彼が公然と女弟子を取り、しかも当時の価値観からする世間の倫理的指弾に些かも動じなかったことについては、彼の好色もあるだろうが、それとは別に、その生涯において、幼時から周囲に教養あり才気ある女性が入れ替わり立ち替わり常に存在し、性別で決して人の優劣は決まらぬという尊敬すべき実例が身近に有り続けたということもあるのではないか。
この伝でおもしろいのは袁枚よりも彼を取り巻く人間と状況である。彼を彼たらしめる有縁の人々の生きた様だ。
もっともいちばん面白いのは、英国から出ることなく、これほどの漢語能力(日本語もだが)と学識とをみずからの裡に集積したアーサー・ウェイリーという怪物学者だが。
(平凡社 1999年3月)
この伝でおもしろいのは袁枚よりも彼を取り巻く人間と状況である。彼を彼たらしめる有縁の人々の生きた様だ。
もっともいちばん面白いのは、英国から出ることなく、これほどの漢語能力(日本語もだが)と学識とをみずからの裡に集積したアーサー・ウェイリーという怪物学者だが。
(平凡社 1999年3月)