くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ビストロ三軒亭の謎めく晩餐」

2019-01-10 05:50:41 | 文芸・エンターテイメント
 書店で「ラストは……泣けます! 美味しい癒しの日常ミステリー」という帯を見て買いました。
 斎藤千輪「ビストロ三軒亭の謎めく晩餐」(角川文庫)です。
 舞台役者として活動していた隆一は劇団の解散に伴い休職中、。そんなとき、姉の京子から食事に誘われます。
 三軒亭は、シェフの伊勢がその人だけのオーダーメニューを作ってくれるレストラン。テーブルにはギャルソンがつき、来店者をもてなします。
 フランス人ギャルソンが一時帰国する代替にとアルバイトをすることにした隆一ですが、先輩方との実力の差を感じます。
 その日、手作りケーキが入っているらしい箱を持ち込んだ女性は、なんだか行動がちぐはぐで……。

 すみません、わたし、隆一に共感できませんでした……。
 アルバイトをはじめてそこそこなのに、お客さんのために「ここ、犬もは入れるレストランにしましょうよ!」と口走るし、目標としていた俳優の仕事のためにレベルアップしようと始めたレッスンの講師と合わずにやめるし。
 以前の劇団の主宰をけなされて、ペットボトルの水を思い切り講師にかけたのです。
 このあたりですっきりする人、いるのでしょうか? ちょっとどうなのかと思うのですが。

 お料理は美味しそうです。
 ただ、オーダーメイドレストランでなくとも成立する話のようにも思います。
 大体、中にはあらかじめ作っておかなければ提供できないような料理もありますよね。
 まず一話の「季節野菜の饗宴テリーヌ」ですが、「色とりどりの野菜をゼリーでテリーヌ状にした料理」とあります。黒トリュフやユリ根などをコンソメスープでテリーヌにしてあるそうです。これは、事前に作っておくのが普通ではないかと……。スープを冷ますだけでも数十分かかるのでは。
 予約するときに食べたいものを伝えておくパターンもあるでしょうが、このお客さんは飛び込みです。

 三人の大食漢女性の話「ラクレット」は結構好きです。
 このとき髪を銀に染めるギャルソンの正輝とか、いかつくてオネェ口調のソムリエ室田さんとか、キャラクターもいいと思うんですけどねぇ。
 ラスト?
 すれっからしのわたしには泣けませんでした。すみません。