河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

490- カルメン オペラパレス2007.12.1

2007-12-03 22:57:00 | 音楽

自由な女か

それとも

悪女か

カルメンを観に行ってきました。

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2007121()2:00pm

新国立劇場、オペラパレス

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ビゼー/カルメン

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演出/鵜山 仁

指揮/ジャック・デラコート

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カルメン/マリア・ホセ・モンティエル

ドン・ホセ/ゾラン・トドロヴィッチ

エスカミーリョ/アレキサンダー・ヴィノグラードフ

ミカエラ/大村博美

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合唱/新国立劇場合唱団

児童合唱/杉並児童合唱団

管弦楽/東京フィル

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カルメンの音楽というのは、冒頭のいきなりの音楽から最後まで、ありとあらゆるフレーズが聞覚えのあるものばかり。

少し出し惜しみして、ほかの曲をもう何曲も作れるのではないかとおもったりしてしまう。

しかし、同じようなありあまるメロディーの数々で有名なチャイコフスキーとはかなり異なり、音楽の流れがよくない。成熟していないと言い換えてもいい。

チャイコフスキーの唖然とするとうとうと流れ切る音楽と比べるとかなり落ちる。

まぁ、あえて言えば横に流れず、縦に突っ立つ感じ。これはこれでなんだか大正昭和初期の浅草あたりが想起されて面白くもある。

タイトルロールのマリア・ホセ・モンティエルは、当初のキャストから変更になったメゾだが、オペラグラスで覗くと少々年端はいっているが第一幕のフラットな感じからだんだんと調子があがってきて第3幕終場では、ホールを揺るがすような大サウンドで見事に歌いきっていた。

この主役だけいればいいようなオペラだが、第1幕からストーリーとその展開があまりにスカスカで物足りない。ビゼーの腕なんだろうが、それをフォローするような演出が欲しいような気もする。

1幕を観ていると、リチャード・ギアとデボラ・ウィンガーの、愛と青春の旅立ちオフィサー・アンド・ジェントルマンを思い出してしまいます。

週末憂さ晴らしをする軍人とそこにたむろする町工場の女たち。

男が主役か女が主役か難しいところですが、カルメンでは女が主役なわけです。

このようなありふれたストーリーは好きな題材ですが、男と女のあやはどこにでもあるわけですね。

映画の方の女性のデボラ・ウィンガーは当時、男を吸い込むような見事なブルー・アイでとってもよかったですね。

この映画はハッピー・エンドになるわけで、デボラも救われます。

町のシチュエーションは似てますが、結果は大違いです。

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1幕後半から終場に向かってストーリーはぐっと緊張感を増して、ワルな女カルメンはダサイ軍人ホセをたぶらかして逃げ切る場面で最高潮に達します。ここらへんの音楽は見事です。

メゾのモンティエルはこの第1幕では終始フラット気味であぶなっかしいというほどではなかったが、公演が2時スタートということもあり昼からワルな役にいまひとつ乗り切れないのか、どうせなら夜の公演の方が雰囲気がでるって言う感じだが、このようなワルな女に弱い男は屈伏してしまうんだなぁ。。

1幕では軍人だったホセは、誘惑女カルメンを逃がして捕まってしまったこともあり、第2幕では結果的に悪党軍団にはいってしまう。非常に難のあるストーリーで違和感の強い幕である。

ここでエスカミーリョが初めてでてくるが、この幕、そして第3幕と全く存在感がない。

この演出、キャストだからというわけでもない。

2幕は第3幕への分水嶺であると思われるがあまりに強引な展開であり、音楽自体も味気なく音楽的には、?、である。

このような展開で進んでくるので、第3幕が2場構成にならざるを得ないのも理解できる。第1場は山賊の場みたいなもので、母親が病気でそのためホセはそこから消えてしまうのだが、第2場ではそれまでとは全く異なる闘牛場の外というシチュエーション。

母親の話などどこかに飛んで、無理で強引なストーリーで、ホセがカルメンを殺す。

闘牛場の中ではエスカミーリョが牛をしとめる。

まぁ、無茶苦茶な展開であるのだが、ここまでくるとかなりドラマティックでさえある。

結局、魅力的なのはその音楽。次から次と流れるわけではないが、陳列された宝石箱のようであり、覗いた一つ一つがみんな素晴らしいのだ。

ワーグナーのような緊密なつながりの音楽を求めてはいけないのであり、かといってイタオペともちょっと異なり、かといって純正なヴェリズモというわけでもない。独特な音楽とドラマ性でその地位はいつまでも健在。

聴衆たちは帰る道すがらみんな、例のカルメンの節を口ずさんでいる。これがカルメンの魅力だ。みんなきっとまた観にくるに違いない。

もうひとりの悲劇、というよりもあわれなミカエラ役を歌った大村さんは物腰がとっても洗練されていて、この役は役の方が負けている。別のオペラでタイトルロールの役を観てみたい。華がある人にはふさわしい役があるものだ。

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指揮のデラコートのことはよく知らないが、無理な音楽作りはしない人のようにみえる。ビゼーの音楽は時として強引であったりするが、そこからドラマティックなものをひきだすということはせず、どちらかというとその角をとっていくような音楽づくりだ。

だから熱狂ではなく安定がある。

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カルメン、って、結局、また、観たい。

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