この間の採集ではカワムツの姿も目立った。いや、中層を泳ぐ魚で獲れたのはほぼこのカワムツであった。
カワムツといえば以前このぶろぐでも触れたことがあるが、自然分布は東海地方以西の本州、四国、九州、一部の島嶼である。つまりもともとは関東には生息していなかった魚である。しかしライバルが少ないからか勢力を伸ばしており、この間の採集ではほかの「ハヤ類」を採集することは叶わなかった。おそらく競合関係にあるアブラハヤやらウグイやらはそうとう数が減っているのかもしれない。杞憂であればいいのだが。
関東に本来いなかったカワムツがなぜ関東にいるのかというと、アユの放流に混ざってやってきたという可能性が高い。琵琶湖のアユの放流に混ざり、多くの種の淡水魚が関東の河川に見られるのが昨今である。茨城県や神奈川県ではハスが定着しているというし、ワタカやスゴモロコさえ見られるようになってしまった。九州ではギギがどこからかやってきてアリアケギバチと競合し、アリアケギバチの個体数が減っているという。これも放流によるものであると思われる。アユの放流の負の側面のひとつである。
茨城県産カワムツ
「国外からの外来魚ならともかくカワムツごときで椎名さん騒ぎすぎ」なんていう方もいるのかもしれない。しかしながらカワムツは餌や生息環境などがアブラハヤと競合する。つまり、アブラハヤに餌が行き渡りにくかったり、すみかをカワムツが奪ってしまったりする可能性がある。したがって、カワムツが大量に増えた河川というのは、ほかのハヤにすみにくい可能性がある。同所に生息している西日本の河川ではカワムツばかりたくさんいるわけでなく、アブラハヤやオイカワなどの似たニッチの魚が、それぞれ多過ぎず少なすぎず共存していたが、北関東の河川ではバランスが大きく崩れている場所が多いよう。今ならまだ、採集者が少しずつ駆除していけば間に合うかもしれない。
ここまで散々カワムツに文句を垂らしてきたが、悪いのは故意でないにしてもカワムツを放った人間。椎名さんも本来はカワムツ大好き人間である。ただ、好きだからこそ近くにいて欲しくないという気持ちもある。今回も何匹かお持ち帰り。一部はアリアケギバチの餌になった。また今度は西日本で在来のカワムツを採集したいものである(欲を言えばヌマムツも)。
カワムツまみれの川の魚が登れないで有ろう堰の上流がアブラハヤの楽園だったこともあります。堰のおかげでアブラハヤが守られているということになりそうです。
漁協の管理する川でカワムツが居て尚且つ、ウグイもそこそこ生息している川もありますが、おそらくウグイも放流もので一時的に定着して、カワムツと共存しているように見えるのかもしれません。
ブラックバスは問題視しても東日本のカワムツはさほど問題視されていないような空気感があるので、素晴らしい視点ですね!