映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

ベロニカとの記憶(2015年)

2018-02-11 | 【へ】



 トニー(ジム・ブロードベント)は、定年後、趣味の延長で小さな中古カメラ店を営み、離婚した元妻や娘ともそこそこ良い関係を保って穏やかな日々を過ごしていた。

 そんなある日、遠い昔の初恋の女性ベロニカの母親セーラ(エミリー・モーティマー)から、「添付品をあなたに遺します」と書かれた遺言がトニーの下に届く。けれども、肝心の添付品がない、、、。トニーが弁護士に確認すると、その添付品はセーラの日記だと分かる。しかも、その日記を、娘のベロニカがトニーに渡すことを拒んでいるという。

 これをきっかけに、トニーは若かりし頃の自分と向き合うことに、、、。ベロニカに恋をしていた頃の自分の本当の姿とは、、、?

   
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 シャーロット・ランプリングが出演ということもあり、封切り時から見に行きたかったのだけれど、何かとバタバタしていてようやく見ることができました。彼女は、現在の老いたベロニカ役。……そんなに期待していたわけじゃないけど、思っていたのと(良くない意味で)違う感じの作品でした、、、。 


◆記憶の上書きって、そこまで都合良くできるものか??

 なぜ、セーラは、自分の娘ではなく、娘の大昔の恋人に自分の遺言を託したのか。この辺りの謎解きが本作のタテ糸となっているんだけど、謎解き自体はそれほど意外性はない、という感じ。……まあ、フツーに考えて、そのようなものを赤の他人に託すってことは、娘に知られたくないことが書かれているから、ってことでしょうな。そして、その通りの展開になるわけで。

 トニーとベロニカは、ベロニカの家にトニーが泊まりに行くほど親しくなってもなかなか一線を越えないまま、そのうち、トニーの友人であるエイドリアンが、「ベロニカと親しくなった」と告白の手紙をよこしてくる。恋人同士のつもりだったトニーとしては驚くが、「ゼンゼン問題ないよ!」などと書いた葉書を返し、手元にあったベロニカとの写真は全て、ベロニカとの思い出の場所である橋から川に投げ捨てて気持ちを整理した。

 ……というのが、トニーの“ベロニカとの記憶”なんだけど、事実は全く違うものだったことが後から分かる(その事実の内容は敢えて書きません)。

 どうして、トニーがそんな全く異なる記憶をしていたか。、、、それは、その出来事の直後に、エイドリアンが自死したから。エイドリアンが自死した理由はよく分からなかったが、結局、ベロニカともそれっきりとなっていたのだった。

 誰でも、自分に都合の悪いことは、勝手に脳内変換して記憶するということはしているはずだけれども、こんな重大な事をここまでキレイに記憶を書き換えているというのは、果たしていかがなものか。人一人亡くなっている出来事でショックによる健忘症とでも考えれば良いのか?

 私もイイ歳になって、昔のことを色々思い出しては気絶しそうになることが度々あり、そういうときは、都合の悪い部分に関して記憶喪失になりたいとさえ思うほどで、むしろ、恥ずべき行為ほど鮮明に覚えている気がする。もちろん、その記憶にも修正が掛かっており、事実はもっともっと悲惨なものかも知れないが、少なくとも、トニーほどあからさまな“記憶喪失”は、ちょっと信じがたい。

 でも、、、本作を見て思い出したのだけど、私がフェイスブックなどのSNSを絶対にやらない理由(詳細は『ソーシャル・ネットワーク』に書いたけれど、要は、自分が誰かを知らないうちに傷つけたことがないという確信がない、ということ)を知り合いに話したところ、「今までの人生、そんなヒドいことばっかしてきたの? 自意識過剰じゃない?」と、もの凄く脳天気に笑いながら言われ、それがまた、かなりショックだったのよねぇ。確かに、自意識過剰かもだけど。(脳内変換したのではなく)封印した記憶を掘り起こされるのって、イヤじゃないの? というか、掘り起こさせるのがイヤだ。SNSとは、そういう封印した(恥ずべきor辛いor哀しい)記憶を問答無用で開封させてしまうところが、私にとってハードルが高いのだけれど、、、。これ、書き出すと長くなるからこの辺でやめときますが。

 ただ、あまりに辛いことに遭遇すると、確かに、過ぎ去ってからその時期を振り返ったとき、あまり思い出せないことが多い、というのも事実。辛かった、ということは覚えているけど、その頃に自分が何をしていたかとか考えていたかとか、あんまり覚えていない。多分、辛すぎて忘れようとする脳の作用なのかも知れない。

 しかし、トニーのように、自分の恥ずべき行為をあそこまでキレイに別の記憶に書き換えてしまうのは、やっぱりちょっと違う気がするのよね。ううむ、、、この辺りの展開を受け容れられるか否かで、本作への感想もゼンゼン違ってくるんでしょう。私はちょっと、受け容れられないクチです。


◆トニー、嫌い、、、。
 
 ……ということを脇へ置くとしても、正直言って、私は、現在の老人となったトニーが、非常にデリカシーのない、図々しい自己チュー男に感じてしまい、ハッキリ言って嫌悪感すら抱いてしまった。

 例えば、トニーの娘・スージーが出産を控え病院に駆け込んだ際、別れた妻が後からやってくるんだけど、その妻に、ベロニカのことをしゃべったり(時と場所をわきまえろよ、、、)。ベロニカに冷たくあしらわれた後、ベロニカをつけ回したり、それだけにとどまらず、ベロニカと一緒に歩いていた青年に別の場所で偶然を装い声を掛けたり(図々しいなぁ、、、)。その青年を、ベロニカとエイドリアンの息子だと勝手に思い込んだり(相変わらず思い込み激しいなぁ、、、)。

 ダメ押しは、終盤。自分の記憶とは全く異なる事実を突き付けられて、反省したのは良いとしても、ベロニカに謝罪の手紙を書いてそこに「自分にできることがあったら言ってくれ」とか「自分の店に来てくれ」とか書いたり(デリカシーなさ過ぎ、、、)、別れた妻に「自分勝手だった、許してくれ」などと、それこそ勝手な謝罪をしてみたり(どこまで自己チューなんだ、、、)。ゼンゼン反省してないやん。

 この終盤は、原作にはなくて、映画化に当たって創作されたものだとか。そうだろうなぁ。こんなゆるいエンディング、ちょっとセンスが悪い。これで、トニーの株をさらに下げたと思うなぁ。ここで、ああ、良かったね、と思う人もいるんだろうけど、、、。どーだか。

 若い頃のトニーはフツーの好青年だと思って見ていたけど、あんまりな記憶喪失ぶりに、どんどん印象が悪くなるし。

 若かりしベロニカも、なんだかいけ好かない。トニーの心をもてあそぶみたいな言動にイラッとくる。それに、正直言ってあんまり魅力的な少女に見えない。可愛いけれど、なんというか、それだけ、みたいな。カメラが趣味で、フランス語に興味があって、、、みたいな描写もあるんだけど、今一つベロニカの魅力につながっていない。

 ベロニカの母親・セーラは、意味深な存在として描かれており、正直なところ、この辺で展開がうっすら予想がついてしまった。まあ、別に、それで見ていて興味が削がれるわけではないので構わないんだけどね。

 とにかく、登場人物がみんな、ちょっとね、、、、という感じで、あんまし好きになれない人ばっか、ってのがツライとこ。


◆その他もろもろ

 シャーロット・ランプリングの出番は少なくて、併せて10分くらいかしら。もうちょっとあったかな。、、、でも存在感はさすが。相変わらず、クールビューティでござんした。彼女の冷たい眼差し、シビれるわぁ~。

 若いベロニカを演じていたフレイア・メーバーという女優さん、可愛いけど、長じてシャーロット・ランプリングってのは、あまりにも雰囲気が違いすぎるというか、、、。もう少し、キャスティングを考えても良かったんじゃないのかしらん。フレイアちゃんは、そばかすだらけの小悪魔・ビッチタイプで、クールとはゼンゼン違う感じだったから。

 肝心の、若いトニーを演じていたビリー・ハウルは、なかなか好演。老いてジム・ブロードベントになる、ってのは、良いのか悪いのか、、、。ビリーくん、まあまあ可愛い顔しているし、演技もgooなので、今後も活躍するかもね。

 スージー役のミシェル・ドッカリーは、「ダウントン・アビー」以来。貴族のお嬢様の方がハマっていたような。本作では、あんましスージーのキャラがよく分からない脚本で、ちょっと存在感薄かったかなぁ。あと、「ダウントン・アビー」で、最終版にミシェル・ドッカリー演じるメアリーと結婚したタルボット役のマシュー・グードも、トニーの学校の先生役で出ていました。

 原作は、『終わりの感覚』というタイトルの小説とのこと。珍しく、邦題の方がイケてると感じたのは私だけ?



 






実の父親にマタニティー教室に一緒に来てもらいたい娘って珍しくない?




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2 コメント

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というわけで・・・ (フキン)
2020-03-25 14:40:13
こんにちは!!
こちらの映画の話というより、すねこすりさんが
過去を思い出すと気絶しそうになる…って言うのを読んでめっちゃ、ウケました!!!
すねこすりさんでも、そんな過去ありますか?!
私なんか、ほんとそんな過去ばっかりで・・・苦笑
知り合いのかなり年下の女の子が自分がバツの悪いとき、相手に気づかれないように鼻歌を歌う癖があるというのに気づいてしまったんですけど、
それに気づいた後、私自身が同じように気まずい自分の過去が脳内に浮上してきた時、鼻歌をうたっているのに気づき、ギョッとしました!!

嫌な過去が頭ん中に出て来た時とか、トイレに行ったりすると気分一新できるというのを蘊蓄本で読みました。

ああ、それで。
私もFBとかツイッターとかそれ系は一切してないんです。キリッ!!

普通にしてる人をみて、「みんなきれいな過去の持ち主なんだなあ・・」と別世界の人を見る目で見てしまいます。
そして、勇気あるなあ…って。

私なんてブログでも最近ですよ、こんな風にちょびっとオープンになったの・・笑

それにしても、気絶とか卒倒とか、面白いです。
知り合いの鼻歌っていうのも、かなりポジティブですよね。

いろんな反応があって面白いです。

って、全然映画の話じゃなくってすみません♬

旅行記、楽しみであります!!!(^^)



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部分的に記憶喪失になりたい。 (すねこすり)
2020-03-26 00:21:02
フキンさん、こんばんは☆

そんな過去ばっかしです、、、。もう、思い出しそうになると、わぁ~~とか叫んで違うこと考えるようにします
鼻歌、いいですね。これからは鼻歌にしよう!
「みんなきれいな過去の持ち主なんだなあ・・」って、ホントそう思います、私も。ちょっとムリだなぁ、私には。
誰にでも、そんな過去があるんだと思いますが、どうしても、「自分だけ」な気がしてしまうんですよね。あんなバカでアホなことしてたの、世界中でアタシくらいだしょ、、、って。あー、恥ずかしっ!!
フキンさんにもあると伺い、ちょっとホッとします。
……それより、コロナちゃんがヤバいです。
時差通勤で、満員電車は回避しているんだけど、もうこうなったらいつ誰が感染してもおかしくない状況です。
フキンさんもお気を付けくださいまし。
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