河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

1749- 答えのない質問 カンブルラン、読響、2015.2.13

2015-02-14 20:55:55 | コンサート・オペラ

2015年2月13日(金)7:00pm サントリー

武満徹 鳥は星形の庭に降りる 14′
バルトーク ヴィオラ協奏曲 24′
 ニルス・メンケマイヤー
(enocre)
バッハ 無伴奏チェロ組曲第1番 から「サラバンド」 3′
Int

ドヴォルザーク 交響曲第9番
   第0楽章 アイヴズ  答えのない質問 10′
   第1楽章 +11′
   第2楽章 12′
   第3楽章   7′
   第4楽章 11′

(enocre)
ドヴォルザーク スラヴ舞曲 op.72-2  6′

シルヴァン・カンブルラン 指揮 読売日本交響楽団


格別だ、得体の知れない何かが重力に逆らいつつスローモーションで動き始めるその波動を感じる。世の超越主義をも飲み込んでしまいそうな、アイヴズ宇宙に浮かぶ物体が別の重力を発している。格別だ。

アイヴズの為だけに来た。と言っても、
プログラム後半のアイヴズとドヴォルザークは、アタッカ以上の完全な連続演奏でしたのでタイミング等、表記は上のようにしました。これは2014.10.3のメッツマッハーNJPによるツィンマーマンとベートーヴェンの連続演奏と同じスタイルです。

連続演奏の新世界は「完全に」アイヴズに食われ、もはや立ち直ることすらできない。
アイヴズを前にして新世界第1楽章は古すぎて陳腐でさえある、この重力的静けさのモード余韻は、かろうじて同じ静けさが宿る第2楽章の家路がふさわしく、この古めかしい第1楽章の演奏の間、頭の中をずーーと駆け巡っていたのは第2楽章。アイヴズの後、第1楽章を省略して、第2楽章から始めることこそベストな道ではなかったかと思わせるぐらいアイヴズのこの曲のインパクトは強いと言わざるを得ない。

メッツマッハーが、ツィンマーマンとミサ・ソレムニスをつなげた時、ベートーヴェンは新しいものだと感じたが、ドヴォルザークにその力は無い。曲のモードが第2楽章なら似ているからつなげられる、その程度のもの。
名曲のドヴォルザークもアイヴズを前に太刀打ちできない。この連続演奏は、アイデアは秀逸ながら完全自失の失敗プログラムビルディング。第1楽章を割愛したら演奏行為と言えなくなるとでもいうのだろうか、そうかもしれない。ここらあたりのことをカンブルランに聞いてみたいものですね。

カンブルランが指揮する答えのない質問は、他の指揮者たちによる「通常」の演奏の倍の長さであり、これだけとっても「異常」。
出てきた音楽のあまりの深さと緊張感にしばし自分を忘れる。ホール中に心地よい静けさが漂う。制御された静かさが支配。まぁ、たしかに一種の作曲追体験的な作為的行為だったのかもしれないエポックメイキングな演奏。このような曲をこのように演奏できる指揮者は他にはいない。これ以上ない演奏。

エマーソン、ホーソン、オルコット、ソローの楽章をもつコンコード(ピアノ・ソナタ第2番)、それと直前出版のエッセイ。超越主義セットみたいな感じの頃よりもずっと前に書かれた答えのない質問。歴史を遠目に見れば、同じ時間軸にして物事を見てしまいがちだが、それは誤りとは言えなくとも、深く理解するうえで妨げになってしまうもの。ですから、理解とは追うことなり、と。
カンブルランのこの日の演奏行為は、答えのない質問は超越主義に浸る前ながらその萌芽以上のものを感じさせてくれた、つまり、一度、時間を追うことをしつつ、遠目で見える萌芽以上のもの、その両方を垣間見せてくれた。この双方を同時に感じさせてくれたものであり、主義に至る過程の作品ではなく孤高曲と認識させてくれたその追体験と完結した遠目のアイヴズ世界の同時体験。声にならない感動が体を包み、しびれた。
結果的にドヴォルザークの作品は、カンブルランのプログラム・ビルディングとこれら作品の演奏内容によりアイヴズに寄与してしまったと言えるかもしれない。

それと、アイヴス的二元論は、この曲の中にトランペットと弦で対比されているわけですけれど、自分のフィーリングでは、この曲対聴衆、そんな気もする。アイヴズがどんな気持ちで書いたか、今となっては聞く術もありませんが、追うことはできますね。


と言いつつ、アイヴズで一番好きな曲は、20代前半に書かれた交響曲第2番。引用だらけの曲でそれもこれもありきたりすぎたり斬新過ぎたり。唐突で破天荒な不協和音終止。何も恐れるなと父の教え。後期の四分音も遠いようで案外近かったのかもしれない。

真実は自らの中にある。

この日の演奏はあまりに素晴らしすぎて、しばらく何も聴く気が起きない、そんな感じ。



前半一曲目の武満、彼の作品を聴くことはあまりない。この曲は割といいなと、最後はベルクみたいな感じ。ややドライなサウンドの中に、音に見通しがある。

バルトークは骨太な演奏、ちょっと繊細さが欲しかったような気もする。

この日はアンコールがありましたがそれが始まったのが9時5分、通常こんな時間帯ならアンコールは無いが、3月のヨーロッパツアーの練習を兼ねているのかもしれない。
おわり