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「江戸繁昌記 ニ篇」 19 散楽(能)1

(庭のムラサキシキブ)

夜、金谷宿大学役員会へ出席する。議題がたくさんあり、9時までかかる。

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。今日より「散楽(能)」の項である。

    散楽(俗にこれを能と謂う)
※ 散楽(さんがく)- 奈良時代に中国から渡来した雑芸。軽業・曲芸・奇術・滑稽物真似などを含み、相撲の節会・競べ馬・御神楽などに行われた。のち田楽・猿楽などに受け継がれ、猿楽能の母体ともなった。
浮世の旅況、夢中の思い、遠行万里、程期無く、箇(こ)は這(こ)中の人、氏(うじ)盧生なる者、 盧生曰う、我れ人間(じんかん)に在りて、未だ嘗(か)つて仏に奉ぜず。安閑に日を送ること、實に多し。聞く、に高僧有り。現に某の山に住すと。一たび来りて、身後の大事を聴かんと念(おも)い、今乃(すなわ)ち、急歩し来たる。(口中、言急げど、脚則ち極く緩く)
※ 旅況(りょきょう)- 旅の様子。
※ 程期(ていき)- おおよその期間。
※ 蜀(しょく)- 現在の四川省、特に成都付近の古称。
※ 盧生(ろせい)-「盧生の夢」あるいは「邯鄲の枕」の逸話の主人公。
※ 安閑(あんかん)- のんびりとして静かなさま。心身の安らかなさま。
※ 楚(そ)- 中国に周代、春秋時代、戦国時代にわたって存在した王国。現在の湖北省、湖南省を中心とした広い地域を領土とした。
※ 身後(しんご)- 死んだのち。死後。
※ 急歩(きゅうほ)- 急いで歩くこと。急ぎ足。


故天を回顧すれば、遥々已に遠し。山また山、川また川、雲栖(うんせい)昨日暮れ、水泊今日暮れる。早く已に邯鄲に到着せり。(盧生、枕を見、喜状を作(な)す)曰う、聞く所の邯鄲の枕はこれ、これか。一夢、(うべ)く試みん。応(まさ)に天公の賜(たまもの)なる。日影、未だ残せり。仮寝少時せん。(盧生枕を把(と)り臥す)
※ 故天(こてん)- 故郷の天。
※ 邯鄲(かんたん)- 中国河北省南部の工業都市。
※ 喜状(きじょう)- 喜びのようす。
※ 宜(うべ)- 肯定する気持ちを表す。なるほど。いかにも。


使者出で、(盧生を呼び醒ます)曰う、請う、起きて勅を受けよ。(生、驚き起く)曰う、知らず、何の故ぞ。楚王、使いを遣(つかわ)して、位いを盧生に譲る。偶然、に登る。その情を審(あきら)かにせず。 使者曰う、想うに、君自らこの福有らん。請う、速かに輿(こし)に上れ。玉輿煥發、原(もと)、乗り慣れはせず。喜意、真に、天津に向いて雲桟を渡るが如し。
※ 祚(そ)- 天子の位。
※ 玉輿(ぎょくよ)- 玉の輿。
※ 煥發(かんぱつ)- 輝くように現れ出ること。
※ 喜意(きい)- 喜びの気持。
※ 天津(てんしん)- 天の港。
※ 雲桟(うんさん)- 断崖の中腹に架けた桟橋。また、険しい山道。

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