駅の出口から100歩のところにある上野のホール。
そそくさとした街並みを通ることもなく直行できるのがこのホールの強みです。
今日は日本初演のオペラ初日。
客も意気込んでいる。でも、なんだか変だ。客層がいつもと異なる。若者が多い。
いつでもヴァイオリンのケースをぶら下げた学生のような連中はいるのだが今日は少し雰囲気が違う。
男の子女の子みんなプロポーションが整っている。
河童が落としたブローシャーを拾ってくれた女の子は、河童界ではいまだかつて見かけたことのない美人であった。どうも変だ。客質は悪くなさそうだ。
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100歩の後のそのような微妙なホール感覚を味わいながら、使用料金500円で担保代金5千円の8倍ビノキュラスを借り、1部千円のプログラムを2部買い、一階河童特等席へ向かった。
どうもいつものオペラの観客とは違う人種が多いなぁ、などと思いつつ開始を待つ。
初めて観る聴くオペラである。先入観なし、頭空っぽでいどむ。
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2月の3連休3連続公演の初日
2007年2月10日(土)17:00
東京文化会館
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リヒャルト・シュトラウス作曲
牧歌的悲劇 ダフネ 全一幕
演出・振付 大島早紀子
メインダンサー 白河直子
ダンサー 木戸柴乃 小林史佳
斉木香里 横山博子
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ダフネ/釜洞裕子
ダフネの父親ペナイオス/池田直樹
ダフネの母親ゲーア/板波利加
ロイキッポス/樋口達哉
アポロ/福井敬
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二期会合唱団
東京フィル
指揮 若杉弘
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ギリシャの神アポロの他愛無い気紛れが湖面に石を投げた後の波状のような波風を立ててしまった。愛されたダフネは月桂樹となり淡く終わる。
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暗闇の中、どんちょうが静かにあがる。
音はしばらくの間全く出てこない。
音楽は始まらない。
しかし、聴衆が目にしたものはステージ中央の椅子にたたずむメインダンサーの息を呑むような素晴らしい振付の踊り。
そうだったのか。今日の客層の半分は、早い話、コリオグラファー大島早紀子の振り付けと、メインダンサーの白河直子を観に来ていたのだ。
それでもオペララヴァー、オペラゴアーズの人間たち河童たちは知っている。一人の人間が上野のホールの全聴衆をだまらせることの意味を。
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メインダンサーの有無を言わせぬ魅力的な踊りと、4