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売渡し田地添え証文  駿河古文書会

(近江屋「売渡し田地添え証文」)

金曜日の駿河古文書会、当番だったが、課題は早く終わり、時間が残りそうだったので、前日に急遽、手持ちの未読の古文書を準備した。古本屋T氏から提供された、金谷宿の近江屋の文書である。

案の定、課題が終って時間が一時間近く残ってしまった。休憩を10分ほどとって、この文書を読むに15分と掛らないであろう。まだ30分近く時間が残る。そこで、この文書を手に入れた過程を話した。T氏からゴミ同然になった近江屋の文書を借りて来た。鼠のおしっこがかかったような和紙に墨で書かれた文書が、くちゃくちゃに丸められて、段ボールに入っていた。一枚づつ洗って天日で干して皺を伸ばす作業を、猛暑の夏に一週間ほど掛かって行い、200枚ほどの古文書を整理した。その苦労話をしてみた。

たくさんの人に話をして、興味をもって聞いてもらうコツの第一は、最初の「つかみ」だと、大学教授の友人に聞いたことがある。まず初めに一つ笑いを取ることで、聴衆は聞く姿勢になる。この会は、平均年齢が70代であろうか、30数人の会員から、会合の中で笑い声を聞いたことは、ほとんど記憶になかった。

これはハードルが高そうだと思った。しかし、爆笑と言うわけにはいかなかったが、二度ほど笑い声が聞こえた。一つは「汚くて、洗った後でないと家の中に入れて貰えない」という所、もう一ヶ所は「補修に和紙を張るのにスティックのりを使った」という所。少し人前で話す楽しさを知った、講座当番であった。

追加で用意した、金谷宿近江屋の古文書である。書き下して示す。

  売渡し申す田地添え証文の事
 一 金壱両也
右は、前々売渡し申す、下田壱反拾弐歩、分米壱石四升、
海戸、田代金弐拾五両弐分にて、渡し置き申す処、當戌
拾ヶ年限相成り候故、追加金書面の通り請け取り申し、
合わせて、金弐拾六両弐分にて、貴殿方へ永(なが)売り渡し申し候。
この末、右証文を以って、其許(そこもと)名田所持相成るべく候。
後日のため、加判証文、よって件の如し。
 文政九戌年十二月
            売主 洞善院 ㊞
            証人 醫王寺 ㊞      
        近江屋文次郎殿


※ 分米(ぶんまい)- 近世,検地による土地の公式の収穫高。石盛(こくもり)に面積をかけ あわせたもの。
※ 海戸(かいと)- 垣内(かいと)で、意は「農場として囲い込んだ場所」。字名には多く、金谷に、三ヶ所ある。(神谷城、菊川、佐夜鹿)
※ 其許(そこもと)- 二人称の人代名詞。同輩またはそれ以下の者をさす。そなた。
※ 名田(みょうでん)- 荒地を開墾、あるいは譲り受けた田に所有者名を冠した田。名田の名主は年貢の納付機関としての役割を負っていた。
※ 洞善院、醫王寺 - いずれも金谷に現存する寺。


今の所、この近江屋が何を生業にしていたのか、分っていない。200枚の文書を、これから少しずつ解読して行くうちに、何か解ってくるのではないかと、興味津々である。
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