書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

梁啓超 『中国仏教研究史』(2018年1月5日補注)

2018年01月05日 | 地域研究
 私が彼の意見を叩きたかった二点について、ちゃんと書いてあった(「九 翻訳文学与仏典」)。さらにもう一点、思いがけず述べられていた(「十 仏典之翻訳」)。(補注)
 この最後の一点、私が断定を下すに躊躇するところを彼は断定しているのは、両者の時代・意識の隔たりと依拠する史料・先行研究の広狭多寡と、そしてそれらすべての結果としての視野の差か。

2018年1月5日補注
 ①仏典翻訳の過程と結果において、それ以前の漢語では使われない字・語・表現・文法構造(倒置、強調)が出現したこと。また文法構造を除くその逆。
 ②文体が分析的となり、行文が組織的体系的になったこと。
 ③因明によって漢語に論理の概念がはじめて入ったこと。

 ちなみに彼は因明(仏教論理学)の論理と西洋の形式論理学の論理とを同一視している(“逻辑”という語を用いているのがその証拠)。これも一言でいえば時代差か。

(中国社会科学出版社 2008年6月)