やっぱり湊さんは構成ですねー。この展開には驚きました。いや、中盤では気づきましたが、第一章を読んだときには、こういう短いストーリーをつなげる「鎖」みたいな作品なのかなと思ったのです。
湊かなえ「花の鎖」(文藝春秋)。結構内容に触れつつ語りますと、ある三代の家庭を描く物語なのです。でも、それは隠されていて、一見みんな同じ地平に立っているようにも見える。梅香堂にアルバイトに行くと、「看板娘のさっちゃん」と比べられるよ、なんて、小技がきいております。
雪月花、と亡くなった夫の思いを受けて子供の名づけをする美雪の思いがせつないです。(で、この美雪が物語の中心になるのですが、どうも同一人物に見えない……)
憧れだった高野和弥と結婚した美雪は、毎日が充実していました。しかし、伯父の息子の陽介が独立したいと宣言。伯母や陽介の妻の夏美から頼まれた美雪は、和弥にともに会社から移るように説得します。
雨降り渓谷に、ゆかりのある抽象画家・香西路夫の美術館を建設する計画があり、和弥は設計のコンペティションに参加することを決めますが……。
「月」のパートは高野紗月というイラストレーターが語り手です。高山植物のイラストで注目を浴びた紗月は、公民館で講座をもっていますが、それだけでは生活ができないために、アカシア商店街の「梅香堂」でアルバイトをしています。母と二人のつましい生活ですが、「K」と署名された手紙が舞い込んだとき、紗月は思い出したくもない学生時代と向き合うことになります。
山岳同好会で知り合った倉田先輩。初対面のとき思わず「お父さん」と呼びかけてしまい、以来親しくなった浩一さん。親友で今では浩一の妻となった希美子から、紗月はある頼みごとをされるのですが……。
「花」の章は前田梨花。児童向けの英会話教師です。会社が倒産。一人きりの肉親である祖母の手術費用が捻出できずに困っています。
ふと思い出したのは、毎年決まった日に八万円もの豪華な花束を母に贈ってきた「K」という人物。三年前、不慮の事故で両親を亡くしたときに、秘書を通して経済的援助をと言われたことがあり、その人になら医療費用を貸してもらえるのではないかと考えるのです。
入院している祖母は、自分の全財産をはたいてでもほしいものがあると言い出し、梨花は慌てます。花を届けてくれる山本生花店の息子・健太のアイディアで、なんとかKと連絡をとる目星がつきますが……。
語りは三人とも二十代の女性です。さらっと読んでも「雪」の部分が古風な感じ。その時点で結婚しているのも、彼女一人です。
こうやってみるとわりと単純な話ではあるのですが、香西路夫の絵の解釈や、そのほかの登場人物が絡んでくるため、一読ではわかりにくいところも結構あります。
こんなにはっきり書いてあるのに、おばあさんが入札までして何を欲しがるのか一瞬悩んでしまいました。「未明の月」ですね。
抽象画の見方についてはまだわからない部分もあるのですが。(梨花の見方は、祖母と母から聞いたのですよね。もともとが森山くんの見方だと思っていいのでしょうか)
「香西久美子」が誰なのか、ちょっと考えてしまいましたが、これは陽介と夏美ですね。ドナーになってほしいと出かけたときだと思います。
夏美の造形や、前田さんの無骨さが、この話に彩を添えている。
わたしが好きなのは「月」だったので、「花」での二人の不在に、かなり大きな喪失を感じてしまいました……。
湊かなえ「花の鎖」(文藝春秋)。結構内容に触れつつ語りますと、ある三代の家庭を描く物語なのです。でも、それは隠されていて、一見みんな同じ地平に立っているようにも見える。梅香堂にアルバイトに行くと、「看板娘のさっちゃん」と比べられるよ、なんて、小技がきいております。
雪月花、と亡くなった夫の思いを受けて子供の名づけをする美雪の思いがせつないです。(で、この美雪が物語の中心になるのですが、どうも同一人物に見えない……)
憧れだった高野和弥と結婚した美雪は、毎日が充実していました。しかし、伯父の息子の陽介が独立したいと宣言。伯母や陽介の妻の夏美から頼まれた美雪は、和弥にともに会社から移るように説得します。
雨降り渓谷に、ゆかりのある抽象画家・香西路夫の美術館を建設する計画があり、和弥は設計のコンペティションに参加することを決めますが……。
「月」のパートは高野紗月というイラストレーターが語り手です。高山植物のイラストで注目を浴びた紗月は、公民館で講座をもっていますが、それだけでは生活ができないために、アカシア商店街の「梅香堂」でアルバイトをしています。母と二人のつましい生活ですが、「K」と署名された手紙が舞い込んだとき、紗月は思い出したくもない学生時代と向き合うことになります。
山岳同好会で知り合った倉田先輩。初対面のとき思わず「お父さん」と呼びかけてしまい、以来親しくなった浩一さん。親友で今では浩一の妻となった希美子から、紗月はある頼みごとをされるのですが……。
「花」の章は前田梨花。児童向けの英会話教師です。会社が倒産。一人きりの肉親である祖母の手術費用が捻出できずに困っています。
ふと思い出したのは、毎年決まった日に八万円もの豪華な花束を母に贈ってきた「K」という人物。三年前、不慮の事故で両親を亡くしたときに、秘書を通して経済的援助をと言われたことがあり、その人になら医療費用を貸してもらえるのではないかと考えるのです。
入院している祖母は、自分の全財産をはたいてでもほしいものがあると言い出し、梨花は慌てます。花を届けてくれる山本生花店の息子・健太のアイディアで、なんとかKと連絡をとる目星がつきますが……。
語りは三人とも二十代の女性です。さらっと読んでも「雪」の部分が古風な感じ。その時点で結婚しているのも、彼女一人です。
こうやってみるとわりと単純な話ではあるのですが、香西路夫の絵の解釈や、そのほかの登場人物が絡んでくるため、一読ではわかりにくいところも結構あります。
こんなにはっきり書いてあるのに、おばあさんが入札までして何を欲しがるのか一瞬悩んでしまいました。「未明の月」ですね。
抽象画の見方についてはまだわからない部分もあるのですが。(梨花の見方は、祖母と母から聞いたのですよね。もともとが森山くんの見方だと思っていいのでしょうか)
「香西久美子」が誰なのか、ちょっと考えてしまいましたが、これは陽介と夏美ですね。ドナーになってほしいと出かけたときだと思います。
夏美の造形や、前田さんの無骨さが、この話に彩を添えている。
わたしが好きなのは「月」だったので、「花」での二人の不在に、かなり大きな喪失を感じてしまいました……。
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