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「江戸繁昌記 ニ篇」 8 混堂(ゆや)6

(飛行機雲が目立つ、今日の夕空)

このところ、夕空ばかりを眺めている。台風1号がなかなか発生しなかった今年、帳尻を合わせるように、太平洋に幾つも発生し、次々に日本にやってくる。台風11号が去ったと思ったら、今朝は台風9号が関東を襲い、房総半島に上陸した。人が付けた順番など、自然界は頓着しないようだ。

オリンピックが終わった。メダル数が、金12個、銀8個、同21個、合せて41個、国別では6位。メダル数では過去最高であったロンドン大会の38個を3個上回った。

孫たちが去って、今日から外壁の塗装の業者が入った。

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

全く業気を除して、自ら痴を知る。清音宛轉中、忽(たちま)ちの濁音を挟んで曰う、魂を返す、返魂香。名畫、霊有らば憐むべきの一隻語(カワイトタツタヒトコトノ)の如し。一声これを聴かしめよ。声大なり。
※ 業気を除して -「つとめぎ(務め気)はな(離)れ」とルビあり。
※ 宛轉(えんてん)- なめらかで、とどこおりのないさま。
※ 返魂香(へんごんこう)- 焚くとその煙の中に死んだ者の姿が現れるという伝説上の香。反魂香(はんごんこう)。
※ 隻語(せきご)- ちょっとした言葉。短い言葉。


(つい)で歌いて曰う、松は固より緑を落さず(トキワニテ)、薪と為すは桜と梅、誅焼(キリクべテ)始めて知る、衛士の火、庭燎、今夜君が與(とも)して来たる。
※ 衛士(えじ)- 護衛の兵士。
※ 庭燎(にわび)- 神事の庭にたくかがり火。


甲、乙を怒りて曰う、湯を用いる事、姑(しばら)く、徐々にせよ。我が頭は誕生仏に非ず。洗然たる一怒声、頓(とみ)啾音遏密す。寂たりや。適す(ちょうどその時)聞く。湯中に自然に声有りて、湧き上るを。蓋し、人の放屁するのみ。
※ 洗然たる(せんぜんたる)- さっぱりとした。
※ 啾音(しゅうおん)- 啼く音。
※ 遏密(あつみつ)- 鳴りものをやめて静かにする。


外面の浴客、位置、地を占め、各(おのおの)自ら垢を摩(ま)す。一人は大桶を擁し、爨奴をして、背を巾(ぬぐ)いしむ。人、両児を挟んで慰撫、頭を剃らす。弟は手に陶亀と小桶を弄す。兄は則ち已に剃らせり。側に在りて板面に巾(手ぬぐい)を布(し)き、舒巻、自ら娯(たの)しむ。
※ 爨奴(さんど)- 三助。風呂屋の男の使用人。燃料を集め、釜を焚き、また特に洗い場で浴客のあかすり、肩もみを行う。
※ 舒巻(じょかん)- のばし広げることと、まき固めること。


水舟に就いて嗽し、因って、睨(にら)め、板隙を窺(うかが)う。蓋し、更代藩士。(温泉宮、目前に在り。覗かざるを得ず)隅に踞して、盤を前にし、犢鼻(ふんどし)を洗濯す。曠夫なると知る可し。
※ 水舟(みずぶね)- 水槽。
※ 嗽す(そうす)- 口をすすぐ。うがいをする。
※ 更代藩士(こうたいはんし)- 参勤交代で江戸へ来た藩士。
※ 踞す(きょす)- しゃがむ。
※ 曠夫(こうふ)- 妻のいない男性。男やもめ。
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