河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

シノポリ フィルハーモニア 千人 1988

2006-10-08 18:06:19 | コンサート





5年前にアイーダを振っているさなか、オケピットのなかでゴロンと転がってしまったシノポリはそのままラダメスとアイーダをみとることもなく、逝ってしまった。専門の精神医学でもわからない予期せぬ出来事に違いなかった。個人的には、自作のルー・サロメが好きだった。
そのシノポリの脂がのっていた頃の1988年、大曲を携えて来日した。マーラー8番を含む4プログラム。15公演。
この日はこんな感じ。

1988年9月30日(金)19:00 NHKホール

マーラー 交響曲第8番“千人の交響曲”

第1ソプラノ、ガブリエラ・ベニャチコヴァ
第2ソプラノ、ジュリア・コンウェル
第3ソプラノ、バーバラ・カーター
第1アルト、片桐仁美
第2アルト、永井和子
テノール、ウィリアム・ペル
バリトン、アンドレアス・シュミット
バス、オスカー・ヒレブラント

桐朋学園オーケストラ
桐朋学園大学合唱団
桐朋学園大学付属音楽教室合唱団

ジュゼッペ・シノポリ 指揮 フィルハーモニア・オーケストラ


大曲といってもイギリスのオケとソリスト以外は日本国内調達。アンドレアス・シュミットもいたのかと、河童は一番見晴らしの良い席に座りながらどこを見ていたのだろうか。
マーラーは交響曲を書くうちにイメージがどんどん膨らんでいき、あるときは3番の方向、あるときは7番の方向と、さまよい続け、究極のイメージの膨らみが、果ては千人も舞台に上げなければイメージの実現を実感することができなかったのであろうか。
ときはバブル絶頂期。それに合わせるような超極端な大曲の祭り事イヴェント。聴衆も心なしか浮足立っている。このような曲はリアル舞台を見なければ何も言ってはいけない。
日本のアマ軍団は年一回といったイヴェントに照準を合わせるのがうまく、器用であるのでそつなく、それなりの成果を発揮した。合唱は素晴らしいものであった。
しかし、8人のプロ・ソリストたちにかなうはずもなく、迫力的には負け越し。8対150人(ぐらい)でも150人の負けだな。
第1部のこれでもかこれでもか、と圧倒的音圧で迫ってくるマス・サウンド。当時のフィルハーモニアの実力はどのあたりに位置していたのいであろうか。昨今の埋没気味な雰囲気ではなくビッグ・イヴェントにふさわしいポジションにあったはずだ。それ以前にラファエル・フリューベック・デ・ブルゴスとの来日でも感じていた「なんとなくイギリス・サウンド」が健在だったように思う。いかにもエルガーとか、マックスウェル・デイヴィスとかにフィットしそうな音。横幅があるのに透明で少し埃っぽいサウンド。
このサウンドに乗って、華やかな合唱が縁どりを明確にし、シノポリは精力的に振りまくり休むことない25分。
第2部1時間はこの人数に合わないぐらいのピアニシモのピッチカートから始まり、割と控え目な音楽である、前半は。
曲が進むうちに全体のフレームが明確化し、遂には大爆発の大団円をむかえるわけである。シノポリにはあまりふさわしくない音楽かもしれない。

1985年頃から10年余り時折振っていたニューヨーク・フィルとの相性は良かった。チャイ5とかブラ4とか生の味わいがよかった。また素晴らしいCDも残しているが、人間世界はあまり見向きもしないようだ。フィルハーモニアの比ではない肩の力が抜けた余裕の音楽となっている。


マーラーの8番は生で、といいながら忘れられないテープもたまにはある。

1975年9月19日 フィルハーモニー

マーラー 交響曲第8番

小沢征爾 指揮 ベルリン・フィル

(1976.05.01 NHK-FM)

おわり


2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
この公演も行きました!入社するまで地方に居たの... (風太郎)
2008-05-09 23:10:07
この公演も行きました!入社するまで地方に居たので、マラ8が生で聴けるなんてと思い、入社2年目で金欠なのに、トゥーランドットと共に大枚払う覚悟(笑)

よかったことはよかったのですが、NHKホールは広過ぎるのか、うまく鳴っていないなと思った記憶があります。
返信する
風太郎 (河童メソッド)
2008-05-11 10:29:57
風太郎
コメントありがとうございます。
マーラー8番もトゥーランドットもあれから20年たちました。
コンサートの記録は残りますが記憶は定かではなくなりつつあります。
ただ、瞬間の場面は何かの残像のように刻印されていたり、音もしかりです。
異次元ワールドの醍醐味を感じた瞬間がありました。
他の記事もご覧くださいませ。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。