まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

太陽がしょっぱい

2024-05-20 | 欧米のドラマ
 Netflixのドラマ「リプリー」を観ました。全8話。
 ニューヨークで詐欺をしながら孤独に生きていたトム・リプリーは、金持ちのグリーンリーフ氏から放蕩息子のディッキーを家に連れ戻す仕事を引き受ける。イタリアのアトラーニで暮らすディッキーに近づき親しくなるリプリーだったが、ディッキーの恋人マージはリプリーに警戒心を抱き…
 アラン・ドロン主演の名作「太陽がいっぱい」や、マット・デーモンの「リプリー」など、これまで何度も映像化されたパトリシア・ハイスミスの小説の最新テレビドラマ版。3つの中では最も原作に近いリプリーではないかと思いました。アラン・ドロンのトム・リプリーは、ダークで怪しいところは合ってたけど、いかんせん美男子すぎる。退廃的で刹那的な悪い男っぷりといい、わかりやすく魅力的すぎるところが、本来の複雑で異様な人物であるはずのリプリーとはちょっと違う感じ。マットのリプリーは、ほとんどギャグ。あの悪名高い伝説の黄緑色海パン姿など、ファン以外にはキモいだけのミスキャストでした。ドロン版もマット版も、同性愛的なものは何となく匂わせていたけど、あくまでオブラートに薄く浅くでした。今回のリプリーははっきり同性愛者で、それが腐女子をときめかせるような甘く切ないものではなく、隠れゲイの孤独と屈折、底意地の悪さがイタくてキツいです。

 女っけなし、女にいっさい興味なし、どころか嫌悪さえしてる感じのリプリー。マージに対して表向きは礼儀正しく優しいけど、言動や表情には嫉妬や憎悪、軽蔑が小さなトゲのようにひそんでいる…そんな女性以上に女性的な裏表ある陰湿さが怖くて面白いリプリーでした。BL映画やドラマの、美しく優しく勇気ある男たちなんて、やはりファンタジー。生まれ育ちにも社会的地位にも容貌にも特に恵まれず、ただもう攻撃や排斥をされぬよう息を潜めて生きているうちに、自分を守るための暗く狡猾な世知や韜晦に長けてくる…そんなゲイのリアルさもあるリプリーでした。

 厳しく冷たい世間を生き抜くためには、多少は卑屈にも悪賢くなることも必要だとは思うけど。リプリーはそんな生易しいもんじゃなかった。決して関わってはいけない、まるで静かなる毒虫みたいな男でした。これといって特徴のない地味で平凡な風貌、ちょっと胡散臭いけど大した害にはならないだろうと、取るに足らない存在と見なし軽んじて油断すると、すうっと生活や心の隙間から入り込まれ、気づかぬうちに浸食され蝕まれてしまう。悪意や邪気があるわけではなく、そうせずにはいられない寄生虫の本能のような罪の重ね方が、不気味で悲しいリプリーでした。

 都合が悪くなると容赦なく躊躇なく殺人を犯し、隠ぺい工作や詐欺行為に奔走するリプリー、その体力気力が驚異的。なりすましがバレない、警察に捕まらないのも、現在だとありえない。まだ防犯カメラもインターネットもなかった時代だからこその犯行でした。警察も含め、出てくるイタリア人がみんな何だか倦怠的で、何事にも熱意がなくテキトーなところもリプリーにとっては幸運でした。
 リプリー役は、「異人たち」でも高く評価されたアンドリュー・スコット。

 彼ってひょっとしたら、稀代の名優なのかも…風貌も演技も、すべてにおいて地味~なのに、その地味さが派手なものを凌駕しているというか。いかにも演じてます!な感じがしないところがスゴいと思います。「異人たち」と見た目はほとんど同じ、静かな内省的な演技も同じなのですが、キムタクみたいに何やっても同じキムタク、とは全然違うんです。太ったり痩せたり筋肉つけたり肉体改造して見た目を変えることよりも、オーバーな熱演をすることよりも、アンドリュー・スコットの特異なことは何もしない、けど何げない表情や仕草で演じる人物の複雑さや陰影、狂気を表せる演技のほうが、はるかに難しく高等だと思います。男らしくもないけど女性っぽくもない、どこか中性的、ていうか性がない感じも彼の個性でしょうか。演技が巧くてもノンケの俳優には出せない妖しさを、時々なにげに放ってるのが強烈です。ディッキーの服を着て彼のマネをしてる時の様子とか、ラストの肖像画のモデルをしてる時の表情とポーズとか、かなりインパクトがありました。

 ディッキーにあまり魅力がなかったのが残念。ただのお人よしなボンボンで、見た目もフツー。無意識にゲイを翻弄する小悪魔な美青年にしてほしかった。マージはなかなか食えない女で、ラスト近くのリプリーへのいやがらせは、まさに女の性悪さで面白かったです。マージ役は、元名子役のダコタ・ファニング。すでに世間の酸いも甘いも知り尽くしたような、気怠いくたびれ感ある女優になってますね~。ディッキーの金持ちの友人フランキーは、男装した女?おなべさん?演じてたのは、イギリスの大物歌手スティングの娘だとか。女性が男の役を演じることに、何の意味があったんだろう。
 アトラーニからナポリ、ローマ、ヴェネツィア…全編モノクロで獲られたイタリアの風景が美しかったです。ディッキーが暮らす家、路地のカフェ、おなじみのゴンドラと運河、ホテル、美術館や教会etc.イタリアにも行ってみたい!
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

原爆の父オッピー

2024-05-12 | 北米映画22~
 「オッペンハイマー」
 第二次世界大戦の最中、カリフォルニア大学で教鞭をとっていた理論物理学者ロバート・オッペンハイマーは、ナチスドイツより先に原子爆弾を開発するための「マンハッタン計画」のリーダーに抜擢されるが…
 作品賞や監督賞、主演男優賞に助演男優賞など、今年のアカデミー賞の最多受賞作。日本人にとってはかなりの問題作なのですが、原爆を茶化したバーベンハイマー騒動とか、アメリカではそうでもなさそうです。多くの米国人の無知ゆえの悪意なき無神経さや、日米の原爆に対する思いの温度差には、やはり引っかかるものがあります。日本人、そして広島県民としては、観なきゃいけないと思いつつ気が重くて、映画館へなかなか足が向かずにいたのですが、先日ようやく。期待よりも不安と懸念のほうが大きかったけど、クリストファー・ノーラン監督の独特で斬新な演出と映像は相変わらず目を驚かせるもので、3時間の上映時間もそんなに苦痛ではありませんでした。ダレない緊張感とスピード感、いったい何?どういうこと?な謎めく意味深なシーンの数々は、やはり非凡な手腕だなと感嘆せざるを得ませんした。でも正直、ノーラン監督の作風って苦手なんですよね~。その奇抜さ、才気は、意識高めの映画ファンにとっては高級なキャビアとかフォアグラみたいなテイストなんでしょうけど、舌が肥えてない意識低め映画ファンである私にとっては、美味しいのか美味しくないのか判らないようなヘンな味。明太子やキムチみたいな味の監督のほうが好きです。

 不可解かつ激烈な映像、そして時間軸が複雑な構成は、いつものノーラン節。それよりもやはり、原爆誕生、原爆使用というテーマと内容が日本人にとっては是か非か、賛か否かで、かなりモヤります。原爆の悲惨さを刷り込まれて育った広島県民の私は、オッペンハイマーたちがグイグイ原爆開発と実験に突き進んでいく過程に、すごく動揺してしまいました。中盤の砂漠での実験シーン、見ていて気分が悪くなりました。

 広島と長崎を地獄のような焦土にし、長い苦しみと痛みを強いることになる原爆の威力にもですが、実験の成功を素晴らしい偉業を成したように欣喜雀躍して祝う関係者たちの姿に戦慄。爆発までの緊迫のカウントダウンの演出とか、スタイリッシュに美しく描いてる爆発シーンとか、原爆をエンターテイメントにしてることに違和感を否めず、悲しくなってしまいました。

 原爆投下に関してはいろんな意見、考察があるようですが、やはり何か他に方法はなかったの?と思わずにいられませんでした。京都は歴史ある古都だからダメ、どうでもいいような田舎に落とせ、みたいな作戦会議での意見もゾっとしました。ナチスドイツと同じぐらい、アメリカの軍人や科学者が邪悪に見えました。戦争では侵略や虐殺など、日本もドイツも非道いことをしたけど、原爆こそがやはり最大の罪だとあらためて思いました。いま現在も未来を脅かしている核の恐怖の源となっている、という点において…

 人気スターや実力派がそろう豪華キャストも、ノーラン監督作の魅力です。オッペンハイマー役のキリアン・マーフィーは、見事アカデミー賞主演男優賞を獲得アイルランドの知る人ぞ知る若手個性派だったキリアンが、今やオスカー俳優だなんて感慨深いわ。ノーラン監督作のお気にいりで常連だったキリアンが、満を持しての主演。いかにも天才です!なエキセントリック演技ではなく、表面的にはフツーの人、どこにでもいるダメ男でさえあるんだけど、目まぐるしい速度で回転している頭脳と、マグマがドロドロと燃え滾っているような精神ゆえの異様さ、しんどさを静かに抑えた感じで演じてたのが、可愛くも怖かったキリアンでした。

 原爆チームを指揮する軍人役で、大好きなマット・デーモンも出演してます。マット、すっかり貫禄も恰幅もあるおじさんになりましたね~。すごい頼もしい感じが素敵。おじさんになったけどおっさん臭はあまりなく、清潔で爽やかな感じがするところが好きです。オッペンハイマーと対立する原子力委員会の会長役、ロバート・ダウニー・ジュニアもオスカーを受賞。でも、そこまで印象に残る演技でもなかったような?かつて候補になった「トロピック・サンダー」で受賞してほしかったかも。オッペンの愛人役のフローレンス・ピューが、相変わらずの無駄脱ぎっぷり。とても20代とは思えぬ完熟ヌードです。原子力委員会長の秘書役、「フェアプレー」でモラハラ彼氏役を熱演してたオールデン・エアエンライクが端正な男前でした。ラミ・マレックも顔を見せてましたが、何の役?登場人物が多すぎて、誰が誰で何の役なのか???になることもノーラン監督作の常連組からは、ケネス・ブラナーやゲイリー・オールドマン(意外な役!)らベテランもチョコっと友情出演してました。
 余談ですが…先日、久々に平和公園に行きました。ものすごい数の外国人観光客に、ちょっとビビってしまいました。楽しそうに笑顔で原爆ドームや平和記念碑の前で写真を撮ったりはしゃいだりしてる彼らに、すごい違和感も覚えてしまいました。アウシュヴィッツ収容所跡やワールドトレードセンター跡ではこんな楽しそうにはしないんだろうな、と悲しくなりました。
コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

君の運命のひとは僕、じゃない?

2024-05-09 | 北米映画22~
 「恋するプリテンダー」
 恋人になる寸前で気まずい別れ方をしてしまうビーとベン。ビーの妹とベンの友人が結婚することになり、二人は結婚式に出席するためオーストラリアへ。顔を合わせばケンカになる二人だったが、ある事情により恋人のふりをすることに…
 ハリウッドでは今でもこういうライトなラブコメ映画、定期的に作られているようですが。日本では全然ヒットしないからか、ほんとんどが劇場公開されず配信に回されてるみたいですね。私も女子受けを狙ったスウィート&ロマンティック系は苦手。でもポリコレ・コンプラ無視のブラック系と、ハイテンションなノーテンキおバカ系のアメリカンコメディは大好き。「殺したい女」とか「トロピック・サンダー」「ふたりにクギヅケ」「永遠に美しく」や「シリアル・ママ」など、ほんと大好きで何度も観たくなります。

 閑話休題。たまには頭カラッポにして他愛もないラブコメ観るのもいいかな、と思って選んだこの映画。期待以上の頭カラッポmovieでした見た目も性格もいい男女が、けんかしながらフォーリンラブ、な設定はラブコメの定番中の定番。すべてにおいて目新しさのない陳腐な、でもその予定調和がラブコメファンには心地よい映画かもしれません。実際にはありえない、平凡な庶民には無縁なハッピーでリッチな世界も、世知辛い現実からいっとき逃避できる魅力。でも、ベンもビーもその家族友人も、あまりにも上級国民すぎ。いったい何者なのこの人たち?と、呆れたり鼻についたり。

 結婚式のためにオーストラリアに集結、美しいビーチと別荘で夏を満喫、ゴージャスな船上パーティー、とっかえひっかえの衣装、そして華やかなウェディング。羨ましいというより、金の使い方もったいないな!としか思えなかった私は、骨の髄まで貧乏人海外で挙式、それに出席とか、私なんかからしたら理解の埒外。海外どころか、県外でもおいそれとは出席できませんよ。ビーなんかいい年して学生(それも親に黙って退学してる)、無職なのにオーストラリアに何の問題もなく行けて、しかもおしゃれな服、ゴージャスなドレスもいっぱいもってるとか、いい年してお金持ちの親のスネかじり?いい年した娘を甘やかす両親にもイラっとした。

 ビーとベンの恋を応援したり煽ったりする周囲の人々も、不必要に多くてしかも魅力がなく、単にウザいとしか思えませんでした。お互いの当て馬キャラも、いてもいなくてもいいような存在でしたし。レスキュー隊を2回も出動させるとか、ありえないような迷惑行為も笑えなかった。脚本がチープすぎる。台詞にも展開にも、小粋とか洗練とかいった上質の喜劇の要素は微塵もなかったけど、おバカで下品なシーン、ちょっとエッチな下ネタには不覚にも笑ってしまいました。気どってないところには好感。結婚するカップルが女性という同性婚、それをごく当たり前のこととして扱ってる、というのがイマドキでした。

 ビー役のシドニー・スウィーニーは抜群のスタイルのよさと豊満さ、ベン役のグレン・パウエルは長身で筋骨隆々、アメリカでは理想的っぽいセクシー肉体美の男女なのですが、日本で人気を得るのは難しそう。二人の体を張ったおバカ演技は結構インパクトあり。特にグレンは、あっぱれな脱ぎっぷり。大ヒット作「トップガン マーヴェリック」で注目された若手俳優ですが、トム・クルーズの妖怪おじさんっぷりが強烈すぎて、若い男子なんか全然記憶になし。この主演作ではやたらと上半身裸になって筋肉誇示。ハイキング中クモがパンツの中に入ってしまい、ギャーギャー大騒ぎしながら全裸になって半べそかいてケツの穴をビーに点検してもらうシーン、あそこまでやる俳優は最近なかなかいないので、その役者魂には拍手。若い頃のクリス・プラットとかポール・ウォーカーにやってほしかった演技です。オーストラリアの明るく美しい自然や有名な観光地なども、これでもか!とばかりに背景に使用されてます。コアラが可愛かったけど、ハイキングしてたらあんな風にフツーに遭遇したりするんですね🐨
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

愛は涅槃で待つ

2024-05-05 | イギリス、アイルランド映画
 「異人たち」
 ロンドンで暮らす脚本家のアダムは、かつて両親と住んでいた郊外の家に立ち寄る。そこで幼い頃に事故死した両親と再会したアダムは、両親に会うため旧家に通い始める。そんな中、同じマンションの住人ハリーと恋に落ちるアダムだったが…
 今年上半期の腐マスト映画、やっと&ついに観に行くことができました!結論から申し上げますと…せつなかった!尊かった!期待し過ぎると「落下の解剖学」みたいなことに…という心配は、杞憂に終わりました。期待通り、期待以上の佳作でした。古今東西いろんなBL映画を観てきたけど、正直そんなに胸に刺さる、胸に残るような作品には出会ったことないんですよね~。ほとんどのBL映画、BLドラマは、現実味のない絵空事なファンタジーだけど、カッコいいイケメンや男前を愛でることができればそれでいいかな、みたいな構えで観てるので、失望もしない代わりに感動とか衝撃もないのですが、ごくまれに奇跡のようなBL作品に出会うこともある。この作品がそれでした。深く優しく悲痛…という理想的なBLが描かれていました。

 この作品はBL映画というより、ゲイ映画と言ったほうがしっくりくるかも。フィクションの世界では、男性同士の恋愛もすっかり市民権を得ていて、最近のBLものは男女とそう変わらないような内容のものが多く、同性愛ゆえの苦悩や苦闘、悲しみなど存在しないハッピー&スウィートさ。それこそが魅力とも言えるのだけど、そんなのを観続けているうちに違和感というか疑問というか、ノーテンキで軽薄なBLってゲイを冒涜してるように思えてきて。おっさんずラブとか、私も最初は笑いながら楽しんでたのだけど、だんだん不愉快に。結局はゲイをイロモノ扱い、バカにしてるように思えて、パート2は途中リタイア。観たいのはもっと真摯な、でも気が滅入るような、目を背けたくなるようなリアルなものではなく、現実の中でささやかに懸命に息づいている姿が美しい悲しい、と心動かされるBL…まさにこの映画がそれでした。

 死んだ両親と再会という設定はファンタジーですが、アダムとハリーのBLは現実的。ゲイってこんな風に惹かれ合って想いを伝え合って結ばれて、そして傷ついて悩むんだな~と、男女の恋愛ものとの違いをさりげなくも明確に描いているところが、さすがオープンゲイのアンドリュー・ヘイ監督ならでは。都会を舞台にしているのに静かで寂しい雰囲気なのも、ゲイの恋愛や人生をよく表していると思います。「さざなみ」や「ウィークエンド」など、ヘイ監督の感性がすごく好き。現実的なのに生々しくないところとか。ベタベタしい湿っぽさがなく、どこか乾いた悲哀の心地よさとか。ファンタジー部分も奇をてらった演出やシーンなど全然なく、アダムが幽霊?と会ってることも忘れそうになるほど。アダムの部屋の窓から臨むロンドンの夜と朝の風景の寂寥感ある美しさ、アダムとハリーがトンじゃうクラブのシーンのスタイリッシュさなど、今回も私の胸を衝く映像と演出でした。

 喪失の痛みと悲しみがテーマなのですが。私はそんなに愛されたことも愛したこともないのでアダムと両親のエピソードには、そんなに感動はしませんでした。もし両親が死んでもそんなに会いたくないかももし会ったら、お互い生きてる時によくも~!と不満不平ぶつけ合ってケンカになるだけだと思うし。この映画と違い、私の場合はコメディがホラーになっちゃいそうです。

 アダムとハリーの愛は、ほんとジワる!お互いを思いやる優しさ、分かち合う安らぎには、見てるほうも幸せな気分に。二人のゲイゆえの孤独、家族や社会との断絶と疎外感、ゲイの生きづらさも、最近の粗製乱造BLにはないリアルでした。このまま末永く…と願わずにいられない二人が、ああ…衝撃的で悲しい真実に、観る者は打ちのめされてしまうのですが。気づかないフリはできない劇中の不幸フラグ、悲しい伏線の回収に胸がしめつけられるラストでしたが、ある意味ハッピーエンドな余韻も。エンドクレジットへつながる演出が、これまた切ないまでにロマンティックで、冷血な私のハートを優しい五月雨のように潤したのでした。

 BLカップルを演じた二人の俳優が、とにかく素晴らしい!アダム役のアンドリュー・スコットは、ちょっと前にnetflixのドラマ「リプリー」を観たばかりなので、彼の地味にスゴい役者っぷりにあらためて感嘆。いろんな映画やドラマでお見掛けしますが、今まででいちばんいい男に見えたかも。これ見よがしじゃなく、かつ引き込んでくるという難易度の高い演技。特に別におかしなことはしないのに、ひょっとして心が…?と思わせる静かな不安定さ、不穏さが秀逸。カミングアウト俳優としても有名な彼、男と愛し合う姿がこれほどナチュラルな俳優もなかなかいません。もう青年じゃない大人の落ち着き、けどおっさんでもない繊細さも魅力的でした。それにしても。アダム、霊感強すぎでしょ
 ハリー役のポール・メスカルが、か、可愛い!

 いや~ポール、ほんといい役者ですね~。あんなラヴリーでピュアな笑顔、演技でできるもんなんですね~。いきなりポールみたいな男が訪ねてきて、あの笑顔で一緒に飲もう(=ヤろう)と誘ってきたら、私なら断る自信ないわ~。断ったアダムの用心深さと自制心、あのとき部屋に入れていたら…と思うと泣けてきます。年上の男に甘える可愛さ、支える頼もしさ、風貌もキャラも一途で忠実な大型犬みたい。こんな彼氏ほしい!なポールasハリーでした。

 言動は明るいけど、たまに見せる暗い淵をのぞいているような目とか、泣くのをこらえているような表情とか、ハリーが深い傷と闇を心に抱えていることがわかるポールの演技は、秀作「アフターサン」の彼を彷彿とさせました。脱ぎっぷりのよさも相変わらず。ムキムキバキバキではなく、がっちりむっちりなガタイが素敵。ラブシーンではお尻も当然のように見せてます。デカくてきれいなケツがイイネ!ポールの相手を労わるような愛撫や腰の動きがムズキュンでした。セックスシーンはBLでは大切。リアルだけどイヤらしくない、情熱と優しさにあふれるアダムとハリーのセックスシーンも、BL映画では理想的なものでした。ポールみたいな若い俳優が日本にいないのが残念、と今回も思ったけど。日本の若い俳優だってみんな優秀、ただポールが特別で稀有なだけ、と思い至りもしました。

 アダムの両親役のジェイミー・ベルとクレア・フォイも好演。登場人物は全編ほぼ4人だけ、というシンプルさも今思えば驚異的。山田太一先生の小説「異人たちとの夏」をイギリスで大胆にBLアレンジしての映画化、ということも話題に。邦画版もあるみたいですが、ぜんぜん観る気が起きない男女の話とかありえん~!なんて思ってしまって。ぜひBLバージョンで日本でリメイク希望!アダムは妻夫木聡、ハリーは池松壮亮でお願いします!

 アダム&ハリーforever…
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Blessed Boys

2024-04-30 | イタリア映画
 「異人たち」公開記念BL映画祭⑤
 「La Santa Piccola」
 ナポリの小さな町で暮らすリノとマリオは、幼い頃からの親友同士。リノの幼い妹アンナルーチェが奇跡を連続して起こし、信心深い町民たちから聖なる少女として崇められるようになる。リノは一変する生活に、マリオは自分がリノに恋をしていると気づき戸惑うが…
 イタリアのBL映画、なのですが。BLそのものががっつりメインじゃなかったのが物足りませんでした。リノとマリオの友情がBLへと形を変えていくプロセスをもっとじっくり描いてほしかったです。それにしても。男同士の仲が良すぎる友情って、立派なBLですよね。女とはヤルし結婚もするけど、一緒にいたい、楽しいことも悩みも分かち合いたいのは男の親友。そういう深く強い心の結びつき、精神的な同性愛の美しさと危うさも、腐をときめかせる魅力です。

 女そっちのけでイチャイチャじゃれ合ってる仲良しイケメン二人組、なんてすごく尊い!萌える!妄想をかきたてる!この映画のリノとマリオも、ほとんどカップル。いくら仲良しとはいえ、男同士であんなことする?なスキンシップばかりするんです。周囲も別に奇異な目で見てないし、イタリアではあんなのフツーなのかな。あっけらかんと堂々としてるよりも、やっぱ周囲も本人たちも、そして観客もドキドキハラハラさせたり不安にしたりするような、そろそろ禁区 by 明菜な領域に入るBL、つまり世間的に後ろ指さされる、やましいものとされている関係が、私はやっぱ好きです

 すべての男性は同性愛を秘めているけど、ほとんどの男性がそれに気づかず目覚めない、と言われていますが。幸か不幸か、突然リノに親友以上の想いを抱いていると気づいてしまったマリオ。なりゆきで熟女と3Pをすることになり、そこでリノの痴態を目の当たりにしたことがマリオのBLスイッチをオンしてしまったのが、可笑しくも切ない。熟女との3Pが、あたかもリノとマリオのセックスみたいなシーンになってたのが、なかなかエロくて刺激的な演出でした。マリオを誘ってるとしか思えぬリノの無防備さ、無邪気さが小悪魔でした。

 軽いBLものにありがちな安易で都合のいいハッピーエンドではなく、かなりホロ苦い結末になるのですが、絶望的でもなかったような余韻。次々と起きた奇跡のように、きっと二人にも…と希望を祈りたくなるラストでした。
 主役の俳優二人が、なかなかイケメンでした。リノ役のフランチェスコ・ペッレグリーノは、クールなやんちゃ男子って感じ。家族のために一生懸命なけなげさと、ハメをはずした時の下半身のだらしなさのギャップが可愛かったです。マリオ役ヴィンチェンツォ・アントヌッチは優しそうで、恋に悩んでオロオロするところが可愛かったです。アンナルーチェ役の女の子が美少女!美男子のリノとはまるで恋人同士のような仲睦まじさで、絵になる美しい兄妹でした。アンナルーチェが固まって動かなくなる、動かせなくなる神がかり?現象がホラーでした。ナポリの町の超庶民的な生活風景や町の様子も興味深かったです。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする