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表参道スワマエ商店街会長のひとり愚痴

マンガ黄金時代 おせん

2022年05月11日 | レモン色の町

先天性の難病を抱えながら創作活動に打ち込んだ楠 勝平。30歳にして逝去するまで“ガロ”に作品を発表し続けました。

『楠勝平コレクション 山岸涼子と読む』ちくま文庫

70年代、日本中がどんどん豊かになっていく経済成長の時代でしたが、至る所に貧しさや厳しい現実も残り、それが実感として分かる世代の読者には、世の中の厳しい現実の只中でもがき、ひたむきに生きる人々へ向ける楠さんの眼差しの温かさが身に染みるのです。

大工の棟梁である安(やす)と、貧しい暮らしで焼き芋を売って生計を立てる おせん は、惹かれあう中になる。

楠さんが見つめた、やさしく、あたたかな世界は、不治の病との戦いの中で生まれたわけです。そうわかって読むと、どの作品にも楠さんの迫りくる死への怯えやそれでも生きていたいという願いが底に流れているのが分かります。

ある日 おせんは 安のおじさんの家へ招待される

楠さんは、白土三平さんの“赤目プロ”の中で活躍された作家ですが、

白土さんの、抑圧された民が歴史をかたちづくっていくという壮大な物語(カムイ伝)があの沸騰したような時代に押し上げられるのでなければマイナーにとどまっていたかも知れない世界だとしたら、むしろ楠作品はメジャーで普遍的な世界を描いていると今なら感じます。

時代を超えた普遍の真実が描かれているからで、白土作品とも異質の良さなのです。

初出 月間漫画ガロ 1966年12月号

山岸涼子 漫画家


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