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1990年ベルリン国立歌劇場公演のスケジュールはここ。
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1990年来日公演の初日はこれで始まった。
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1990年10月18日(木)6:30PM
東京文化会館
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モーツァルト作曲 魔笛
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ザラストロ/フリッツ・ヒューブナー
タミーノ/ヴォルフガング・ミルグラム
弁者/ルネ・パぺ
夜の女王/キルステン・ブランク
パミーナ/カローラ・ヘーン
第一の侍女/ブリギッテ・アイゼンフェルト
第二の侍女/エルヴィラ・ドレーセン
第三の侍女/ウタ・プリエフ
パパゲーノ/カールシュテン・メーヴェス
パパゲーナ/マルゴット・ステイスカル
モノスタトス/ペール・リンツコーク
僧侶/ヘンノ・ガルトゥーン
三人の童子/国立歌劇場合唱団
二人の武者/ペーター=ユルゲン・シュミット、
ゲルト・ヴォルフ
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エアハルト・フィッシャー プロダクション
ハンス-マルティン・シュナイト指揮
ベルリン国立歌劇場
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魔笛の公演は6回行われた。
指揮のジークフリート・クルツがキャンセルとなったため、前半3回をハンス-マルティン・シュナイト、後半3回をシュテファン・ショルテスが振った。
エアハルト・フィッシャー演出で、キャストは完全ダブルである。
初日10月18日は上記のキャストである。
ド迫力な力と自信を兼ね備えたルネ・パぺが来日していたとは、今さらながら時代の流れは早いものだ。
ベルリン国立歌劇場へのデビューは1987年。
弁者でデビューということだから、今日のこの日もフレッシュな声を聴かせてくれることであろう。
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照明を落とした地の底から、ベルリン国立歌劇場のサウンドが湧き立ってきた。あのビロードのような音色は聴けるのか。
思ったより細い音であるが、つるつるした水滴のような何とも言えない響きが、上野のホールを包み込むというよりも鋭く差し込むような感じであった。
10月18日からの公演といっても、通常その1~2週間前に来て上野のホールを占有して総練習を行っているわけだから比較的万全。
ただ、この時期、自国でのシーズン前であるため、ベースボールで言うとオープン戦からの臨戦態勢の局面であろう。
メンバーの連中も少しずつシーズン感覚を取り戻しながらの演奏かもしれない。一気に序曲からノリノリとはいかない。
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とにもかくにも魔笛第一幕があいた。
フィッシャーの演出は1990年6月にかかった新演出ということだが、いたってシンプルなもので、それでいて斬新というわけでもないので、若干チープな感じがしないでもないが、それもこれも束の間、歌手陣の充実度にすぐに耳を奪われる。
均質なアンサンブル、美しく響く声。
歌手陣の容姿、風貌は大人びており、大の大人がおとぎ話の世界に迷い込んだようなウィットの効いた素晴らしさがある。
日本人がカワイコブリッコするしぐさ(大人もする)とは完全に一線を画した考え抜かれたキャストによる演出だ。
このような観点を頭の隅に常駐させて、モーツァルトの音楽を聴くと大人のエスプリの表現が明らかだ。非常に魅力的な音楽である。
ちょっとHな局面もステージは明るく照らされており、含みのある動作というよりもむしろ、あっけらかん、といった趣も感じられて妙に気持ちが浮き浮きしてくる。
日本における長い興行の一日目がこのようにして始まったわけであるが、肩の力を抜いた日常の演奏を聴くことが出来たのは良かったことだと思う。
おわり
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