松谷みよ子「あの世からの火」(偕成社)、<直樹とゆう子の物語>の五冊めです。
これまでの四冊をつなぐ役割をもったこの作品は、信州花姫の別荘管理人・みすずさんの語りを中心に、不思議な話や、現代の韓国に残る戦争の爪痕が描かれます。
「私のアンネ=フランク」もそうだったけれど、こういうエピソードのつながりは、当時松谷さんが「現代民話考」の仕事をしていたことと無縁ではないでしょう。
作中に紹介される宮城女川の民話も、おそらくは採集されたひとつと思われます。
みすずさんの語りに現れる火の玉は、いつも危機を救います。水害の心配が報じられて避難するかどうか迷ったときに、朝鮮から引き揚げるとき、親切にも小屋を使わせてくれると言われ、みんなが安心して寝付いた夜に。
みすずさんの人生にふっと浮かぶように現れる火の玉。
この本の中でわたしが印象深いのは、八年連れ添ったご主人が民間防衛隊として羅南に行くように命じられるところ。
「そうしたら主人がね、わたしをじっと見て、真剣な顔をしていうのよ。万一、自分が死んでも再婚しないでくれって。それなのにね、わたし、なんだか照れくさくって、やだやだ、あなたが死んだら、うんとすばらしい人と結婚しちゃうんだからっていったら、だまっていました。あのひとことのために、わたし、どのくらいつらい思いをしてきたか……」
ご主人からの最後の手紙も胸を打ちます。なんとしても自分の言葉を伝えたい、その思いが届いたことにも、奇跡のようなものを感じます。
みすずさんの歩いてきた道を知り、ゆう子は戦争について、ことに被害者としてではなく加害者としての側面を噛み締めます。
中学三年、進路も決まったゆう子。そして、大学生として歴史的な事情を知り、考えて行こうとしている直樹。五冊の本を通して、二人は成長し周りの人々との関わりも深くなっていきました。
どの作品も、小学生から大人まで、たくさんの人に読んでほしい物語です。
これまでの四冊をつなぐ役割をもったこの作品は、信州花姫の別荘管理人・みすずさんの語りを中心に、不思議な話や、現代の韓国に残る戦争の爪痕が描かれます。
「私のアンネ=フランク」もそうだったけれど、こういうエピソードのつながりは、当時松谷さんが「現代民話考」の仕事をしていたことと無縁ではないでしょう。
作中に紹介される宮城女川の民話も、おそらくは採集されたひとつと思われます。
みすずさんの語りに現れる火の玉は、いつも危機を救います。水害の心配が報じられて避難するかどうか迷ったときに、朝鮮から引き揚げるとき、親切にも小屋を使わせてくれると言われ、みんなが安心して寝付いた夜に。
みすずさんの人生にふっと浮かぶように現れる火の玉。
この本の中でわたしが印象深いのは、八年連れ添ったご主人が民間防衛隊として羅南に行くように命じられるところ。
「そうしたら主人がね、わたしをじっと見て、真剣な顔をしていうのよ。万一、自分が死んでも再婚しないでくれって。それなのにね、わたし、なんだか照れくさくって、やだやだ、あなたが死んだら、うんとすばらしい人と結婚しちゃうんだからっていったら、だまっていました。あのひとことのために、わたし、どのくらいつらい思いをしてきたか……」
ご主人からの最後の手紙も胸を打ちます。なんとしても自分の言葉を伝えたい、その思いが届いたことにも、奇跡のようなものを感じます。
みすずさんの歩いてきた道を知り、ゆう子は戦争について、ことに被害者としてではなく加害者としての側面を噛み締めます。
中学三年、進路も決まったゆう子。そして、大学生として歴史的な事情を知り、考えて行こうとしている直樹。五冊の本を通して、二人は成長し周りの人々との関わりも深くなっていきました。
どの作品も、小学生から大人まで、たくさんの人に読んでほしい物語です。