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「さかなのうた」と日流文化

(鹿児島のハクモクレン-3月13日撮影)

「つながるテレビ@ヒューマン」という先取り情報番組がNHKの日曜午後11時に放映されている。世の中で起きている新しい流れなどをつかんで置きたいので、時間が合えば見ている。先週の日曜日で取り上げられたテーマに「さかなのうた」があった。スーパーの魚売り場で喧しく繰り返している「♪さかな、さかな~」の歌が頭に浮かんだが、全く関係なかった。

2週間前にネット上に投稿され、大反響を巻き起こしているアニメーションの話であった。機械仕掛けで空を浮遊する魚と少年。繰り返しのメロディでぽつぽつと歌われる物語は、昔、空に憧れた少年が神様と契約して魚の姿で空を浮遊している。すでに神様にも忘れられて、元の姿に戻るすべもわからない。

5分間の作品を見てみた。「さかなのうた」は、一人の映像技術を専攻している女子大生が、卒業制作として、企画、作画、アニメ制作、作詞、作曲、歌まですべて1人で作ったアニメ作品である。投稿して1週間で20万回再生され、その完成度の高さが評判を呼んでいる。

今は様々な道具がそろい、才能のある人は年季を積まなくても、世界観やイマジネーションをストレートに表現できてしまう。そんな時代になったのだと思った。しかもそれを簡単に世に問うことが出来る。作品のやさしい浮遊感はどう表現すれば良いのだろう。「さかなのうた」で検索して見てもらうしかない。

戦後60余年、戦争の無い時代が続いた。これだけ平和が長く続いたのは日本の歴史を見ても、平安時代と江戸時代ぐらいしかない。そのどちらの時代もやさしい文化が栄えた時代であった。王朝文学に代表される平安時代と、江戸庶民の間に栄えた町人文化など、戦いがないと人々はこんなに優しくなれる。そしてこの60年の平和の末に開いた現代の文化もやさしい時代のものである。もはや企業戦士の時代も去った。

一時の寝ても覚めても韓流、韓流でもてはやされた「韓流ブーム」もすっかり下火になった。今は逆に日本文化の流入を自由化した韓国で、日流がブームになっているという。アニメやコスプレやゲームだけでなく、若手監督の映画、小説などが韓訳されて多くの若者たちに受け入れられている。

韓流のものが戦いや厳格さ、道徳的など、ワンパターンの内容が多いのに反して、日本のものは等身大の日常が描かれ、やさしさに溢れた様々な作品がある。平和に慣れ始めた韓国の若者たちに韓国文化は嫌われ、日本文化がブームになっている所以である。

「さかなのうた」もそういう作品の一つで、多数の人に受け入れられたのであろう。かつては自分も日本の文化現象を平和ボケの一面だとあまり評価していなかった。しかし、最近、21世紀の世界にもたらされた福音かもしれないと思うようになった。何ものも受け入れる自由な宗教観と、ヒューマンでやさしい若者文化が、車の両輪になって、冷戦後、堰を切ったように頻発する民族・宗教の地域紛争の中で、21世紀を救うことになるかもしれないと考えるようになった。
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