花の四日市スワマエ商店街

表参道スワマエ商店街会長のひとり愚痴

桂枝雀さんの「口入屋」

2024年07月01日 | ひろ助が巡る花の東海道

桂枝雀さんの落語に「口入屋」というのがございまして、ここで東海道中膝栗毛の「四日市」における珍事件と似たことが起きております。題して「夜這膳棚事件(よばいぜんだなじけん)」

番頭さん新しい女中さんを前に 帳面の方は筆の先や・・・・ドガチャガドガチャガ

大坂の船場にある口入屋(職業安定所みたいなもの)に、女子衆(おなごし)さんを紹介してほしいと、丁稚の定吉がやってまいります。いつもは不細工な女中さんをご所望ですが、今日に限って番頭さんの言いつけにより別嬪の女子衆さんを連れて帰ることになります。

迎えたお店(たな)は大騒ぎ、下心のある番頭さんは、御寮人(ごりょうにん)さんのお目見えが終わると、夜のお楽しみに気が騒ぎます。

番頭「あのね、こういうところはね、今日は目見え、一遍帰ってまたあら・・・ああ・・うん、そうやけども、ちょっと事情があって、今晩から・・二階へ・・。おい、聞きなさい。今日はもう仕事おしまい。早いこと店閉めて表、掃除しょ、はいっ、しまい」

「まだ大分 はようございます。外は明かるうございます」

「はー、かまへん、かまへん。今日はかまへん。今日はめでたい女子衆が目見えでめでたいど。もう今日は仕事おしまい。おーしまい、おーしまい。表を掃除したら、布団敷いて寝ようぞ」

「まだご飯食べてぇしまへん。ご飯、ご飯、ご飯・・・」

「やかましい、お前は。・・・もう、・・なんで飯食うねん」

「そりゃ食いますよ」

「さあ食え、早よ食え、さあ食え、早よ食え・・」

「やかましな、食べてられやしまへん」

「食ったら寝間ひけ、寝間ひけ・・。ハー寝ぇ寝ぇ寝ぇ・・・さあ寝ぇ、早よ寝ぇ、さあ寝ぇ、早よ寝ぇ・・・」

「あんた、やかまして寝られやしまへん、それでは」

「おやすみ」「おやすみ」さて夜も更けて、初めに目を覚ましたのが二番番頭の杢兵衛です。

「あーあ あーひとしきり寝たなぁ。番頭、寝とるがな。よしっ、この間に抜け駆けの一番槍を」と、暗闇の中、二階へ上がる梯子段。

「痛っ、御寮人さんや、今晩あたり来そうやちゅうので引き戸しめて錠おろしてんねん。若いもんは好きなことさしときゃええがな。あんたはええわいな、歳いってんのやさかい。どっかから二階・・そうや台所へ回って膳棚足がかりで薪山(きやま)から上がったら手もないわ」。

船場の商家には、箱膳を積んでおく棚がありまして、悪いことに その腕木が腐っておりました。それに手をかけたものですから、肩の上にガラガラっと・・・。

「これ何したの、これ? つまり膳棚 担(かか)げたの?何をすんのよ、おっ、向こうの腕木ひっついたあんねんねぇ。ということは、下ろすわけにもいかんの、これ。明日の朝までこんなん嫌やで」

二番目に目を覚ましたのが一番番頭「おっと寝忘れた、先を越されては」と、同じように錠のかかった梯子段をあきらめ台所へ回って膳棚に手をかけると とたんにガタガタッ

「何したの、これ?膳棚 担げたん?何やいこれは。えらいグラグラするやないかい」

「そこへお越しになりましたのは番頭さんのようでございますけど」

「そいう声は杢兵衛どんかい、おい、これ二人で担げてんのかい、膳棚を。おっと、揺ったらいかん。コトッと何やこけた。醤油差しと違うか。そんなもんが倒れたら騒動・・・醤油が流れてきた。背中へ入ったぁ。やいとの皮が剥けたんねやがな。ふーん、しみる、しみるーッ」

そういう声は 杢兵衛どんかい、おい、これ二人で担げてんのかい。

さて、お話は、弥次さん北さんの繰り広げる東海道中膝栗毛へと戻りまして、四日市宿で棚を担いだままの北八さんを置いて、次の部屋へ忍び込む弥次さんの顛末やいかに。  つづく

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