くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「分かったで済むなら、名探偵はいらない」林泰広

2018-02-10 19:19:36 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 語りたくなる本です。
 居酒屋「ロミオとジュリエット」に通う「オレ」は、現職の刑事。過去に恋人の父親の冤罪を晴らすつもりで真相を暴き、恋が破綻したことを悔いています。
 そんな彼が飲んでいると、聞こえてくる様々な事件。さらに、彼らは「ロミオとジュリエット」(シェークスピアの戯曲の方)に自分なりの解釈があり、それを聞く内に事件の真実が見えてきます。
 林泰広「分かったで済むなら、名探偵はいらない」(光文社)。
 著者にとって15年ぶりの連作短編集とのこと。
 社内トラブルの果ての暴力事件や、遺言書を開くパスワードの解読、恋愛にかかわる誤解など、事件もバラエティにとんでいますが、なんといっても多彩な文学解釈がエキサイティングでした!
 中でも、ロミオの意中の相手だったロザモンドの存在がほとんど認知されないという話題と、神父が両家の和解を画策して結婚させたという解釈がおもしろかった。
 それから、「秘密結婚」! ジュリエットが、親からの結婚よりも恋愛をしてみたいという夢をみてロミオと結婚してしまったことや、それが当時問題になっていた「秘密結婚」(重婚が許されない社会だったため、家族が結婚相手を選ぶ風潮があり、それを嫌って秘密で結婚してしまうことが多かった)となってしまったための悲劇であるというのが、なんだかすごく説得力がありました。
 親の立場と若者たちの立場では、演劇の見方も違うというのも、わかりますねぇ。
 ただ、「オレ」がずっと引きずっている彼女と父親のエピソードも出てくるものだと思っていたので、最後までなくて残念でした。
 かつての作品にあるのかしら?

 この前、光文社さんのキャンペーンについてぐちぐち言っていたところ、帯の応募券からのプレゼントの図書券が当たりました! ありがとうございます!