くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「子規のココア・漱石のカステラ」坪内稔典

2011-05-04 06:31:33 | 詩歌
「先生と僕」の一巻もとってもおもしろい。満足です。記録魔の子規が漱石への書簡をきちんと写していたり(漱石は手紙を処分してしまう人だったために余り残っているものがないのだそうです)、漱石は甘党でジャムを直接なめていたり、子規が批評好きでどんな文章にも得点をつけたり。
素敵だわ春日さん。
おかげさまで、一昨年読みそびれたこの本を再び借りる気になりました。こっちもすごくおもしろい。
坪内稔典「子規のココア・漱石のカステラ」(NHK出版)。
共通するエピソードも結構あって、漱石全集の書簡は子規が控えをとっておいたおかげで編集できたとか、苗がそよぐのを見ても稲だとは知らなかったとか、いろいろ出てきます。ちなみに、子規もペンネームに使っておきながらホトトギスがどんな鳥か、長いこと知らなかったそうですよ。
坪内先生は子規の研究者だけあって、エピソードをよくご存知です。紹介にとどまらず、坪内家の生活ぶりもちょこちょこ描かれていて、親しみがもてます。
河馬と甘納豆と柿が好き。大きな木に心引かれる。
毎年三月には娘さんから甘納豆のプレゼントがあるそうです。
夏井いつきさんが俳句の授業で紹介していた句と共通しているものもあって、お二人には交流があるようにも感じました。
わたしも俳句の授業では「三月の甘納豆のうふふふふ」を使って話しますが、この句が気に入ったという子も結構多い。
「子規のココア」は、彼が好んだ間食。牛乳一合ココア入りと菓子パンがよく出てくるそうです。「漱石のカステラ」は、いただいたカステラを持ったまま東寺を歩いた記述からの紹介。
子規が金魚をガラス鉢に十も入れて眺めたとか、妹の律に直接「団子を買ってこい」と言えず、「食べたい」と連呼する姿を、坪内さんは描きます。
このところ続けて坪内さんの文章を読んでいるので、同じエピソードに何度か出合うこともありましたが。
きびきびとした言葉感覚と、ゆったりした感性がとても自然で、楽しかった。漱石に関わる本をもう少し読むつもりです。