平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
温暖化講座、温暖化対策のリスク
(昨日の温暖化講座の続き)
温暖化のリスクの二つ目、「温暖化対策のリスク」とは、従来の石油依存型経済成長モデルから脱却をめざす際に、含んでいる大きなリスクである。
オバマ米大統領は世界不況の打開策としてグリーン景気刺激策を打ち出した。環境エネルギー分野に11兆円を投資、2050年までに温室効果ガスを80%削減、350万人のグリーンジョブを創出という政策で、温暖化防止についての京都議定書から離脱したブッシュ元大統領の政策を大きく転換した。これはグリーンニューディールと呼ばれる政策で、温暖化リスクを回避しながら、景気や雇用など経済停滞のリスクと、石油など化石エネルギーの枯渇というエネルギーリスクも回避するという、一石三鳥をねらった政策である。
さらに、米国は、GEやグーグルが協力して、スマートグリッドと呼ばれる新たな送電網を構築することに着手した。スマートグリッドとは従来の遠方の発電所から一方的に消費者に送電する送電網ではなくて、情報技術を積極的に用いて電力会社と消費者間の送電の課題、長距離送電の歩留りの問題などを解決しようという計画のことである。
実際には家庭の太陽光発電、近郊の風力発電、あるいは蓄電池を備えた電気自動車まで、送電網の中に取り込んで、コンピュータ管理によって、出来るだけ消費地に近い電力を利用することで、歩留りを大きく改善し、全体で温室効果ガスの大巾な削減を目指すものである。
アメリカではブッシュ政権のもと、そういった政策が排除されて、一見足踏みをしてきたように見えるが、州レベルではどんどん進められていた。例えば、温暖化により山火事が多発していた、シュワルツネッガー知事のカルフォルニア州など、多くの州が先行的に進めてきた。風力発電の普及はすでにドイツを抜いて世界一に躍り出ている。
ヨーロッパではチェルノブイリ原発の事故以来、新たな原発設置がストップし、環境問題に対する世論が盛り上がって、太陽光発電や風力発電が国を上げて推進されてきた。また、中国など途上国も石油依存型経済成長に走りながら、脱石油のエネルギー政策へも目配りを忘れていない。
世界は大きく舵を切ろうとしている。その中にあって、太陽光発電の技術では世界に先行していた日本は、今やその分野で諸外国に大きく水を開けられ、第6位にまで落ちてしまった。遅ればせながら太陽光発電については補助金制度を復活したり、新たに余剰電力の買取単価を倍額にするなど、政策転換が見られるがまだまだ及び腰である。対策は太陽光に偏ったものであり、風力発電等については手付かずである。このままでは温暖化防止対策において日本は世界に取り残されるだけでなく、大きなビジネスチャンスを失うことにもなるだろう。
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