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山崎久麻呂 大地震の記 11

(今夜、火星大接近)

夜十時ごろ、自宅から、東から昇った月以外に、南南西位の夜空にオレンジ色の明るい星が一つだけ見えた。火星である。今夜は火星大接近の日、地球より6210万キロの所へ近付いていると聞いた。デジカメで撮影して、拡大して見ると、黒い空にオレンジの穴が開いているように見えた。もちろん実像ではないだろう。

はりはら塾講座の準備に、一日中費やした。

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「山崎久麻呂 大地震の記」の解読を続ける。

在々大方、かくの如くなりしが、在方も町家中の風俗、自ずから見習い、三乙女嶋になりし。殊更に、予、三十五、六才の頃より、弥益(いやまし)に在々も奢り、この頃始めて、大平(おおひら)といふもの、上垂木と下手五ヶ村、草苅山出入(でいり)取扱いに、掛川へ出、十王町横砂屋にて、出ければ、見初(みそめ)しが、今は当村にも、大平七つ、八つばかり有るなり。着類(きるい)も、結城縞、或いは、南部紬越後結城など、𥿻布(絹布)に増(まさ)りし物、在々下様(しもざま)の者まで着るように成る。
※ 弥益(いやまし)➜ ますますもっと。さらにいっそう。
※ 大平(おおひら)➜ 平たくて大きな椀。煮物などを盛る。大平椀。
※ 出入(でいり)➜ 争いごと。もめごと。
※ 結城縞(ゆうきじま)➜ 結城紬(つむぎ)・結城木綿の縞織物。
※ 南部紬(なんぶつむぎ)➜ 南部地方から産出する紬織物。
※ 越後結城(えちごゆうき)➜ 越後の小千谷で織られる結城に近い風合いの紬。
※ 下様(しもざま)➜ 身分・教養などの低い人々。しもじも。


また近年は、異国船度々渡来に付、公儀より仰せ出され候に付、武家方も目が覚め、具足よ、鉄炮よ、太刀、長刀(なぎなた)、俄かに求め、釼類(けんるい)は外廻りも真(まこと)よき、殊更に能(よ)きを好まれば、下も自然とこれに似(に)して、大身(たいしん)の百姓町人は、五両、八両の身を求め、大金を掛け、脇指(わきざし)など拵(こしら)い、兎角(とかく)に武の風俗を好む。威光(いこう)を振りたき事、内心顕(あらわ)すあまり、町人、百姓の身にとりて、立派にもなく、本意(ほい)も叶わざる世となりければ、今度の様なる大地震ゆり、国は次第、窮すべきか。
※ 具足(ぐそく)➜ 武具。甲冑。
※ 身(み)➜ 刀の、鞘(さや)に収まっている刃の部分。刀身。
※ 大身(たいしん)➜ 身分の高い人。高位・高禄の人。ここでは、「金持ち」位の意。
※ 威光(いこう)➜ 自然に人を服従させるような、おかし難い威厳。
※ 本意(ほい)➜ 本来の望み。本当の考え。
※ 窮す(きゅうす)➜ 行きづまって身動きのとれないこと。

(「山崎久麻呂 大地震の記」解読、つづく)
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