河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

1505- ブリテン、ラクリメ、シンフォニア・ダ・レクイエム、ウストヴォーリスカヤ、怒りの日、ストラヴィンスキー、詩篇、カンブルラン、読響、2013.9.3

2013-09-03 22:49:48 | コンサート

2013年9月3日(火)7:00pm サントリー

ブリテン ラクリメ ~弦楽とヴィオラのための
 ヴィオラ、鈴木康浩

ブリテン シンフォニア・ダ・レクイエム

Int

ウストヴォーリスカヤ コンポジション第2番 怒りの日

ストラヴィンスキー 詩篇交響曲
   合唱、新国立劇場合唱団

シルヴァン・カンブルラン 指揮 読売日本交響楽団


実質的なシーズン初日だと思うのですが、何かセレモニーがあってもいいような気もする。日本の場合、諸外国とは異なり、だいたいどこでも何事もなく初日をむかえることになる。
今節のカンブルランのプログラムは意欲的なもので、この日のプログラム・ビルディングも考え抜かれたもののように思え、前日のコンサートのような趣向を考えた人たちとはだいぶ異なる。

ワーグナー、ヴェルディ生誕200年、ハルサイ初演100年、そしてブリテン生誕100年。まず、ブリテンもいるのだよとその主張があって、4曲の流れは、キリストの涙、レクイエム、怒りの日、祈り、感謝、そしてハレルヤまでもっていく。
生誕100年のブリテンを2曲入れることにより主張させ、そのレクイエムのあとは破天荒な曲、怒りの日、そしてこのハンマーリズムが呼び起こす詩篇。
少なくとも前日の演奏会のようなプログラミングとは思考の深度が全く違うと思わざるをえない。
怒りの日のインパクトはものすごいものですが、それでもそれを含め全くギクシャクしないシームレスな流れの構成。カンブルランの勝利。


この日一番インパクトがあったウストヴォーリスカヤの怒りの日。作曲者、曲名ともに未知の状態で臨みました。
中央から向かってやや右に一列に並んだ八つのベース、その前にあるのはハンマーで叩かれる直方体のわりと大きめの箱、左にはピアノ、これだけである。あとは指揮者がいつもの場所にいる。
怒りの日と言えば、ベルリオーズの幻想に代表される例のふしで勝手にイメージを作っている。そのイメージがあればこの日の演奏会の流れ、結構助けにはなる。このウストヴォーリスカヤの曲でも真っ暗闇の暗黒ながら、その筋は見えてくる。どのような思考でこのような楽器編成になったのが全く分からないが、脳内理屈はいかばかりであろう。
ややメタリックなベースが突き刺す感じでフレーズを進める。ピアノは複雑に飛び回る。そして、うっすらとハンマーで叩かれる箱の音。弱く始まり、強靭に鳴り、微妙なずれで変化をつける。最初の弱音は心臓の音のように聴こえる。見た目は握り拳を上にあげることの無い鍛冶屋風、イメージが広がっていく。
カンブルランの棒は熱を帯びている。まるでプレイヤーの一人としてアンサンブルをしているようなおもむきなのだ。ピアノのカデンツァ風なところでは、スコアに指をあて、オタマジャクシを追っている。いやー、芸術の創作さ中、そのまっただ中にいるような雰囲気。最高です。それから、怒りの日という言葉がこれほどストレートに音楽に結びついているのは稀有な気もします。

後半2曲目は、ストラヴィンスキーの詩篇交響曲、合唱がはいるのはこの曲だけでちょっともったいない気もしますが、全体構成を考えた上での選曲でしょうからカンブルランの強い意志。怒りの日のリズムとの連関を意識させたプログラム・ビルディングということになるのでしょうか。最後にハレルヤで解決というストーリー展開も意識下。
この必然性を感じさせる後半2曲にヴァイオリンとかヴィオラはありません。前半でお仕事終わり。一種独特な雰囲気の演奏会でした。


前半のブリテン。ラクリメはこれも初めて聴きます。品のある響きで、済みきった涙か。
読響のサウンドはだいたい重心がやや下にくる感じですが、指揮者によって引き締められており美しくややウエット、潤いを含んだ演奏でした。曲の流れはスローテンポのBGMとの淵にいるような気もする。
前半2曲目のシンフォニア・ダ・レクイエム、カンブルランにより音の幅がボテ系にならず非常に引き締められており、パーカッションをはじめとしてリズムの形が浮き彫りとなる。なにか求心力があるというか響きが一点に収束していくような鳴り。この曲はブリテンにとってもしかして苦渋の曲なのかもしれませんが、カンブルランの見事なコントロールでわかりやすい。堪能しました。
ブリテン生誕100周年とは言ってもこの曲自体若書きで、このあと深度を増していったのだと思います。「ニ調」はやにっこい。
おわり


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