くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ほまれ」その2

2011-09-17 06:00:05 | 芸術・芸能・スポーツ
ジェンダーについても考えさせられます。サッカーや野球は「男子」のスポーツだと考えられているから、「女子」は奇異に見えるのですね。近年競技人口も増えてきましたが、実際サッカー部に入ってプレーしていた女の子、わたしは一人しか知りません。
野球部に入りたい女の子がいるが、学校は躊躇している。しかし、澤の姿をみてきた経験から、その子を入部させてやりたいと、学生時代の友人から相談がくるエピソードもいいです。
素敵だなと思うシーンはほかにもいろいろあるのですが、まずは中学生で代表入りした澤さんが自己アピールとして必ずいちばん前を走るようにしたという場面。並み居る先輩方の誰よりも前に。澤さんはもとより、そういう雰囲気を作ってくれる先輩の後押しがすばらしい。
東アジア選手権で、北朝鮮との切迫した試合。自分のゴールで同点に追い付いた宮間選手が、
「澤さん、あと一点で勝てるよっ!」と叫び、その通りになるところもよかった。
先輩からも後輩からも励まされる。それはもちろん、澤さんがみんなを支えているからです。
感想文を書いてきたMちゃんに聞いたのですが、澤さんは、ゲーム中苦しいときは「私の背中を見て」と言っているそうです。どんなに苦しいときでも、人一倍走り回る澤穂希という選手。十五年以上も日本の女子サッカーを牽引してきた彼女だからこそでしょう。
この本は、北京五輪を目前にした時期に出版されたものです。構成の日々野真理さんが澤さんに惚れ込んで企画したとのこと。澤さんは終章で世界大会でメダルをとることが夢だと語っています。「自分のプレーでメダルを手にしたい。私が現役時代に達成できず、後輩たちがそれを獲得したら、きっと悔しいし、うらやましい思いをするだろう。/それでも、喜びは大きい。/私たちが積み重ねてきた日々の努力が、未来のメダルへとつながるのだ」
夢が、叶ったのですね。
この本、実はカバーが二枚ついています。てっきりミスがあったのかと思ったのですが、どうやら今回の優勝で前のもの(澤さんの写真)の上から今回の優勝シーンへ架け替えたようですね。書店に置いてある本も二重になっていました。
澤さんの人生は、そのまま女子サッカーの歴史。これからのなでしこたちのためにも、高い目標であってほしいですね。