2018年3月17日(土) 2:00-4:40pm サントリー
タン・ドゥン オーガニック3部作
水の協奏曲~ウォーター・パーカスとオケのための~ 武満徹の追憶に (1998) 33′
ウォーター・パーカス、ベイベイ・ワン
Int
紙の協奏曲~ペーパー・パーカスとオケのための~ (2003) 12+5-15′
ペーパー・パーカス、藤井はるか
Int
タン・ドゥン トーク 7′
大地の協奏曲~アース・インストとオケのための (2009) 日本初演 8-11-10′
―グスタフ・マーラー「大地の歌」に敬意を表して
アース・インスト、ジャン・モウ ベイベイ・ワン 藤井はるか 柴原誠
タン・ドゥン 指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団
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タン・ドゥン、ミュージック・トリロジー、うちひとつは日本初演。企画ものとしては最高で、その場をセットした新日フィルにも拍手。
タン、自作自演。演奏する新日フィルが充実の演奏。圧巻の内容でした。
オーガニックと聞くと、身体に優しい自然食レストラン、のようなことが一番に思い浮かぶが、タンのトリロジーは、テーマ、内容に、「自然」を扱うもので、水、紙、大地、これらに自然界のものが絡んでいく。音楽はナチュラルな様相はなくて激しくて機能美目白押しのように聴こえてくる。扱う楽器に偶発性を表現できるところがあり画一的に整理された機能美に、意識された作為の幾何学模様が絡んでいく。スタイリッシュなインターナショナル性とネイティヴに由来するオリジナリティがうまく絡み合った逸品。パーカッション見立ての視覚的要素が濃く、色々と面白くてさながら彼のオリジナリティからのスーヴァニアの様相。題材素材は彼自身の内側にあるものが作用した、内部からのインスパイア物のようだが、出てくる音は内面から外にふき出す音に活力があり、創作や作為、効果に満ちている。
パーカッション・セクションは協奏曲毎にそれぞれ、ウォーター・パーカッション、ペーパー・パーカッション、アース・インストゥルメント、協奏曲の題名にふさわしい活躍。
それに、ねっとりしないグリサンドの弦や息を切ったり伸ばしたりのブラス・セクション、緊張感に溢れた作品と演奏。
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最初の水のコンチェルト。ステージ一番前に透明なガラスのボウルが2個。水を湛えてある。それに手を突っ込んで滴を垂らす音、道具類を水に入れて叩く、等々。ボウルの他にも水関連が色々とある。舞台への照明はパープルっぽい。見た目も出てくる音もフレッシュですね。ベイベイ・ワンによる中間部のソロは緊張感に満ち溢れ圧巻。見もの聴きものでした。
伴奏となるオーケストラは、ブラスの切れ音の連発がことごとくツボにはまりまくる凄い演奏。それにシームレスな弦が輪をかけることを殊更せず、抑揚美で魅せてくれる。
タンは身体がよく動く。的確な棒、身体能力も高い。
次の紙コンチェルトはさながら紙祭り。激しい音楽。紙関連を材料にした奇抜なパーカス類が派手に舞台を揺らす。ソリストの藤井はるかとオケメンが二人合わせて三人でパフォーム。第1ヴァイオリンは1プルトずつ2階のあちこちに散らばりプレイ。音も散らばっていく。音楽の表情はドライな方向へシフト。途中から音にオリエンタルな味付けが垣間見えてくる。
パーカス類のセットアップもあってか、休憩が2回。最後の大地のコンチェルトの前にタンさんのトークがありました。演奏団体や小澤への感謝もありましたね。
大地のコンチェルト。日本初演。マーラー生誕150年、グラーフェネック音楽祭委嘱作品。大地の歌の引用がある。
1,2,3楽章が大地の歌の3,1,5楽章の順番に出てくる。特に終楽章は大地の歌5楽章が露骨に出てきますね。
ジャン・モウが吹くセラミック・インストゥルメントをはじめとして既出の方々が他のパーカスでプレイ。それから、ここでも第1ヴァイオリンは紙の時と同じポジションでプレイ。
紙コンチェルトでややオリエンタルな音が見えたあたりを予兆として、ここでは音楽がグッとこちらに近づいてきた。馴染みある引用のせいかもしれない。
三つの酔歌を引用した音楽は適度な激しさと世界を斜め見するような響き。ユニークな音楽。
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これらトリロジーは1998、2003、2009と時を隔てて作られているけれども、まるで同じ時期に違う題材を使って並行作業で作られたような見事なバランスの良さで、作曲家の活き活きした創造力の持続性感じさせてくれて大変に楽しむことが出来ました。
タンの指揮は毎度冴えていて、動きの良さ、的確なポイント指示、自作の音楽を隈なく表現。なによりも、このエポックメイキングなプログラミング、自作自演、これらをパーフェクトに伴奏付けした新日フィル、圧倒的でした。冒頭の第一音から現音専門集団ではないのかと思わせるような切れ味の良さに感嘆。第一音で感嘆。聴いているほうの充実感がありまくりで、タップリと浸る。
全てが良く揃った演奏会。ヒストリックとは後の人の言うセリフなれど。
充実した演奏会、ありがとうございました。
おわり