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書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

魯迅の『域外小説集』について

2018年01月16日 | 地域研究
 ある面において、2013年10月02日「厳復 『天演論』「訳例言」」より続く。
この本で同作につき「特殊な文語」という先達(川本邦衛氏)の形容があったので読んでみた。読んでみると、これは文言文ではなくて、私の定義では書面語(当世の新事物の語彙を受け入れた文言文)である。訳文に魯迅兄弟の思う格調高さを求めるのは白話では――少なくとも彼らの当時駆使できた白話では――無理で、だから書面語にしたのだろうと考えた。純粋な文言文では翻訳できないコトとモノがある。
 1909年の初版から十数年後に白話で書かれた周作人の改訂版「序」と合わせ読むと、その書面語の採用もほかに選択肢がなくて仕方なくではなかったかという印象を与えられる。
 その改訂版「序」で、周作人は意識してかせずか、文言文では不可能、書面語でも表現困難な内容(具体的にはこのアンソロジーの作成・編纂・紹介の理由)を、白話文で語っている。いま(1921年)の白話文ならあるいは努力すればできるかもしれない、もしそうならこの書を再版する意義はなくなるとも。