2012-2013シーズン聴いたコンサート観たオペラはこちらから
2012-2013シーズン
.
●
2013年7月6日(土)6:00pm サントリー
.
ベートーヴェン・プロ
序曲、コリオラン
ピアノ協奏曲第5番 皇帝
ピアノ、ハヴィエル・ペリアネス
(アンコール)ファリヤ アンダルシアのセレナータ
.
交響曲第6番 田園
.
ヒュー・ウルフ 指揮 読売日本交響楽団
●
名曲ぞろいのプログラムで、本格的で手応えありの演奏でした。
ピアノのペリアネスは、鍵盤に手が吸い付いていくように見えるスタイルで、なんだかピアノから求められている、彼の指を動かしているのはピアノではないのかと思ったくらい。弾いている最中も、休止の間も、指揮者の棒をずっと見続けている。彼のスタイルなんでしょう。また、前後の挨拶のしぐさも含めバレンボイムとよく似ている。どのくらい深い師弟関係なのか知りませんが、しぐさがよく似ている。指揮者のエッティンガーほどではありませんが。
それでまず、コリオラン。シンプルで非常に魅力的な曲。第1,2主題の極端な違いに見られるように劇的要素がもともと内包されている。なんか最初から、ピアニシモのこの終わり方しか有り得ない、そんな感じが濃厚。ウルフは曲以上にドラマティックなものは求めませんが、それでもこの重厚な雰囲気は、このあとの2曲の方針が、「軽い飛び跳ね系」ではないことを予感させます。聴きごたえのあるいい演奏でした。ウルフは非常にスキニーで余計な脂肪は無いように見えます。両腕を蝶のようにしながら縦振りする姿からあのようなヘビーなサウンドが出てくるのは一つの驚きではあります。
.
皇帝は完全に伴奏の域を越えていて、特に第1楽章は聴きごたえがありました。ペリアネスは好き勝手ということが全くなく、ウルフの棒を始終、凝視。オーケストラに自然に絡み合って一緒にプレイ。ウルフのサウンドより少し重心が高いような気がしますが、かえって音の階層が埋まって全体的に隙間のない音響空間が出来ました。これもよかったと思います。
.
後半の田園。これがエロイカならもっと良かったなどとは言うまい。
ウルフの棒はオケまかせに見えない。厳格に統制しているようには見えないのですが、かといって、ここは勝手、気ままに演奏して、みたいなところも皆無。きっちりちゃんと指揮している、それだけで十分という気もします。少し前方左方向に向き、蝶のように振る姿はユニークだがおそらく遠目にはまるで目立たないと思う。オーケストラに向かっているというより音楽に対面しているという感じがある。オーケストラが自らをアンサンブルさせる力がウルフの魅力。この物語風な曲をシンフォニックな度合いはそこそこに、また重厚さも感じさせながら祈りで終わる。うちに帰ったら自然にCDを取り出し田園を聴きたくなるような、これまたいい演奏だったと思います。
ありがとうございました。