読了後しばらく、言葉が出ませんでした。
完結したはずの「獣の奏者」Ⅰ・Ⅱから、よくもこれだけの物語を掘り起こしたものです。
何を言ってもネタバレになってしまうような気がするし、この物語はたくさんの人にまっさらな気持ちで読んでほしいと思います。
Ⅲでもそうでしたが、この物語は、エリンのイアルへの思いを描いた作品ともいえます。二人の恋物語を直接書くのではなく、結婚して子供もいて、「家族」として「伴侶」としてどれだけ大切に思うのか。出会った頃の思い出がカットバックされながら描かれます。
もちろんイアルのエリンへの思いも。
「神速のイアル」が、Ⅲでは指物師に、Ⅳでは蒼鎧にと立場を変えるのですが、Ⅲのラストで、
「最前線を駆ける覚悟のない者に、武人は敬意を抱かぬからです」
と、闘蛇乗りになる宣言をしたイアルの言葉の底にある決意が、この巻では明らかになります。やっぱり、やっぱりイアルは素敵だっ、と声を大にして言いましょう。
ジェシを諭す場面も、最後に描かれる後の人生も、とても彼らしいのです。
この物語が描くのは、ひとつの時代の終焉です。それは、闘蛇乗りの時代であり、真王の象徴としての王獣の時代です。圧倒的な獣の力を使うのではない、新しい闘いの時代がやってくる。エリンはその終幕を生きるのです。
やがて、カレンタ・ロウの集落と同じように、王獣たちの物語は「伝説」になるのでしょう。
読み終わってもうひとつ考えたのは、初代の真王であるジェの思いです。
闘蛇と王獣の闘いから故国を失い、リョザの国を建てた彼女。文字を変化させ、意識的に特慈水を使って繁殖を制限し、自らの過ちを繰り返すことのないように祈った彼女。「カレンタ・ロウの記」や、彼らに残された伝説からうかがえるジェは、寂寥さえ感じさせます。
そして、「奏者」とは「操者」なのだということを考えました。「王獣使い」という言葉を嫌う上橋さんにとっては、不本意かもしれませんが。
それにしても近隣の書店にいまだに入荷していないのはどういうことでしょう!
完結したはずの「獣の奏者」Ⅰ・Ⅱから、よくもこれだけの物語を掘り起こしたものです。
何を言ってもネタバレになってしまうような気がするし、この物語はたくさんの人にまっさらな気持ちで読んでほしいと思います。
Ⅲでもそうでしたが、この物語は、エリンのイアルへの思いを描いた作品ともいえます。二人の恋物語を直接書くのではなく、結婚して子供もいて、「家族」として「伴侶」としてどれだけ大切に思うのか。出会った頃の思い出がカットバックされながら描かれます。
もちろんイアルのエリンへの思いも。
「神速のイアル」が、Ⅲでは指物師に、Ⅳでは蒼鎧にと立場を変えるのですが、Ⅲのラストで、
「最前線を駆ける覚悟のない者に、武人は敬意を抱かぬからです」
と、闘蛇乗りになる宣言をしたイアルの言葉の底にある決意が、この巻では明らかになります。やっぱり、やっぱりイアルは素敵だっ、と声を大にして言いましょう。
ジェシを諭す場面も、最後に描かれる後の人生も、とても彼らしいのです。
この物語が描くのは、ひとつの時代の終焉です。それは、闘蛇乗りの時代であり、真王の象徴としての王獣の時代です。圧倒的な獣の力を使うのではない、新しい闘いの時代がやってくる。エリンはその終幕を生きるのです。
やがて、カレンタ・ロウの集落と同じように、王獣たちの物語は「伝説」になるのでしょう。
読み終わってもうひとつ考えたのは、初代の真王であるジェの思いです。
闘蛇と王獣の闘いから故国を失い、リョザの国を建てた彼女。文字を変化させ、意識的に特慈水を使って繁殖を制限し、自らの過ちを繰り返すことのないように祈った彼女。「カレンタ・ロウの記」や、彼らに残された伝説からうかがえるジェは、寂寥さえ感じさせます。
そして、「奏者」とは「操者」なのだということを考えました。「王獣使い」という言葉を嫌う上橋さんにとっては、不本意かもしれませんが。
それにしても近隣の書店にいまだに入荷していないのはどういうことでしょう!