2019年8月26日(月) 6:05pm-6:58pmギリギリまで ブルーローズ、サントリー
トーク プレ・コンサート ミカエル・ジャレル、細川俊夫
2019年8月26日(月) 7pm-9:10pm ブルーローズ、サントリー
ミカエル・ジャレル 作品
エチュード ピアノのための(2011) 11
ピアノ:永野英樹
『ベーブング(ヴィブラート)より』 クラリネットとチェロのための(1995) 20
クラリネット:上田希
チェロ:多井智紀
『...分岐された思考...(ナッハレーゼⅦb)』 弦楽四重奏のための(2015) 4-4-4-7+2
ヴァイオリンⅠ:辺見康孝
ヴァイオリンⅡ:亀井庸州
ヴィオラ:安田貴裕
チェロ:多井智紀
Int
『無言歌』 ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための(2012) 11
ヴァイオリン:辺見康孝
チェロ:多井智紀
ピアノ:永野英樹
『エコ』 声とピアノのための(1986) 8
ソプラノ:太田真紀
ピアノ:永野英樹
『分岐(アソナンスⅠc)』 アンサンブルのための(2016)(日本初演) 12
指揮:キハラ良尚
フルート:上野由恵
クラリネット:上田希
バス・クラリネット:山根孝司
打楽器:神田佳子
ピアノ:永野英樹
ヴァイオリン:辺見康孝
ヴィオラ:安田貴裕
チェロ:多井智紀
コントラバス:地代所悠
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サントリーホール サマーフェスティバル 2019
~サントリー芸術財団50周年記念~
サントリーホール 国際作曲委嘱シリーズ No. 42
(監修:細川俊夫)
テーマ作曲家〈ミカエル・ジャレル〉
《室内楽》
恒例サントリーのサマーフェスティバル、今年のテーマはミカエル・ジャレル。細川俊夫がベルリン芸術大学からフライブルク音楽大学に移ったときに同じクラスにいたということだから同じような年代、環境で空気を吸っていたわけだ。
この日はオール室内楽で6作品。全部初めて聴く。おしなべて規模が大きい。大規模でヘヴィーな作品群。室内楽の編成ではあるのだが多彩な音色。ピツィカートの多用。短切音とそれの連続。関連した音高で次々と推移。3曲目の弦四による分岐された思考は、明確な形式、緊張感あふれる音楽。第2楽章のピツィカートによるスケルツォ風味、終楽章に付けられたピツィカートはコーダ風であり、連関を感じさせる作品で圧巻、特に印象的な作品でした。
細かい解説は分厚いプログラム冊子に書いてあるので、それを事前に手に入れておいて読んで臨むもロングな作品群に立ち向かうのはそう簡単ではない。
エチュード
ソロ・ピアノの曲。フランツ・リストにもとづくという言葉が添えられていて、かつ、エリオット・カーターに捧げられてる。といったあたりのことを頭に置きながら聴くことに。
思いついたような叩きつけ、短い音の粒とフレーズ。後半はだんだんと緩くなり弱音終止。
ピアノが共鳴機になっていくという思考のプロセスを追えればそこそこ理解はできるものかもしれないが、そこまでには至らない。
ベーブングより。
クラリネットとチェロの作品。ベーブングという別の作品から派生した作品とのこと。
ベーブングというのはクラヴィコードにヴィブラートをかけること、もしくはその奏法。だそうで、この原理を他楽器のアンサンブルに適用。音を引き継いでいき変調していく行為。
チェロはピツィカートを多用する。クラリネットは呼吸するようなプレイ。果たして上に言われるようなことが現象として発生したのかどうか、わからない。
分岐された思考
本日の作品群の中で一番の充実した作品。形がわかるので理解しやすいというのもあるかもしれない。
節目ごとのタイミングが、4-4-4-7-2。第1,2,3,4楽章と2分のコーダ、と、勝手に楽章数をつけてしまったが、そのような理解だ。
第2楽章はスケルツォで最後は減衰しながら終わる。第3楽章も跳ねる音楽。終楽章の進行は最後にコーダ風に付けた全部ピツィカートの収束するフィニッシュ。ここは第2楽章を思わせるもので、総じてこのように関連性が印象付けられる箇所があり、一つのまとまった作品としての充実度が感じられる。聴きごたえ満点でした。
以上3曲、ここで休憩。
無言歌
ピアノ三重奏曲。いわゆる無言歌と何が違うのか、弦に歌が現われてくる。
何種類かの緩急テーマが散らばる。散文的に漂流する。流れを聴くのみで、これもよくわからない。
エコ
ソプラノとピアノ。ルイス・デ・ゴンゴラのソネット80番にもとづくもの。プログラム冊子に日本語対訳がついているので理解しやすい。
その歌詞の内容の抑揚、歌う声の抑揚、これらが音楽の抑揚として一致している。声が入ると一気に雰囲気変わりますね。
分岐
これは比較的規模の大きいアンサンブルの作品。この日の締めくくりの曲としてここに置いたものだろう。
色彩感、多彩な音色、インストゥルメントの多さがそのまま多彩なミュージックを作っている。相応な面白さあったけれども、この日の6作品では一番できの悪い作品のように聴こえた。
以上合計6作品。プレイヤーたちの腕前は大したもので、こうやって演奏されてこその現代音楽と思う。絶賛。
6つ聴きましたけれども、3曲目の弦四のための作品が手ごたえありました。総じて、もう一段、ほりの深さが欲しいものだ。偽らざる実感でしたね。
おわり