河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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1275- トリスタンとイゾルデ 新日フィル2011.7.16

2011-07-18 16:08:24 | インポート

2010-2011シーズン聴いたコンサート観たオペラはこちらから
2010-2011シーズン
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2011年7月16日(土)2:00-6:50pm
すみだトリフォニー
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ワーグナー トリスタンとイゾルデ
     (コンサート・オペラ形式)
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トリスタン リチャード・デッカー
イゾルデ エヴァ・ヨハンソン
ブランゲーネ 藤村 美穂子
マルケ王 ビャーニ・トール・クリスティンソン
クルヴェナール 石野 繁生
メロート 桝 貴志
牧童、若い船乗りの声 与儀 巧
舵取り 吉川健一
合唱、栗友会合唱団
(演出 田尾下 哲)
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クリスティアン・アルミンク指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団
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歌い手が揃っていて充実した歌唱を目の当たりにできました。トリスタンは昨年の10月のびわ湖公演以来です。
今回の公演はコンサート・オペラ形式ということで前シーズンのペレメリと同じような感じ。第2幕の森は、ペレメリと同じ映像かと錯覚しました。
いずれにしても演出とよべるものではなく、イメージの喚起だけとなります。位置関係もばらばらでかなり疑問。歌い手たちが素晴らしかっただけにその乖離の大きさに戸惑いを感じないわけにはいかない。登場人物と指揮者が同じ高さで同じスポットで歌い棒を振る。全く奇妙で、指揮者も登場人物の一人のような位置関係と動きでまたよくみえる、これはないだろう。
オーケストラはステージに上がっているが前方、真ん中、後方となっていてそれらの間を通路のように歩きながら歌うスポットがある。前方オケのさらに手前、ウィンドあたりの中腹通路、後方通路、そして最後方上を見上げると大きな映像幕、前方から後方へ少しずつ角度がついている。
自席は定期公演そのままなので5列目。歌い手たちと目が合う位置。かなり首を上にあげて映像にうつる字幕を、頭をささえながら拝見。ですからステージ上の様子は見えるがステージのセッティングについては今一つ不明瞭。
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タイトルロール二人がオーケストラのさらに前方で絶唱。第1幕を飛ばしすぎて、第2,3幕で少し落ちたかな、などといったことはまるでわからない。これほど大きな声で正確な歌い口、みごとの一語に尽きる。インストゥルメントと同じ正確さが求められていてそれをやすやすと実現する歌唱、お見事でした。
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第1幕では藤村が主役と対等に張り合う。微妙なニュアンスまでよくこなれており精緻な歌に好感。薬がどうだこうだとか前史のことなどは、今歌っているその歌詞の内容からしか垣間見ることができない、それはそれでいいのかもしれない。そういう意味では割愛的な要素が必然的に出てきてしまうこの演出ではどうしようもないけれど、かわりに気持ちいいほど整然とした音楽の流れがある。精度の高い内容で、きっちり歌えた反面、第2幕以降でちょっとばてた感じはあるのかもしれない。
音楽は媚薬を境にガラッとかわる。かなり濃い。いわば動きのない場面転換のような感じ。ここからの盛り上げはアルミンクの棒もあるのだろう、劇的で一気にブラスのエンディングまでもっていく。
第2幕もタイトルロール二人の圧力がものすごい。夜の世界はあっという間に終わってしまった。ここでもトリスタンが刺される場面点から一気に進行。60分という短さで劇的なエンディング。
マルケ王のクリスティンソンはいかにも場馴れしたような歌いまわしで、少々フラット気味な個所があるがあれは余裕の形崩しみたいなもの。奥の方から全くよく通る声でこれまた圧倒的な存在感のマルケ王です。
デッカー、ヨハンソン、クリスティンソン、藤村、それにとりまき日本人歌い手みんないい出来だったと思います。もしかしてこのトリフォニーは人の声がよく通るホールなのかもしれません。
第2幕のオーケストラはますます精度が高くなり乗ってきます。どんどん速くなりますね。通常のカットがあってももう少しじっくりと味わいたい気持ちもある。
本来の演出はありませんのでストーリーを追って書くのはやめてます。第3幕ではトリスタンのデッカーが絶望的な悲しさの幸せを歌いつくさなければなりません。非常にスマートな歌で柔らかい、ヘルデン・テノールとはやや異なる響きがこの劇にはふさわしい。場面前半のお船到着まででだいたい終わりかかっている劇のまとめでマルケ王が追いかけて到着、なぜ、イゾルデが先だったのかという不思議はだいたいあるのですけれど、あらかじめ媚薬事実はわからないし、お船を追い越すこともままならなかった。それで劇としてはなりたっている。ハッピーエンドにしたければお船が追い越すというふうにすればいいということでもありますね。ただ、この場合、マルケ王との戦いはこれまた避けられない。それにトリスタンは息絶え絶えだからどちらにしても絶望的なストーリーしか成立しないかもしれない。前の史で既に運命づけられているともいえる、下敷きがあるとはいえ見事なストーリー・テイリング。ただ、前回聴いたびわ湖公演でも書きましたが、マルケ王が到着してゴタゴタと人が死に(着く前のトリスタンも含めて)、それからストレートにイゾルデによる「愛の死」になるが、ここの部分の必然みたいなものに一つ欠ける。ワーグナー、もうひとひねりほしい。
でも結局いつものことながら、ワーグナーのカタルシスに浸ることが出来ました。じわじわとくる。音という時の流れがただ流れるだけでなく積み重なっていき、ついには積分的盛り上がりが聴く方を熱くさせてくれる。いい公演でした。
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第1幕80分
第2幕60分
第3幕72分

フライングブラボーがありましたけれど、さすがにばつが悪かったのかもう一度静寂が訪れたのはいいことでした。決まってホール奥の方からしか聴こえてこないフライングですが、そんなに我先に叫びたかったら一番前の席をたまには占めたらどうか。音速的には最も早くフライングできますよ。どっちにしろ、
全てが水泡に帰す。ただ一人の「これ」で。
おわり
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