今回も以前紹介していたと思っていたが、実は紹介していなかった深海魚。ネズッポ科・トンガリヌメリ属のトンガリヌメリ。
例によってネズッポ科の属については大きな問題がある。Fishbaseで使用されるFrickeの分類は系統を意識しておらず、混乱を招いてしまっているようだ。そしてFishbaseでは本種のみトンガリヌメリ属とされているのだが、トンガリヌメリ属のほかの種、ソコヌメリやクジャクソコヌメリはFishbaseでCallionymus属とされている。この問題については椎名さんがかつて運営していた某マリンアクアリウム系のウェブサイトで解説しているのでそちらの方を見て頂きたい。なおFishbaseのコモンネームはKai Island deepwater dragonetとされている。これはカイ島の深海性のネズッポという意味である。タイプ産地もバンダ海のカイ諸島とされている。
トンガリヌメリ尾鰭
トンガリヌメリ属の魚は尾鰭中央軟条の2軟条が不分枝であること、前鰓蓋骨棘の後端はカギ状になるという特徴がある。残念ながら前鰓蓋骨棘の写真は撮影していなかったよう(撮影していたとおもうのだが、行方不明に・・・)。しかし尾鰭中央軟条が分枝していないというのは、この写真からみればわかるだろうか。なお、生鮮時などはこの分枝していない軟条部分はよく伸長しているようである。
一般的にネズッポ類は性的二型があるとされるが、本種についてはわかっていない。しかしながら本種の雄と思われる個体も見ている。その個体はトップ画像の個体と異なり背鰭の第1棘かよく伸びていた。このほか臀鰭の色彩についても異なっているようで、雌では薄ら縁辺が暗色になっている。
トンガリヌメリは大陸棚のやや深い場所、大体150mほどの場所から底曳網漁業によって漁獲される。Fishbaseでの漁獲水深は180~290mとされているが、この水深は日本よりも深いが、熱帯域だとより深い海で見られる傾向にあるのかもしれない。やはり水温が関係しているのだろうか。雌の個体は愛媛県宇和海産。雄の個体は鹿児島県沖産で、どちらも有限会社 昭和水産の沖合底曳網漁業により採集されたもの。ありがとうございます。なお国内の分布域は愛知県以南の太平洋岸、対馬近海、東シナ海。海外では済州島、台湾、そしてタイプ産地のバンダ海である。このほか土佐湾で採集された個体も確認している。
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