1991年に日本で行われた来日公演から生聴きしたものをピックアップして書いてます。
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1991年にピッツバーグ交響楽団は、
1973年、1987年に続いて3度目の来日公演を行った。
今回と前回はマゼールの棒。
初来日のときの棒はウィリアム・スタインバーク。
1984年から濃い関係にあるマゼールとピッツバーグ。
機もだいぶ熟してきた。
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1991年5月
17日(金)大宮ソニックシティ
18日(土)昭和女子大学人見記念講堂
19日(日)オーチャードホール
20日(月)サントリーホール●
22日(水)ザ・シンフォニーホール
23日(木)聖徳学園川並記念講堂
24日(金)武蔵野市民文化会館
25日(土)サントリーホール
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●は河童潜入
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8回公演である。
この年1991年の来日公演日程はコリン・デイヴィスのバイエルン放送交響楽団とほぼだぶっている。(5月16日-27日)
バイエルンの方は5月27日に聴いたので、次回のブログで書こうと思う。
今日はピッツバーグ。
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1991年5月20日(月)7:00pm
サントリーホール
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ブルックナー/交響曲第8番
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ロリン・マゼール指揮
ピッツバーグ交響楽団
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8回公演のうちブル8をやるのはこの日一回だけ。
それにつられてこの日を選んでしまったが、今思うと、ほかの日のプログラムにもいいのがあった。
チャイコフスキーの交響曲第3番とか、マゼールが再構成したワーグナーのリング(管弦楽版)など。今頃になって反省している。
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この日のプログラムはブル8だけ。
版のこともなにも書いていないプログラムで、マゼールやピッツバーグのほめ言葉や、知りあい自慢だけの話が多くあまり使えないプログラムだ。
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ピッツバーグの音は硬い。
黄色く金属的に光輝く音色がピッチの正確性を探られないよう包み隠す。
素晴らしくアメリカ的な音色と腕前だが総じて1.5流だ。
アンサンブルが室内楽的。室内楽的に高レベルのアンサンブル、というのとは少し違って人数が少ない薄いサウンドに聴こえてくるのだ。むろん見た目は100パーセント、フルオーケストラなのだが。
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ブルックナーの8番は難曲であり、来日公演で一回だけの演奏であり意欲的ではある。
でもなんだかガラスの破片が飛び散るような演奏だった。
ブルックナーに特別な情念やデモーニッシュなものを求めるものではないが、それでも第1楽章から次々と出てくる主題をすべて把握しておき、最後の第4楽章コーダでそれら全部が突如並列して現われるとき、いやがうえにも音楽の響きだけではなく、知識・記憶の集積物が積み重なったものとして精神の響きを感じるわけだが、そのような精神の構築物の表現はピッツバーグのオケにはちょっと負担が大きいのかもしれない。
マゼールはベルリン・フィルとのブル8もあるが、あれもさえない。音響どまりというか、あまり目立つことにない演奏だ。
マゼールは一見レパートリーがものすごく広く思えるが、それは勘違いで、振るオーケストラが膨大なだけで、好きな曲はわりと限られている。彼のブルックナー全集なんてありえないと思う。やっぱり別の日に聴きにくればよかった。
おわり
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