goo

「徳川記 巻六」の解読 5

(庭のオニユリ/7月13日一輪だったものが今)

庭のオニユリがこんなにいっぱい花を開いた。

*******************

「徳川記 巻六」の解読を続ける。

  一揆降参
同三月上旬、戸呂寺内に(お)し篭る吉田太左衛門と云う者、他宗のためといえども、本多朋友の好(よし)みに依り、爰(ここ)に篭る。公の家人斉藤は、渠(かれ)と昵近(じっこん)なるに依って、吉田が許(もと)へ竊(ひそか)に云い遣わして、同今度、各(おのおの)一揆、是非に及ばず。累代従伝(じゅうでん)の、主君に弓を向け奉り、これを弯(ひ)く条、且つは悪逆、且つは無道(むどう)なり。その方、幸い寺内にあり。本多、蜂屋に異見(いけん)を加え、早く降(くだ)るべきとなり。吉田信服(しんぷく)して本多を諫(いさ)む。本多忽(たちま)ちこれに応じ、蜂屋半之丞は大久保縁者たるに依り宥(なだ)めて降らしむ。
※ 擠し篭る(おしこもる)➜ 城などに入って敵から防ぎ守る。立てこもる。
※ 是非に及ばず(ぜひにおよばず)➜ やむを得ない。しかたがない。
※ 従伝(じゅうでん)➜ 従い伝わる。
※ 無道(むどう)➜ 行いが人の道にそむいていること。道理にはずれていること。
※ 異見(いけん)➜「意見」と同じ。思うところを述べて、いさめること。忠告。
※ 信服(しんぷく)➜ 信頼して服従すること。


大久保五郎左衛門、同新八郎、同治右衛門など、御前に倡(とな)え出、その外、石川善五左衛門、同源左衛門、同半三郎、本多甚四郎など(こう)。然るといえども、三つの望み在り。第一、敵対の士卒、御放免有り、本領安堵(ほんりょうあんど)の事。第二、寺僧、元の如く立て置かるゝ事。第三に、一揆張本人、一命を助けらるゝ事。この三つ叶えられゝば、向後忠節を竭(つ)くし、戸呂寺内に軍勢を引き入るべしと称す。家康公、斉藤に褒美を給う。これに於いて、戸呂の一揆を討ち滅(ほろぼ)さんため出馬され、降人(こうにん)ら、総ての如く、寺内を放火して軍勢を引き入れ、一揆周章(しゅうしょう)して兵臭を捨て逃走す。
※ 降ず(こうず)➜ くだる。敵に負けてしたがう。
※ 放免(ほうめん)➜ はなちゆるすこと。拘束していた者などをゆるして、自由にすること。
※ 本領安堵(ほんりょうあんど)➜忠誠を誓った武士に対して、幕府や領主が領地の所有権を認めて保障したこと。「本領」は先祖から受け継いだ領地。「安堵」は所有権を認めるという意味。
※ 張本人(ちょうほんにん)➜ 事件の起こるもとをつくった人。首謀者。
※ 降人(こうにん)➜ 降参した人。
※ 周章(しゅうしょう)➜ あわてふためくこと。うろたえること。

(「徳川記 巻六」の解読つづく)

読書:「妻恋河岸 剣客船頭 4」 稲葉稔 著
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )