映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

スリー・ビルボード(2017年)

2018-02-17 | 【す】



以下、上記リンクよりストーリーのコピペです。

=====ここから。

 ミズーリ州の寂れた道路に掲示された巨大な3枚の広告看板。そこには警察への批判メッセージが書かれていた。設置したのは、7カ月前に何者かに娘を殺されたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)。

 犯人は一向に捕まらず、何の進展もない捜査状況に腹を立て、警察署長ウィロビー(ウディ・ハレルソン)にケンカを売ったのだ。

 署長を敬愛する部下(サム・ロックウェル)や町の人々に脅されても、ミルドレッドは一歩も引かない。その日を境に、次々と不穏な事件が起こり始め、事態は予想外の方向へと向かっていく……。

 =====ここまで。

 予告編からシリアスなサスペンスを予想していたのだけれど、蓋を開けたらブラックコメディだった、、、ごーん。

   
☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜


 何かを見に行った際の予告を見て、ううむ、、、と思いつつも興味を引かれたので、見に行ってまいりました。凄惨な事件が発端であり、かなりの暴力シーンもあるにもかかわらず、結構笑えるシーンが多くて、、、、笑っちゃった。


◆孤高のミル姐さん

 真っ赤なバックに黒い文字の告発文句の書かれた看板が3枚並ぶ。この光景だけでインパクト絶大。画になる。

 ……しかし、日本の警察も不祥事だらけでお粗末だけど、アメリカの、しかも田舎のそれは比べものにならないくらいにヒドイ様子。本作の舞台がミズーリに設定されたのも、ファーガゾン事件でその名が差別と格差のアイコンとなったからかも知れないけれど、それにしてもこのザマったらない。少なくとも、日本の警察署には、一晩中ちゃんと人はいるシステムになっているもんね。おまけに、警察官が一般市民をボコボコにしたら、さすがに大問題になるし、警察官は逮捕されること間違いナシだが、ミズーリでは警官クビになって終わり、、、ってホントかね? どっひゃ~、って感じだわ。そんなとこ住みたくないよなぁ。無法地帯やん。

 あれじゃぁ、そら凶悪犯罪の犯人でも捕まらんわけだ。署長がいくら地元民に慕われているっていったって、それとこれとは別の話だし。ミルドレッドがあのような大胆な行動に出るのも道理というもの。実際、看板が掲げられて警察は重い腰を上げているのだから、捜査の実態なんて推して知るべしだ。

 日本であんな看板が掲げられたらどうなるのだろうか、、、。と、想像してしまった。そもそも、看板を掲げてくれる代理店があるか、って話だよね、我が国の場合は。国家権力にケンカ売るなんてちょっと、、、と尻込みするんじゃないかね。特に今の日本ではそうなりそうな感じがする。仮に、看板を掲げても、アッと言う間にネット民の餌食になって、掲げた主も、代理店も、吊し上げられるのがオチだろうなぁ。

 まあ、本作でもミルドレッドは地元で白眼視されるんだけど、そこで怯まないのが素晴らしい。孤高の闘うアウトロー、、、ハリー・キャラハンとダブっちゃったわ。

 でもねぇ、、、そう思って見ていられたのも中盤まで。後半、警察署に放火するシーンは、ちょっとミル姐さんやり過ぎ、、、と思って引いてしまった。気持ちは分かるが、あの行為に大義名分はない。あそこまでやったら看板掲げた意義が根本的になくなっちゃう。……まあでも、これは映画なのだ。

 そんなアウトローなミル姐さんも、どこからか現れた野生の鹿に、ふと心を許して涙する、、、。また、何かと力になってくれる小男ジェームズに八つ当たりしてしまい、「しかめっ面の広告女でみんなを非難してばかり」と言われて、ひどく落ち込む、、、。

 とにかく、ミル姐さんの取り返しのつかない後悔の念と、怒りと、そのやるせなさで全編覆い尽くされていて見ていて辛い、、、、と言いたいところだが、それがそーでもないんだな、これが。


◆怒りはちゃんと表出した方が良い感情です。

 笑える、と最初に書いたけれども、何が笑えるって、ミル姐さんを取り巻く人々。

 サム・ロックウェル演じる警官ディクソン、ミル姐さんが看板を依頼する広告代理店のオーナーの兄ちゃんレッド(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)、ミル姐さんの元夫、元夫の19歳の彼女、ミル姐さんを何かと助けるジェームズ、みんな一見ヤバそう、バカそう、、、で、実際、ヤバくてバカな一面をあちこちで発揮してくれるシーンが笑える。アハハな笑いじゃなくて、クスッ、とか、グフッとか、そういう笑い。あー、あるある、いるいる、、、え? いるかこんなヤツ!! みたいな。

 本作の面白さの最大の要素は、ここだと思う。つまり、どの登場人物も、全てしっかり多面体で描かれているということ。ヤバそうでバカそうな人々も、決してそれだけじゃない、ってこと。人間、そんな単純な生き物じゃないんだよ、って。

 ただねぇ、私は、だからこそ気に入らない展開が2カ所あったのよ。一つは、署長が自決しちゃうとこ。もう一つは、ディクソンが署長の手紙を読んで一瞬でイイ警官に豹変しちゃうとこ。

 署長の遺書が読まれても、何で彼が自殺しちゃったのか、今一つピンとこなかった。膵臓がんで治る見込みがなく、治療で苦しむから、、、みたいな内容の遺書だったけれども、どうせ死ぬんだとはいえ、幼い娘が2人いて、妻もいる身で、そらねーだろ、と思う。おまけに、あの状況で自殺すればミル姐さんがさらに追い詰められると分かっていての自殺。看板の維持費を罪滅ぼし(?)に遺してのこととはいえ、何だかなぁ、、、と。これは、私自身が自殺に対して非常に嫌悪感を持っているから、というのも大きいが、、、。そこに納得できる理由があれば別だけれど、この署長の自殺にはそれがないように思える。ただの自己完結。それって、究極のエゴじゃない? そして、ストーリーを面白くするため、といった発想から“自殺”を盛り込んでいるシナリオは、もっと嫌悪感を抱いてしまう。本作がそうなのかは正直分からないのだけれども、あそこで署長が自殺する必然性が感じられない。展開上、見ているものを裏切るための“ツール”として自殺を選択したのだとしたら、脚本家としては尊敬できぬ。

 そして、ディクソンの豹変については、あまりにご都合主義な感じを受ける。ならば、署長が生きている間にどうしてイイ警官になれなかったのさ。署長を慕っていて、署長にも可愛がられていたのに。おまけに、命の危機を省みずに、よりにもよって毛嫌いしているミル姐さんの娘の事件のファイルを抱いて火の海の中を脱出する、ってのは、、、ううむ、これは映画だからってことで納得するしかないのか?? まあ、生きている好きな人に言われる言葉より、死んだ好きな人に言われたような気になる手紙の言葉の方が、心に沁みる説得力があるのは分かりますけどね。それにしてもね、、、というツッコミは、イチャモンに近いんですかね?

 本作のキーワードは“怒り”だそうで、元ダンナのおバカ彼女のセリフ「怒りは怒りを来す」のセリフに集約されていて、怒りが物事を悪い方へ持って行くみたいなニュアンスだけれど、怒りって大事な感情なんだよ。あんまり理性でコントロールしすぎるのも良くないと思う。きちんと、怒りは怒りとして表に出さないと。怒りは怒りを来すかも知れないけれど、怒りを封じ込めると、それは恨みとか、念とか、もっと厄介な感情に変質していくんじゃないかなぁ。だから、ミル姐さんが看板掲げたのは正しい怒りの表現だったと思う。警察署に放火したのは、正しくない怒りの表現だったけどね。……というか、あの放火は、怒りと言うより、ヤケクソ、八つ当たり、って感じかな。

 まあでも、ラストシーン、ミル姐さんとディクソンがアイダホに向かう車の中で、「それは道々決めよう」と話して終わるのは良かった、、、。怒りを、恨みにしなくて済みそうな余韻が良いと思う。


◆その他もろもろ

 なんと言っても、ミル姐さんを演じた、フランシス・マクドーマンドが素晴らしかった。もう、男か女か分からないユニセックスな感じで、キレイに見せようとかゼンゼンないところが、却ってステキだった。彼女の家の前にあるブランコでのシーンが印象的。そこからは例の3つの看板が見下ろせる。ここで、署長やマクドーマンドと話をするミル姐さん。どんなにアウトローな厄介おばさんでも、彼女の心の奥底を思うと、やはり哀しい。そんな哀しみと怒りを、ユーモア交えて好演されておりました。これは主演女優賞でオスカーかもね。

 ディクソンを演じたサム・ロックウェルもとっても良かった。田舎のおよそやる気のなさそうな警官を、その腹の出かかった中年体型と、いっつも二日酔いっぽい振る舞いで見事に表現。差別主義者とはいえ、大した思想に基づくものじゃなく、ただそういう環境で育ったからそうなった、というだけの単細胞な感じがよく出ていて笑わせてもらいました。レッドのオフィスに殴り込みに行くところは圧巻。あのイカレっぷり、もうほとんど狂った人って感じだった。

 署長は、ウディ・ハレルソン。イイ人役だったけど、この人は、やっぱし悪人顔のような気がする。ミル姐さんの元夫役ジョン・ホークスもgoo。見るからに壊れたDV男って感じでヤバかったけど、面白かった。

 でも、私が一番印象に残ったのは、代理店の兄ちゃんレッドを演じたケイレブ・ランドリー・ジョーンズかな。ディクソンにボコボコにされて、入院している病室に、今度は火傷したディクソンが運ばれてくる。そこでのレッドとディクソンのやり取りが実に可笑しい。憤りながらも、ディクソンにオレンジジュースを入れてあげるレッド、イイ奴だ。この、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズは、これから有望株なのでは? と思ったんだけど、どーですかね。

 音楽もなかなか良かったなぁ。ディクソンが署長の手紙を読むとき、ABBAの「チキチータ」が流れるのが意外だった。何でチキチータだったんだろ? まあ、歌詞がディクソン宛の署長の言葉と通じるモノがあるといえば、あるかも、、、だけど。
 


  








ありきたりなオハナシではないです。




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2 コメント

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怒りのチキチータ (松たけ子)
2018-02-19 20:25:18
すねこすりさん、こんばんは!
悲惨で暗い話なのに、笑えるという特異さ。なかなか味わえない珍味でしたね~。私もあんな無法地帯で、ぜったい暮らしたくないわ~。
孤高のアウトローおばさんミルドレッド、ヤバいけどカッコよかった!ディクソンも、ヤバいけど何か可愛いかったり。確かにディクソンの豹変は、ちょっと唐突な感じでしたね~。忘れ得ぬ好演だった二人、オスカー獲ってほしいです!
すねこすりさんはこの春、楽しみにしている映画は何でしょうか?3月から4月は観たい映画いっぱい、そしてプロ野球開幕で、忙しくなりそう(^^♪
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怒髪天!! (すねこすり)
2018-02-20 19:40:57
たけ子さん、こんばんは〜☆
私、フランシス・マクドーマンドの出演作って、ほかに見たことないんです(多分)。今回、ちょっとホレちゃったので、いろいろ漁ってみようと思っております。
春の新作、楽しみですよね♪ 中でもマストは、そりゃなんつっても、ハネケ&ユペールのハッピーエンドっすよ! この2人でハッピーエンドな映画になるわけねーだろ!! と、すんごい楽しみです。ビガイルドと聖なる鹿殺しもチェックしてます。ニコ姐続きですが、どーなんでしょーか!? あと、恵比寿でジェラール・フィリップ特集やるんで、それも通わねば!
たけ子さんのレビューも楽しみにしてま〜す♪
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