインたちなのですが、ユペール&ミュウミュウだと黙って耐えるとかバカらしい、自分らしく生きないなんて間違っていると思わせてくれる、強く自由なヒロインになるのです。

 レナ役のイザベル・ユペールは、この映画でもクールでドライ、そしてやっぱシレっとしてます。どんな状況にあってもジタバタしたりウジウジ悩んだりは絶対しない、けれども必死になってる力みも全然ない、冷ややかに泰然自若なところが好き。愛してない男との結婚にも、夫の金をくすねる時も、それを夫に打ち明ける時も、嘘をつく時も、常に何喰わぬ顔してるところが笑えます。夫に対してかなり非情で薄情な仕打ちをするのですが、夫に対して悪意とか害意とかは全然なく、自分がやりたいようにやる、ただそれだけ、それの何が悪いの?という軽やかな図太さ、したたかさがチャーミング。「主婦マリーがしたこと」のヒロインとかなりカブります。楽しそうな大笑い顔や元気いっぱいに動き回る姿も多く、出演作の中では最も明るいユペりんかもしれません。
 マドレーヌ役のミュウミュウは「読書する女」など、可愛い熟女ってイメージですが、この作品では美人!颯爽と闊達だけど繊細で、どこか脆さも感じさせる演技、雰囲気が、いつもの彼女とちょっと違った感じで新鮮でした。ユペールへのちょっとした視線やスキンシップに、ひょっとして友だち以上の感情を?を思わせる妖しさがあって、それがまたすごくさりげない。ああいう自然な感じも、さすがフランス女優。

 二人ともかなり過酷な戦中生活を送ったのに、苦労も悲しみも引きずっておらず、幸せな今を謳歌し未来を夢見る前向きさに好感。二人のマダムファッションも素敵。小柄で華奢なユペールは少女っぽい可憐さ、ちょっと宝塚の元男役っぽいミュウミュウはマニッシュな感じ。服の趣味同様、性格も生い立ちも違うけど、初めて出会った瞬間から運命的なもの、男とか女とかいった範を超えた愛情で結ばれた関係が、優しいときめきと高揚感で描かれていました。結婚とかセックスとか必要ない、魂が優しく触れ合うような愛情が尊かったです。妻であることよりも、母であることよりも、女性にとって大切なことがある。自由をあきらめて埋没することを拒む女たちに共感。同時に、彼女たちに振り回される夫たちには同情。ヤボ亭主だったりダメ亭主だったり、欠点だらけとはいえ根は超善人な夫たち、特にレナの夫は妻のことをすごく愛していて、彼女のために一生懸命働いて尽くしていただけに、裏切られてブチギレし大暴れ、ブティックをメチャクチャに破壊する姿が可哀想すぎて胸が痛んだ。愛って努力では報われないものなのですね。

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悪魔退治の聖拳

2021-03-07 | 韓国映画
 お松の韓流いい男映画祭⑦
 「ディヴァイン・フューリー 使者」
 幼い頃に父親を事故で亡くし信仰心を失った格闘家のヨンフは、自身の右手にあらわれた奇怪な現象に悩まされる。エクソシストであるアン神父は、悪魔を祓う力が神から与えられたとヨンフに告げる。ヨンフはアン神父とともに、邪悪な悪魔崇拝集団との闘いに身を投じることになるが…

 パク・ソジュン主演のオカルト映画。オカルトといっても、名作「エクソシスト」や「オーメン」のような目を背けてしまうほどの恐怖や、おどろおどろしい禍々しさなどは全然なく、ジャンプとかで連載してる少年漫画の実写化みたいなアクションファンタジーな映画でした。ぶっちゃけ、オカルトファンが観たらトホホな内容。かくゆう私もがっかりしました。全然怖くないのが致命的です。悪霊に憑かれた者たちが、ブリッジ歩行や天井・壁歩きなど、ほとんどエクソシストのパロディで失笑。主人公が不思議な力が宿った手で戦うのも、何だか地獄先生ぬ~べ~みたいだった。悪魔崇拝集団がこれまたわけのわからない連中で、いったいどういう組織なのか、何がしたかったのか、ヨンフがなぜ悪魔を祓う能力を授けられたのか説明不足すぎなのも、薄っぺらい映画にしてしまった要因かもしれません。

 韓国はキリスト教の国なので、悪魔がテーマのオカルトが製作しやすく、かつ馴染み深いのでしょうか。「プリースト」もでしたが、エクソシストのパクリみたいになっちゃうのが惜しい。キリスト教のもつヨーロッパの洗練が、韓国に合ってないというか。韓国らしいエグさや不気味さを活かしたオカルトは、どちらかといえば非キリスト教の土着系新興宗教を扱った系統のほうに多いように思えます。でも、この映画を観た人のほとんどは、そんなのどーでもいいのです。みんなオカルトではなくパク・ソジュン目当てなんだから!

 ヨンフ役のソジュンくん、カッコよかったです。彼をカッコよく見せるためだけの映画なので、彼のファンなら満足できます。格闘家役ということで、人気を博したドラマ「梨泰院クラス」では封印していた肉体美も惜しみなく披露してます。やっぱ韓流男優は脱いでナンボですから。鍛えぬいた、でも不自然な人工的バキバキシックスパックではなく、肉厚・堅肉な筋肉が素晴らしい。キレッキレの格闘にも瞠目。韓流男優ってほんとに強そうですよね~。カラダがすごいというのもあるけど、アクションの迫力と俊敏さも並大抵ではない。あんなキック、日本の俳優には無理ですもんね。

 服を着るとスラっとスマートでスタイル抜群なモデル風に。手足が長くて顔が小さい!ほんと恵まれた肉体の持ち主なソジュンくん。まさに非一般人な風貌。ラブコメが多い彼ですが、顔はイケメンというより個性的というか、酷薄で冷酷そうな面立ちなので、悪役とか似合いそう。彼の無表情って結構怖いもん。素晴らしい肉体と個性を備えた俳優なのに、アイドルタレントにやらせてもいいような役ばかりなのが惜しい。ヨンフの死んだ父ちゃんを追慕するファザコンぶりとか、父ちゃんが夢枕に出てくるとか、梨泰院のセロイと同じ。似たような役、無難な役ばかりではなく、若いうちに役者生命を賭けるような役や演技に挑戦してほしいものです。

 アン神父役は名優アン・ソンギ。アン先生、久々に見ましたが、すっかりおじいさんになりましたね~。もう悪魔と戦う力がなくなってきてる老人の悲哀がよく出てました。孤独な者同士、父子のような情愛をはぐくむヨンフとアン神父なのですが、個人的にはもっと年齢が近い俳優同士の兄弟的ブロマンス、な設定だったらな~と腐願望。

 悪魔崇拝集団を率いる謎の青年社長役のウ・ドファンは、冷酷そうで薄気味悪い悪人顔で役に合ってました。アン神父の助手役の俳優、どっかで見たことあるな~と思ったら、ソジュンくんが友情出演した「パラサイト 半地下の家族」のチェ・ウシクだった。今度は彼が友情出演?ラストに悪魔が登場するのですが、手下をやっつけただけで終了、これから真の戦いの始まり、to be continuedな終わり方は、かなり消化不良な余韻。続編なんかないと思うし、あってもそんなに観たくないし、すっきり一件落着な結末にしてほしかったかも。

 
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