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「尾張者異国漂流記物語」の解読 7

(散歩道のヒナゲシ)

60年も昔、親父の日曜百姓に借りた畑に、ケシの花が咲いて、これは栽培してはならない花だと聞いた記憶がある。どういう経緯で植えられたのか、その後、そのケシの花はどうなったのか、記憶にない。ただケシの花がずいぶんと奇麗だと思った記憶がある。ヒナゲシには麻薬成分はない。一般にポピーと呼ばれ、虞美人草という謎めいた名前もある。

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「尾張者異国漂流記物語」の解読を続ける。

度重(たびかさ)なれば(とみ)移ろう事にや。または太神宮のおかげにやありけん。ハツタニン人ども、寄合(よりあい)内談して、私どもへ尋ねけるは、船なくしては如何(いかが)して、かの鉄嶋へ渡り申すべきやと云う。我ども申しけるは、御免(ゆる)しあらば、才覚(さいかく)にて、船を造り申すべきやと云う。ハツタニン人云う様は、釘なくして船出来るべしや。我ども云わく、木釘(きくぎ)にて仕上げ、なおまたこの嶋に多き、藤と申す(かずら)にて絡(から)みなば、子細(しさい)なしと云う。
※ 頓に(とみに)➜ 急に。にわかに。
※ 移ろう(うつろう)➜ 心変わりする。変心する。
※ 才覚(さいかく)➜ あれこれ苦心・工夫して金銭や物品を整えること。工面。
※ 葛(かずら)➜ つる草の総称。
※ 子細なし ➜ 特に問題はない。


またハツタニン人申すは、その船にて日本へ帰りなば、再びこの嶋へ参るまじきものと心笑(こころえ)ける。私ども申すは、扨々(さてさて)(おのおの)は、愚(おろ)かなること申され候や。不審はもっともに候えども、能々(よくよく)聞き給え。日本と鉄嶋との間は、遥かの海上を隔て、その上、大風・大浪止(や)むことなし。木釘などにて造り候船にて、中々日本へ帰り渡り申す事、思いもよらぬ事。大浪・大風に逢っては、矢庭(やにわ)打ち破れ申すなり。我々も命は大切に候えば、この所に居(お)り申し候。
※ 矢庭に(やにわに)➜ その場ですぐ。たちどころに。

木釘船にて、十杯も廿杯も鉄を取り渡り、各(おのおの)へ大分徳付(とくつ)て、その御恩賞(おんしょう)に、右の鉄の内を少々下され候わば、その鉄にて釘を造り、船を拵(こしら)え、本国へ帰り候わば、偏(ひとえ)に各の御情けと存ずべきと、真事(まこと)しやかに謀(たばか)りけるに、(ハツタニン人)鬼神に横道なしと、その儀ならば鬮(くじ)を取り、くじ次第に賭けんと云う。されども、私ども悦び限りなし。
※ 徳付け(とくつけ)➜ 利益を得る。もうかる。
※ 恩賞(おんしょう)➜ 功績や奉仕をほめて、主君が家臣に与える褒美。
※ 鬼神に横道なし(きじんにおうどうなし)➜ 鬼神は道にはずれたことをしない。鬼神は邪(よこしま)なし。

(「尾張者異国漂流記物語」の解読、つづく)
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