平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
「尾張者異国漂流記物語」の解読 5
韓国の大統領がコロナ勝利宣言を出した途端、ソウルの繁華街のクラブで新たなクラスターが発生した。この戦いは出口戦略が大変難しい。各国で規制を緩めると感染拡大が再燃することが起きている。日本も二の舞にならぬように、警戒を緩めてはならない。ともあれ、明日は町の図書館が開く。
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「尾張者異国漂流記物語」の解読を続ける。
さてまた畑にて芋を掘る道具は、楷(かい)の棒の先に、鉄を鑓(やり)の様に拵(こしら)え、それにて畠を作るなり。或いは、同士(どうし)/\喧𠵅(けんか)をする時も、それにて突き合わせ候故、度々死人出来るなり。さてまた、その所にて、何ぞ相談致し候時に、皆々磯辺へ出、広き岩の上に居並び、上座に居(おり)申すべき躰(てい)の者は、黒金の釘、また鍋の破れ、炮丁(ほうちょう、包丁)の折れ、さまざまの鉄物を首に掛け、或いは頭に戴き、腰にさしなどして、我劣(おと)らじと練(ね)り出る。その内にて、鉄を沢山に持ちたる者を、座上に直(なお)すなり。日本に譬(たと)えれば、金持と貧者の違いなるべし。兎角(とにかく)、鉄を何より重宝(じゅうほう)に仕るなり。
※ 楷(かい)➜ かいの木。ウルシ科の落葉高木。孔子の墓に植えたといわれる。
※ 練り出る(ねりでる)➜ ゆっくりと歩み出る。静かに歩み出る。
※ 重宝(じゅうほう)➜ 貴重なものとして大切にすること。
その外、替りたる咄(はなし)、何程(なにほど)もこれ有り候趣ども、荒増(あらまし)、ここに書き記し申すなり。さて、我(われ)ども、箸にて食事致す事を、沙汰(さた)の限り無作法なり。きたなしと嫌(きら)い申し候。磯辺に小屋を作り、夜々別に、私どもばかり寐伏(ねぶせ)致し候。昼は十五人を引き分け、一日廻りに、使い申し候。
※ 荒増(あらまし)➜ だいたいの内容やようす。あらすじ。一部始終。
※ 沙汰の限り(さたのかぎり)➜ 是非を論じる範囲をこえていること。論外。また、言語道断。もってのほか。
※ 寐伏(ねぶせ)➜ 横になって寝る事。
さてまた、嶋の流れは、日本の道法(みちのり)に致し候えば、拾三里程、橫は弐里三里、或いは五里もこれ有る由。その向こうに、かすかに大きなる島見えけれども、何嶋と云う事を知りたる者なし。唐天竺へ折々渡海したる人申しけるは、定めてその島は鬼住む島の由、昔より語り伝え申すなり。若し弥(いよいよ)左様なる嶋にて候わば、最初上り候節。この島へ参らず候て、向うの大嶋へ上(あが)りなば、必定(ひつじょう)、命は有るまじきに、偏(ひとえ)に太神宮の御鬮(みくじ)の御影(おかげ)にて、からき命助かりけると、悦び申し候。
※ 流れ(ながれ)➜ ここでは「長さ」をいう。そんな言い方があるのかどうか、不詳。
※ 必定(ひつじょう)➜ きっと。確かに。
※ からき命(辛命)➜ かろうじて助かった命。差し迫ってあぶない命。
(「尾張者異国漂流記物語」の解読、つづく)
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