くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ゴーストハント⑥ 海からくるもの」小野不由美

2011-09-27 21:39:44 | ミステリ・サスペンス・ホラー
出ましたね、独銛杵が。前の巻までぼーさんの法具が全く出てこないので、後半どうなるのかと思っていたのですが、登場してうれしい。ぼーさん傷だらけですが。
「ゴーストハント⑥ 海からくるもの」(メディアファクトリー)。
あと一冊でリライト版も終わりかと思うと淋しいですね。今回はかなり伏線がクローズアップされ、クライマックス目前の感じがしました。
浄化ってなんだろう、と考えさせられます。この話、「悪霊とよばないで」もまんが版も何回か読んでいる。でも、麻衣が夢で見たお姫様や、六部の霊が、夷神に縛られて浄化できずにいるという悲しみが、この巻では実感できました。
綾子の浄化もとても印象に残るのですが、その前後のエピソードがさらに補強している。あのぼーさんやジョンすら満身創痍になるような霊たちを操る神。それを除霊するナル。前回「化け物を狩る方法はない」と言ったナルが、それと同等(それ以上?)の夷神を消してしまおうとする訳です。
荒ぶる神は、利益をもたらしますがリスクも大きい。綾子が
「暴風雨や高波を本当に鎮められるなら、浄化した霊を引き戻すのも簡単かもね」なんてとんでもないことを言っています。
このあたりとか「異人殺し」のあたり、非常に懐かしいです。学生時代に民俗学の基礎として勉強したんですよ。小松和彦の「異人論」がテキストでした。六部殺しのエピソードでは、確か宮城県北の伝説が題材になっていた記憶が。
この話、いつもに比べて整理するとたいへんシンプルなのですね。でも、二転三転しているのは、「ナルの視点」が差し挟まれないからでしょう。霊に体を乗っ取られかけて、リンに緊縛されている。
いつもの罵り雑言がないのはなんだか変な感じですよー。
古文書や立山信仰、言い伝えを調べてみた泰造さんのエピソードが増えていると思うんですが、元版は以前取り寄せてもらって読んだので比べられません。
リンさんがちょっと人間くさいのがいいなー。安原さんがバイトを頼んだ女の子にお金を払って貰えるかと聞いたときや、 昏睡状態のナルを心配する麻衣への返事が、意外と温かい。
近隣でなかなか売ってなくて、ちょっと足を伸ばしたのですが、そこにも一冊しかなかった。大きな書店にはあるのでしょうが。
今回真砂子に「麻衣」と呼ばれて喜ぶ場面がありましたが、ナルっていつから「ぼーさん」って呼んでるんだっけ? とちょっと思ったり。綾子のことは「松崎さん」って呼ぶよね。
綾子といえば、今回医者の娘であることがわかりますが、麻衣たちがバスを使わせてもらって部屋がゴージャスだと驚く場面がどこかにあったように思うのです。(「悪魔の住む家」かしら??)
調査の途中でナルは「ジョンを呼ぼう」と提案することもある。これは、誰が連絡をとるのでしょう。リンさん?
いや、まんが版ではラストで麻衣がみんなの連絡先を知らないと悩むシーンがあるので。ちょっと気になったのです。
ぼーさんなんて安原さんのバイト先の電話番号まで知ってる(笑)! しかも能登から沖縄まで公衆電話使用です。(あれ? 帳場からかけてるってことは彰文さんちの電話?)
今回も非常に怖いです。祟り神に見込まれたハフリの家。怖いけれど、この構成には脱帽。